不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

I creativi di Gucci si annoiano a Firenze

2008-09-16 07:01:17 | アート・文化

フィレンツェを代表する一流ブランドといえばGucci。
現在Gucciのメインデザイナーはローマ出身の女性
Frida Giannini(フリーダ・ジャンニーニ)です。

先日行われたローマのコンドッティ店
リニューアルパーティーで
Giannini率いるデザイナーチームもローマに滞在し
様々な刺激を受けたようです。
これを受けてGucci幹部は
デザイナー・スタイリストチームを
フィレンツェからローマへ
2009年春に異動させることを検討中。

現在Gianniniを含むデザイナーの多くは
本社が用意したPiazza Signoria(シニョリア広場)に面した
かつて銀行所有であった建物で仕事をしていますが
春以降はローマの
Castel Sant'Angelo(サンタンジェロ城)付近の
宮殿へ引越しする予定となっているそうです。

もちろん本社機能および生産部門は
これまで通りフィレンツェに残り
約50人のデザイナーチームが移るだけで
フィレンツェのVia Tornabuoni(トルナブオーニ通り)店が
本店であることに変わりはないのですが、
フィレンツェにはクリエイティブな仕事をする人間にとって
創造的刺激が少ないということを証明した事象であり
モノ作りも経済の主軸であるフィレンツェとしては
憂慮しなくてはいけないのでは。

過去3ヶ月で11%の売り上げ増、
過去3年では46%の増益となっているGucci社内では
フィレンツェではデザイナーたちは息苦しく感じ
彼らの創造性は死にかけているといわれているらしいのです。

ファッション業界での
クリエイティブな仕事の刺激を求めるのであれば
ローマよりミラノではないかという気もしますが、
Gucci幹部はミラノはビジネスの中心地ではあるが
ローマのような奥深い文化や歴史がないと判断。
ファッションだけでなく、文化や生活スタイルなども含めた
国際的な文化の交流が頻繁に行われるローマのほうが
幅広い刺激が溢れているということで、ローマに決定。
また現在のメインデザイナーが
ローマ出身であることも大きく影響しています。

地元であるフィレンツェ、
そして生産工場のあるScandicci(スカンディッチ)では
本社機能や生産部門への影響が懸念されてもいますが
実際にはスカンディッチの生産工場は
現在1000人の従業員を抱え稼働中で
更に工場拡大の予定となっているので、しばらくは安泰。

一時期低迷したGucciの人気は
Domenico de Sole(ドメニコ・デ・ソーレ)と
Tom Ford(トム・フォード)の組み合わせで息を吹き返しましたが
当時本社・生産はフィレンツェに、
トム・フォードのデザイナースタジオはロンドンにありました。
そのときの距離差を考えればローマとフィレンツェの距離など
たいしたものではないとGucci本社が考えるのも尤もです。

Gianniniの参加により、
かつての華やかで独創的な作品は減り
よりポピュラーなデザインになりましたが、
それにより一般的なイタリア人にも受け入れられるようになって
Gucciは完全に生まれ変わったといわれています。
この事実を本社としても無視することはできず、
彼女の仕事がより充実するような方向を
選んだということなのでしょう。

しかし、フィレンツェとしては実に残念な結果でもあります。