茜ちゃんの生命科学入門
細胞生物学&脳科学 -45
次回新規更改は4/06
となります。
全国から桜便りが聴かれるようになりました。東北・北海道は稀に見る大雪や吹雪の日が続き、悲しい犠牲者が出たりもしました。皆さんのところは如何でしょうか。野や山には長い冬から寝覚めた動植物が活動し始めたようです。野山に山菜を採りに行くような姿も見受けられます。
先日、加計路麻島の大島海峡の浜辺を歩いて降りましたら、突然沢から物が落ちて来ました。動きが止まって見ていましたら、突然動き出しました。何と一匹の子供のイノシシでした。斜面を歩いていて思わず足を踏み外したのでしょう。まだ幼い顔付きをしておりました。 何か気恥ずかしいそうな目つきをして起き上がり、一目散に茂みに駆け込んでいきました。思わずこちらも吹き出してしまいました。春の物憂い日差しの下のハップニング・・・
さて、暫くお休みしておりました、「ウタ・フリスの自閉症入門」を再開しましょう。
* 記述の中の朱色の部分は、上記の著書の中の文章です。
<神経発達傷害としての自閉症>
*写真と文章は関係ありません!
A- 何故、自閉症は神経発達傷害なのか。
「精神障害で、つまるところ遺伝的原因に起因し、幼児期から兆候を示すものは、神経発達傷害(neurodevelopmental disorder)として知られております。・・・・脳と心は同じものを違う視点から見たもの」
神経という用語は脳を指しております。そして、生物学的問題でもあり、同時に心理学の問題でもあるのです。<発達>とは絶えず変化する動的な過程を扱っている言葉です。脳と心の発達の、スタート時点のごくわずかな、正常な道筋からのずれでさえも、のちには大きな結果を招くことがあります。
遺伝的欠陥と自閉症については、たいへんまれな遺伝性疾患の場合に限って、自閉症になることはありますが、遺伝的欠陥そのものが自閉症になることはないとされております。つまり、遺伝子の欠陥は自閉症になる素因を与えますが、実際に何が起こるかはそのほかの因子に左右される、としています。具体的にはそれを危険因子です。
危険因子 男性・・・・男性であることは自閉症になる危険性がより高い。
これに対して 女性であることは防御因子となります。
次に
「自閉症の場合は、遺伝的素因が脳を異常な発達をするように仕向けます」としています。では、出生前の胎児の脳の発達状況はどのようになっているのでしょうか。
卵子と精子が受精し、その後生殖細胞は細胞分裂を続けていきます。神経細胞は全てが一箇所で生まれ、移動を始めます。この移動の際に問題が生じることがあり、また、始めの段階の細胞を形作る段階で、問題を生じることがあります。次に生じる問題発生要因は、細胞同士を結合させる過程です。以上始めの段階でも3箇所の通過ポイントが有ると言う事になります。
では、胎児の出生以後はどうでしょうか。
脳の発達過程に中で広範な脳の再組織化が時々進行します。赤ん坊の脳の中では神経細胞の広範な再組織化が行われているようです。ここで可塑性と呼ばれることが起こっております。最もよく使われている能力に合わせて、効率の良い神経経路が造られ、効率的な神経細胞間の結合を作ることによって可塑性は生じます。
つまり、かなり個性のある神経組織が作られるということになります。そして、余り使われることのなかった神経組織は消滅してしまいます。人間が生後様々な経験を積みながら、神経組織の構成を変化させ、個人の個性を醸成していきます。進化は生存のための基本的な要求に対してあらかじめ備えをしているため・・・・それらは脳にとっては自動的に与えられた優先事項ですが、思考や複雑な行動に関する脳機能は最優先事項では有りません。 ここでは多かれ少なかれ、誤りは許容されます。ときには、発達によって問題が乗り越えられ、その結果誰も気づきません。また、克服できないこともあって、問題が明らかにされることがあります。・・・
発達傷害の中の<自閉症>、<アスペルガー症候群>、<サヴァン症候群>などは、大脳の神経組織の再構成の段階で発生する、脳機能障害と考えて良いのかもしれません。発達傷害が幼児の躾ミスによって発生するものではない。脳の機能障害であるという事が言えます。
ただ、勘違いしやすいのは統合失調症、発達障害、PTSD(外傷後ストレス障害)の疾患者達は非常に外見が似ているのも事実で、専門家でなくては判断が非常に難しいことも事実です。ですが、発達障害が100%脳の機能障害から起こりえる疾患なのかは、筆者は少々疑問を持っております。若干ながら、この要因(躾等のミス)も発障害に影響を与えるのではないか??・・・と考えている次第です。脳の仕組みは非常に複雑で、研究途上の学問分野でも有りますので、今後大きな変化があるかもしれません。
次回は「なぜ遺伝子の中をのぞいてみるか」について考えてみたいと思います。
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