朝鮮半島と中国と世界の動き

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北朝鮮のICBM発射で日本の核武装に現実味 今回のICBM実験の軍事技術上の衝撃

2017-08-02 06:27:20 | 政治


北朝鮮国内の非公表の場所で打ち上げられた北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」。朝鮮中央通信(KCNA)配信(2017年7月28日撮影、同月29日配信)。

北朝鮮は7月28日の深夜23時42分頃、ICBMとみられるミサイルを発射、ミサイルは約1000キロ飛翔し、奥尻島沖合の我が国EEZ内の海域に落下した。飛翔時間は45秒間で、高度は3000キロ以上に達したと報じられている。

今回のミサイルは「38ノース」の発表によれば、7月4日に発射された「火星(ファン)14」よりも燃焼時間、最高高度からみても射程がより長くなり、9000キロから1万キロに達し、米大陸本土東海岸も攻撃できる能力を持つとみられている。
 
米国防総省も、発射から2時間後に、今回のミサイルをICBMと判断していると公表している。その能力からみて、ICBMであることは間違いない。
 
北朝鮮のICBM完成は1~2年後とみれていたが、予想よりも早く、確実に完成に近づいている軍事技術的にも戦術的にも戦略的にも、その衝撃は極めて深刻である。日本国民にも気概と行動が求められている。

38ノースによれば、前回の7月4日に発射された火星14は2段式だが、1段目は、「火星12」の1段目よりもエンジンの出力と燃料搭載量を増して、やや大型化し、最大射程が7500キロで、西海岸に最大で重量650キロの弾頭を到達させられる能力を持つとみられていた。
 
火星14の2段目は、銀河(ウンハ)の3段目と同じ型のミサイルとみられている。しかし2段目は推力が不足しており、ICBMには不向きで改良が必要とみられていた。
 
今回のミサイルでは、2段目がより強力なエンジンのミサイルに改良された可能性が高い。ICBMとしてより完成度が上がっている。
 
残された課題の、大気圏再突入後の弾頭の信頼性については、確実な情報はないが、試験ごとに向上しているとみられる。今回もロフティッド軌道をとっており、再突入時の弾頭の信頼性向上が、試験の目的の1つであるとみられる。
 
7月中頃から日本海で、北朝鮮の潜水艦が1週間以上連続して活動していることが報じられているが、今回のICBM発射試験の弾着観測などの任務を帯びていた可能性もある。
 
精度確認とともに、弾着直前の起爆装置の作動確認といった再突入時の弾頭の信頼性確認も目的であったのかもしれない。この推測の当否は、北朝鮮の潜水艦や情報収集艦などの行動や通信電子情報により確認できるであろう。
 
核弾頭の開発および核実験の準備については、38ノースの衛星画像の分析結果によれば、豊渓里(プンゲリ)の核実験場の北坑でも、管理施設などでも顕著な変化はみられない。新たなトンネルを掘っている兆候もない。
 
しかし、即応態勢は維持され、排水も定期的に行われており、命令があり次第、核実験を行える状況にあるとみられている。
核関連物質の生産については、放射線化学研究所のプルトニウム生産も間歇的に続いており、プルトニウムの増産は続いている。また、ウラン濃縮施設の稼働も確認されているが、整備のための運転ともみられ、濃縮ウランが増産されているかまでは不明である。

2016年12月から翌年1月まで活発化した寧辺の5メガワットの炉と実験用軽水炉の活動は、低調なままであり、時折稼働されているに過ぎない。
 
注目されるのは、加速型原爆や水爆を生産するために必要なトリチウムの生産炉の活動が低調なままであることである。すでに必要量を確保しているのか、当面水爆実験を行う予定がないのかは不明である。
 
しかし、北朝鮮は水爆実験に成功したと自称しており、前者とすれば、トリチウムは不安定で速く劣化が進むため、近く水爆実験が行われる可能性も否定できない。
 
いずれにしても、核関連物質の増産は続き、関連施設の稼働状態は維持されており、核実験用の需用に応じ得る態勢にあると言えよう。
 
今回のミサイルについて、7月29日の朝鮮中央通信は、「火星14」ICBMと称し、設定海域に「正確に着弾」し、再突入弾頭が「数千度の高温の中でも安定性を維持」し、起爆装置の「正確な作動を確認した」と報じている。
 
発射試験の回数などから見て、北朝鮮のICBMはまだ再突入弾頭の信頼性確認、搭載可能な小型核弾頭の開発などの課題は残っているとみられるものの、全般にはほぼ完成の域に達しているとみられる。

JBpressからの引用記事

トランプを選んだアメリカ国民は、いまさらヒラリーの選挙キャンペーンを振り返っても……

2017-08-01 16:57:38 | 政治


普遍的な内容を要約すると、このようにあまり目新しくない論評となってしまう。ただ、ヒラリーの選挙キャンペーン陣営の内幕を暴くのを主眼とするノンフィクションだ。

真骨頂はやはり、ヒラリー陣営での選挙参謀たちのギスギスした人間関係だ。ヒラリーの取り巻きたちが邪魔となり、陣営内で情報共有が滞り深刻な事態に陥るなど、選挙キャンペーンの事務局がうまく機能していなかった実態を暴く。
 
独自のデータ分析に自信を持つ選挙参謀の一人は、従来型の世論調査には重きを置かず、勝てる選挙区で確実に勝つ戦略をとる。その結果、投票を呼びかけるボランティアを十分に雇わず、勝てるはずの選挙区でも負けてしまう失敗をおかす。

選挙で勝ったあかつきには、政権で重要なポストをもらえるように、選挙キャンペーン中から同じ陣営の同僚の足を引っ張りライバルを重要な仕事からはずすなど、内輪の権力争いもよくあったことを本書は細かく描く。

おまけに、元大統領のビル・クリントンをはじめ大物の存在には事欠かないため、どうしても船頭が多くなり、優秀な選挙参謀たちも機能不全に陥る。ビル・クリントンからいろいろ指示されたり、選挙戦略について批判されたりすると、だれも反論できないのだ。
 
すごい取材力だとは感心するものの、日本人である筆者はワシントンの選挙ビジネスに群がる人々について詳しいわけでもないので、退屈な部分があったのも正直なところではある。
 
時折、面白かった部分といえば、政治家に対する人物評だ。なるほどアメリカの現地では、こういう言われ方をしているのだなと、なんとなく納得させられる記述がいくつかあった。次の一説は、家庭に恵まれただけなのに、生まれた瞬間から自分の実力だと勘違いしているトランプ大統領を、うまく揶揄していて面白い。

「テキサス州の元農務長官のジム・ハイタワーはかつて、父ジョージ・ブッシュについてこう評した。運よく三塁ベースの上で生まれただけなのに、自分が三塁打を打ったと思っている、と。そうであるならば、トランプは三塁ベースの上で生まれたうえに、明らかに次のように思っている人間だ。ちょっとだけ三塁に止まっただけで、これから小走りでホームに向かい、自分が打った満塁ホームランを喜ぶ観客の歓声に浸るところだと」
 
アメリカの民主党で、大統領候補の座を最後まで争ったバーニー・サンダースについては、ヒラリー陣営のなかでは辛らつな表現でからかっていたという。ほぼ負けがみえているのに、指名争いから撤退しないサンダースに嫌気をさした表現だが、残念ながら、日本に対する差別感情に根ざすコメントとも言えなくもない。

「ブルックリンでは、クリントン陣営の人々はバーニーについて冗談で次のように言っていた。とっくの昔に戦争は終わっているのに、戦闘が続いていると思い込んで、フィリピンで逃げ惑っている最後の日本兵のようだ」
 
混乱の種ばかりが目立つトランプ大統領の政権運営を目の当たりにしながら、いまさらヒラリーの選挙キャンペーンを振り返ってもどうにもならない。それでも、もう少しヒラリーに民意をつかむ感性があれば、誤りを率直に認められる人徳があれば、アメリカの風景も変わっていたかもしれない。

そう思うアメリカ人は多いのだろうか。とはいえ、次がある政治家でもないだけに、本書を一読しても、すっきりした気分や希望を味わえるわけではない。

ウェッジからの引用記事

自分が政界のインサイダーではないと、示せなかったヒラリー「クリントン株式会社のせいで、わたしたちは負けた」

2017-08-01 04:53:31 | 政治


 

ヒラリー自身のいくつもの過ちのおかげで、ドナルド・トランプはチャンスを手に入れた。ヒラリーがおかした過ちとは、議論の的となった公務の電子メールで私用サーバーを使ったことや、

ゴールドマン・サックスで講演したおかげで選挙民たちの反感を買い、白人労働者階級へ目配りしなかったことだ」
 
富を独占しているとしてウォール街を目の敵にする市民運動が広がっていたのに、ウォール街を象徴する投資銀行のひとつであるゴールドマン・サックスから招待され高額の謝礼をもらって講演したことや、公務のメールを安全性の低い個人アカウントで読むなどした落ち度を敗因としてあげている。

しかも、ヒラリー・クリントンは選挙戦の序盤では、みずからの落ち度を認めず謝罪も遅れ、国民のヒラリーに対する不信感が一段と深まってしまった。
 
筆者たちは次のように総括する。「ヒラリー・クリントンは多くの有権者に対し、自分が何のために大統領選に立候補するのかを示せなかった。権力を手に入れるためではなく、国がどうあるべきかというビジョンを持っているから大統領を目指すのだということを証明できなかった。

また、国民の大多数が政治機構に対する信頼を失い、政治のあり方について新しい取り組みを求めているのに、ヒラリーは自分が政界の長年のインサイダーなんかではないと示せなかった」

結局は、既存の政治や政党への不信感が広がるなか、政治家として長年、活動してきたことが実績として評価されず、むしろ既得権益を守る立場の政治家として有権者に嫌われたということなのだろう。

本書では、ヒラリー陣営の有力者の次のコメントも紹介している。「『クリントン株式会社のせいで、わたしたちは負けた』と、ヒラリーの親友でアドバイザーでもある一人は嘆いていた。

『ヒラリーは長年にわたりクリントン株式会社に助けられ、彼女は体制側の人間としての恩恵をすべて享受してきたのが現実だ。そうした現実が選挙キャンペーンの大きな障害だった』」
 
夫のビル・クリントンが大統領も務め、クリントン株式会社と呼べるような利権を生み出すシステムができあがってしまった。その恩恵を受けて政治家として活動したヒラリーには、どうしてもワシントン政界のインナーサークルの人間としてのイメージが定着してしまった。

そこが、大統領選では邪魔になったという弁だ。では、当の本人はどう思っているのだろうか。本書は残念ながら、ヒラリー本人に直接取材していないようだ。しかし、ヒラリー陣営の人々への綿密なインタビューにより、次のような証言を引き出している。

「選挙から数日たった後、長年の友達との電話では、ヒラリーは自分の敗北を認めたくない様子だった。ヒラリーは、大統領選で負ける結果につながったと考えるいくつかの要因をあげた。FBI(コミー)やKGB(ロシアの諜報機関の旧称)、KKK(トランプが白人の国粋主義者から集めた支持)だ」
 
選挙キャンペーン中に、電子メール問題を蒸し返したFBIのコミー前長官や、情報操作に加担したと取りざたされたロシアの存在などを、ヒラリーは大統領になれなかった原因だと考えていたという。

トランプ支持者たちを、白人至上主義による秘密結社のKKK(クー・クラックス・クラン)になぞらえるあたりは穏当ではない。しかし、トランプ支持者たちをKKKとして切り捨ててしまうあたりに、白人の労働者階級のワシントン政界への不満を理解できないヒラリーの限界が浮かび上がる。
 
もっといえば、民主党や共和党という党派の枠を超え、自分たちのために政治家は働いてくれていないという不満が、一般国民の間に高まっていた。この点をヒラリーは見誤ったのかもしれない。

本書でも、アメリカ社会における一般市民の思いを次のように整理している。「ワシントン政界に対する一般大衆の怒りは数年の間に徐々に積み上がり、しかも二分されていた。

保守派の人々は政府の力が強大になり、納税者が納めたお金をばら撒きすぎていると考えていた。反面、左派では、有権者たちはよく次のように考えている。

現在の政府は、富の再配分をより推し進めたり、中間層やその下の階層の人々にもっと支援を与えたりするうえで、障害となっている。しかし、これら2組のポピュリストたちはいくつかの点で共通していた。

企業に対する補助金や貿易協定、国外へのアメリカ軍の派兵について、ポピュリストたちは怒り狂っていたのだ」

ヒラリーが正攻法で政策論を展開しても有権者の納得を広く得られなかったのも事実なのだろう。ヒラリーはダメなアメリカの象徴だったとも本書は指摘している。

まさに、ヒラリーと逆のことをやったのが、東京都の小池百合子知事だ。自民党政権への批判票をうまく取り込み、東京都議選で都民ファーストを大勝利に導いた。既成の政党に対する反発という大きな流れをヒラリーは読めなかったのだ。

トランプ大統領は、支持母体の共和党とも対立しながら、ポピュリストたちの不満にこたえる姿勢をアピールし選挙に勝ったわけだ。

ウェッジからの引用記事