ヴェローナで11月28日から開催される展覧会
「Il Settecento a Verona: la nobilta' della pittura」
の注目作品はGiambattista Tiepolo
(ジャンバッティスタ・ティエポロ)が
1761年に手がけたIl Trionfo di Ercole(ヘラクレスの凱旋)。
第二次世界大戦終戦のその日、
1945年4月24日から25日にかけて、
イタリア中からドイツ・ナチ軍が撤退していきます。
ヴェローナから引き上げるドイツ軍は退路の安全確保のため
市内の橋をすべて破壊していきます。
Ponte Castelvecchio(カステルヴェッキオ橋)も例外にもれず
爆破されましたが、そのときの衝撃はかなりのもので
近隣の建物も振動したり倒壊したりしました。
ヴェローナのルネッサンス建築を代表する建築家
Michele Sanmicheli(ミケーレ・サンミケーリ)が建てた
Palazzo Canossa(カノッサ宮殿)も
この爆破の衝撃により
天井が剥落するという打撃を受けています。
そしてこの天井を装飾していたのが
ティエポロの描いたフレスコ画だったのです。
幸運なことに作品は写真に収められていましたが、
崩落の衝撃でフレスコ画は粉々になり、
当時の技術力では修復ができないまま
長いあいだ、箱に入れられて保存されてきました。
2009年にこの破片を
すべてスキャニングしてデジタル化に成功。
それをアルゴリズムに則り数学的計算を行う
ソフトウェアを利用して
破片をひとつづつ再構築。
再構築できないほど細かい破片や
破片自体が欠けている部分を補うために
最新技術であるTattoowallという技術を使って補完して
デジタル修復が実現しました。
残されていた写真は白黒で解像度も低かったため
色彩の復元は難しいといわれていたのですが、
ティエポロがこの作品を制作するにあたり
詳細に残していた書類などから
使用した染料なども判明し、
かなり実物に近い色彩での再現が可能になったとも。
Tatoowallという技術は最近の建築業界でも
壁の装飾などに利用される技術ですが
簡単に言ってしまうと、
紙に印刷したものからインクを漆喰壁に移すというもの。
この技術を使っての美術品の修復は、
イタリアでは初の試みだそうです。
実際には破片はまだ再構築されておらず、
今回展示されるのも
デジタルのヴァーチャルな作品となるようですが、
美術監督局は将来的に破片を実際に再構築して
足りない部分をTattowallで再生&補完して
いずれはカノッサ宮殿の天井を
再び装飾したいと考えているようです。
今回のデジタル化は
そのための小さな一歩といえるでしょう。
Il Settecento a Verona: la nobilta' della pittura
会場: Palazzo della Gran Guardia ヴェローナ
会期: 2011年11月28日から2012年4月9日まで
開館時間:9:30-19:30
12月31日(9:30-18:00)、
1月1日(13:30-19:30)
閉館日:12月25日
入場料:10,00ユーロ
詳細:http://www.settecentoaverona.it