南西諸島貝殻学入門

分子細胞生物学と博物学の分野に跨る「貝類学」を、初歩から学んでみましょう。美術学や数学的な見地からも興味をそそられます。

茜ちゃんのつれづれ草 -032

2012年11月23日 | 日記

 

茜ちゃんつれづれ

                 -32

 

 

 奄美群島の秋も深まりつつあります。とはいえ、野山が紅葉するわけでもなく、何時もながらの景色。海水もぬるく北風が冷たく感じられます。これから秋野菜の植え付け。馬齢薯、大根、ニンジン、玉葱、かぼちゃ、きゅうり、白菜etc

嵐が来なければ、数ヵ月後には目出度く収穫になるんですが・・・・・希望的観測

 

<<ウタ・フリスの自閉症入門>>

    

 

 先回ご紹介しました「映画・Good Will Hunting」をご覧になった方がたくさん居られると思います。筆者の自宅にも先回紹介したビューティフル・マインド、Rain Man が様々な記録媒体であります。 簡単にWEBでも見れるようですね。時間があったら見て見ませんか。

先回も書きましたとおり、Good Will Hunting の主人公は精神的疾患があり、ドラマの筋を注意深く観ていくと、また、ちょっとした会話から常人とはちょっと違った性格が垣間見えます。当時は無名の俳優であったマット・デイモンが執筆した脚本と完成度の高さに注目が集まり、後にアカデミー賞を獲得したのはご承知のとおり。

 

 

 彼が2歳の時両親が離婚。大学で教鞭を取る母の下で育ち、長じてハーバード大学に進学し中退している。 その後、 無名時代幼馴染のベン・アフレックと共に自分達で脚本を書くことを思いたち、授業用に書いた若き数学の天才に関する脚本を映画用の脚本として完成させ、映画化には5年の月日を要しました。

筆者も既に5~6回ほどこの作品を見ています。観るたびに彼の脚本の素晴らしさに驚きます。何回も観ていますと、ストーリーはもちろん細かい台詞も覚えてしまいます。 字幕を観ながら医学的な意味のある台詞に感心させられます。彼が何時どこでこれほどの医学的な知識を得て、それを理解していたのかは分かりませんが・・・・無駄な台詞がなく、俳優の細かな行動の裏に精神疾患の臨床的な部分を匂わせております。俳優としてよりも脚本家としての才能に脱帽の思いです。

何も分からないで観るよりも、自閉症などの症例や、知識を若干でも頭に入れて鑑賞すると、メリハリの効いた素晴らしい作品である事が分かります。精神分析をする心理学者のショーン・マグワイア役のロビン・ウイリアムスも熱演でしたが・・・

 

 

 余談ですが・・・現在、九州の長崎大学・医学部では医学生・研修医とともに『グッドウィルハンティング』「ビューティフルマインド」などの精神障害に材をとった映画を鑑賞し、討議する「Cine Psychiatry」を講義に取り入れています。
この講義は受講者の満足度が最も高く、継続希望が相次いだため、現在は講義を離れて月1回機会を設けているというそうです。参考までに。

 これからいよいよ、「ウタ・フリスの自閉症入門」を読む事になります。時々、この過去のブログで取り扱った<記憶>の部分の内容が出てくる事がありますので、その際はお手数ですが過去のブログを参照してください。なお、上記の『グッド・ウィルハンティング』の主人公の臨床上の疾患の病名は伏せて置き、最後に申し上げます。皆さんもお考えください。

 

 

   第1章 - 「自閉症スペクトラム

* 橙色の文章は典拠した本の文章から転載したものです。

 自閉症とは何かと言う前に、統計的にこの精神疾患がどれ位の頻度で発生するかということです。<生まれてくるおよそ100人に1人の子供が自閉症であり、男の子が女の子の5倍多い>とされております。しかし、この障害を持つ女の子は、より重度の精神遅滞を示す傾向があるされております。 

* 自閉症の患者の男の子が女の子のそれより5倍多いという理由は、ホルモン・テストステロンの分泌に関係があると、研究者は述べております。テストステロンは人間を男性に導いていくホルモンです。生後1年頃がその分泌量が非常に多くなると考えられております。自閉症の発症が生後1~2年後くらいの間に確認される症例が多いのも、このメカニズムが介在しているようです。

                      

自閉症の子供達と標準的な子供達にはどのような違いが有るのでしょうか。

一見した所簡単な課題が、自閉症の子供には全く出来ない・・・別な課題なら他の子供達には難しく見える課題でも、自閉症の子供たちはうまくできる・・・単語はうまく覚えられるのに、その単語の意味が分からない

著者が文中で書いておりますが 自閉症という謎が解かれるには、まだまだ程遠いのです・・・・・

さらに、自閉症の子共は・・ (いくつかの例外を除けば)たいてい、とてもうまくものごとを見たり聞いたりできます。しかし、目が見えなかったり耳が聞こえない子どもは、特殊な感覚を通して社会的な合図を受け取ったりそれに反応したりすることができますが、自閉症のこどもはこの感覚をもちあわせていません。

                      

余談になりますが・・・

 筆者は以前、完全に視覚のない方と仕事の関係で、半年ほど生活と仕事をした事があります。彼らの感覚は素晴らしく、長い廊下でもスイスイ転ぶことなく歩きますし、独力でトイレに入り水洗トイレの操作を間違いなく、粗相もなしに行なう事ができます。話をしながら私の心の状態を的確に捉えておりました。この方は本当は見えるのではないかと、不審に思ったほど凄いものでした。正に特殊な感覚を持っておりました。

 では、自閉症の子どもはどのようにして理解するのでしょうか。彼らは社会信号について学習するのを可能にする知的な能力は持ち合わせております。ところが、私達と違う方法で学習するのです。 

  自閉症では、なぜちがう道筋をたどって学習が進むのでしょうか。

・・自閉症は人生の非常に早い時期生後1年目の終わり頃に始まるので、この世界について学習していく社会的道筋の多くが閉ざされています・・上記で述べましたテストステロンの分泌にその理由があるようです。

* テストステロン(testosterone) ステロイドホルモンで男性ホルモンの一種です。哺乳類のオスでは睾丸から、メスでは卵巣から主に分泌されるが、副腎からも微量ながら分泌される。胎生期、妊娠6週目から24週目にかけて大量のテストステロンが分泌される時期があり、これに曝されることによって、脳は女性的特徴であるホルモン分泌の周期性を失う・・・WIKI

そして、次のような特性があります。

・・自閉症のこどもたちは、自閉症でない子供たちと違っているだけでなく、その一人ひとりがそれぞれたいへん違っている・

この段階で、著者は「自閉症スペクトラム」について書き始めます。「スペクトラムと言う用語は一般の方には馴染みが余りないでしょう。横浜クリニックのある医者の方の説明の中で、分かりやすい表現方法がありましたので、紹介して見ます。

 スペクトラムというのは連続体と言う意味である。自然現象である虹というのは、微妙に色が変わっていきますが、基本的には連続している。虹は赤から紫に変わっていきますが、間がそんなにハッキリしないでちょっとづつ変わっていく。・・・・自閉症と言う考え方もスペクトラムという考え方でいくと、重い自閉症、軽い自閉症といろいろある・・・(抄訳しております)

その上でさらに著者は・・

はじめて自閉症の子供を見たとき、自閉症が軽度から重度まで、さまざま程度で現れている事に、漠然と気づいていただけでした。実際、私が見ていた症例は、すべて重い症例でした。現在、自閉症の子供をみていると、高機能の症例が多いことに、また、自閉症としてはせいぜい軽度か中程度の症例が多いことに、今さらながら驚いています。

自閉症の症状の内容が多岐に渡るということになります。幅が非常に広いと云うことでしょうか。さらに、とても大事な事が書かれております。

・・自閉症はすべて出生以前から始まり、すべてが発達中の脳に影響を与えます・・・・症例の中には・・困った難しい特徴があると同時に有益で魅力的な特徴もないまぜになって存在します・・・・

 

ここで、高機能の症例が多いこと、魅力的な特徴という言葉が出てきました。これはあとから出てくるアスペルガー症候群・サバン症候群の患者がもつ素晴らしい能力を指しているようです。

* アスペルガー症候群・サバン症候群が自閉症患者の中の疾患の一部ということではなく、自閉症患者の中に、アスペルガー症候群・サバン症候群の症状を示すものがあるということです。少し微妙な表現ですが、間違わないでください。

 

 

 グッドウィルハンティングの主人公は素晴らしい記憶力を持っていましたね。本を一目で見ただけで暗記、理解が出来てしまう。驚異的能力。(サバン症候群のある方は大型本1ページ当たり8秒の記録があります。それも、右目で1ページ、左目で1ページの連続で、本の内容を完全に近い形で理解してしまいます)映画のシーンにも垣間見えました。映画をご覧になった方はそのシーンを覚えておりましたでしょうか。

あるいは数学に途轍もない能力を持っておりましたね。数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞受賞者のMITの教授でも舌を巻く程の能力。このような能力を指しているようです。

 

5~6歳のこどもがピアノの音階の理屈を独学で理解し、ピアノを数時間でマスターしてしまった。もちろん誰からの指導もなしです。13歳でジャズの作曲、演奏をし、大人顔負けのミュージシャンで活躍しております。専門家が絶賛するほどの驚異的才能。こんな人が居るのです。にもかかわらず、街の中から家に自分ひとりで帰れない??? 学校にも行けない?  なんて。・・・・このような疾患もあるのです。

そして、次のように自閉症の子供たちを定義付けております。自閉症の子供たちの中核にあるのは・・・普通に双方向の社会的交流ができないという特徴的な能力欠損です・・・とあります。それでは、自閉症は発達中の脳の機能障害なのでしょうか、それともDNAレベルの遺伝子の異常なのでしょうか?

 

 

 あるお母さんが、病院で広汎性発達障害といわれ、落ち込んでいたようです。お母さんは子供の躾けの仕方が悪かったと心配していたようですが、そのお母さんに<そうじゃないんですよ。躾けの失敗ではありません>と言ってあげたことがあります。ホットしていたのを思い出します。

最後にふっと思い出しましたが、グッドウィルハンティングの主人公のマット・デイモンが2歳の時に両親は離婚したとされております。この2歳という年齢が非常に筆者は気になるのですが、これはどうなんでしょうか???  離婚ということが彼の心に強いトラウマを与えたのでしょうか、それとも。テストステロンの分泌に関係が有るのでしょうか? これはまたの機会に考えて見ましょう。

以上のことから、グッドウィルハンティングの主人公が自閉症という即断はできませんので、あしからず。次回はさらに自閉症の詳細なことに立ち入って見ましょう。

 

 

 

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