不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Festa di San Lorenzo

2006-08-01 05:46:11 | うんちく・小ネタ

8月10日はサン・ロレンツォの日。
フィレンツェでは守護聖人のサン・ジョヴァンニに次いで
サンタ・アンナやサンタ・レパラータとともに
副守護聖人ともいうべき存在のサン・ロレンツォ。
昔からフィレンツェ人に愛されるお祭りのひとつ。

起源は4世紀まで遡るサン・ロレンツォ教会。
当時城壁外のフィエゾレへ向かう道沿いに建てられたもの。
伝説では393年にミラノの司祭サンタンブロージョによって
聖別されたといわれています。
15世紀以降はメディチ家の菩提寺としても愛されたのに
いまだ正面ファサード未完成の教会。
宗教的な意味合いだけでなく
市民文化の中心としても愛されるようになり
特に8月10日のお祭りは現在まで受け継がれるものに発展。

サン・ロレンツォは258年8月10日に
グリル焼きにされて殉教。
そのため数々の宗教画の中では
頻繁に鉄網(グリル網)を携えた姿で描かれています。

伝統的に8月10日には
同教会に保管されているサン・ロレンツォの聖遺物
(古文書によれば聖人の歯とグリル網の欠片!)が
主祭壇に置かれて恭しく公開されます。
まだ一回も見たことないけど…。

17世紀初めに「メディチ家礼拝堂」が建立されると
メディチ家一族とサン・ロレンツォ教会の
強い結びつきを記念してこの礼拝堂を一般にも公開。
これはロレーナ家に政権が移っても継承され、
現在でも当日はメディチ家礼拝堂入場無料。

19世紀まではPorta San Gallo(サン・ガッロ門)から
Borgo San Lorenzo(サン・ロレンツォ教会前)まで
馬を走らせて競うレースも開催されていたというし
いってみればフィレンツェの一大夏祭りだったわけね。

フィレンツェ市民の中でもパン職人組合は
組合の守護聖人がサン・ロレンツォ。
かつては小麦粉倉庫であったオルサンミケーレ教会内の柱に
ほぼ等身大の聖人を描いて(タッデオ・ガッディ派作)
奉ったといわれています。
このフレスコ画では聖人の上に組合のマーク(赤地に白い星)、
下部には焼かれたグリル網が!!
パン職人たちは
もっぱらオルサンミケーレでこの聖人の日を祝したのですが
サン・ロレンツォ教会近くには当時数多くのパン職人が暮らし
彼らの工房や店舗もたくさんあったため
そうした数多くのパン工房では
聖人の日に集まってくる市民をターゲットに
一風変わったさまざまな形のパンを焼いて売ったり振舞ったり。

また特別なパン以外に
この日の名物となっていったのがラザニア。
現在我々が想像するラザニアとは多少異なるみたい。
クルスカの辞書では
「小麦粉のパスタの一種で、薄く長いリボンのような形。
ミネストラとからめやすくするために
大抵は一方の側面が波状になっているもの」。
どちらかというと現在のパッパルデッラに近いものかも。

パンもパスタも同じように小麦粉を使うので
昔は同じようなところに工房が立ち並んでいたのでしょうね。

また当時Via San Gallo(サン・ガッロ通り)にあった
修道会とも結びついて
サン・ロレンツォ・ディ・フォルナイ教団を結成し
その寄付金でスイカも用意して振る舞い
暑い夏の夜を締めくくったと言われています。

その名残が今でも8月10日の
「ラザニア&スイカ振る舞い」になっているわけです。

8月10日10:30からはCorteo Storico della Repubblica Fiorentina
(フィレンツェ共和国古式仮装)がシニョーリア広場から
サン・ロレンツォ教会まで行進。
21:00からは教会前広場で
ロッシーニ・フィルハーモニーのコンサート
そして22:00から恒例のラザニアとスイカの無料配布。

当日は終日メディチ家礼拝堂が入場無料のほか、
10:00から16:00までは毎時無料ガイド付き見学もあります。

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