7月28日深夜、北朝鮮が二度目のICBM発射実験に成功し、射程距離を米国本土東海岸まで到達しうる1万キロのレベルにまで性能の向上を果たしたようだ。
これに対し、中国外交部はこれまでどおりの反対の姿勢を報道官談話で出しただけで、対北朝鮮制裁強化につながるような態度の変化は見られなかった。
習近平政権にしてみれば、この時期に北東アジアの緊張を高める金正恩に怒り心頭だろうが、それよりも次期党大会に向けた国内政治を優先せざるを得ない状況にある。
7月14日、孫政才・重慶市党委書記(党中央政治局委員)の「厳重な党紀違反」による解任と審査が報じられ、後任には陳敏爾・貴州省党委書記が抜擢された。
陳敏爾は、習近平が浙江省党委書記だった頃の部下で、完全な習近平主導人事であった。孫政才の失脚は外部の観察者から見れば突然の事態であるとはいえ、次期党大会における大幅な人事の刷新に向けた習近平の意向が働いたと受け止めるのが常道だろう。
第19回党大会の開催時期はまだ明らかにされていないが、開催の3カ月前の告知が通例であり、そうであれば9月開催の可能性はなくなった。
8月の北戴河会議を受けて党大会開催の告知という段取りならば、11月開催の可能性が高いということになろう。
それにしても、孫政才の解任は、党大会まで数カ月という段階での現職政治局委員の失脚であり、中国政局における権力闘争の熾烈さを内外に示す出来事であった。
今やれっきとした「大国」となった中国において、かかる事象は中国に対するマイナスイメージを助長するだけであるが、習近平政権にそんな配慮をする余裕さえなかったのだろう。
ただし、「反腐敗」で要人の失脚に慣れてしまったのか、外国の反応は大きくはなかった。同じことは、7月13日に死去したノーベル平和賞受賞者である劉暁波についても言える。
中国当局は、患った肝臓がんを末期になるまで放置し、本人が希望した外国での治療を拒絶したまま瀋陽の病院で亡くなった。
これも中国のマイナスイメージを助長するはずだったが、人権問題に関心の薄いトランプ米政権の反応は鈍く、いわんや国内政治の混乱に明け暮れる日本の安倍政権もまともな反応を見せていない。
国際的な中国に対する強い“逆風”は発生せず、いわば中国の“思う壺”で事態は収束しつつある。
JBpressからの引用記事