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読書の森

松本清張と先の戦争

松本清張は原則自分を語らない作家の一人です。
彼の数少ない自伝、河出書房の『半生の記』(増補版)は初版のみで重版してない、彼の創作の方が遥かに人気があるという事でしょうか。

ザッと読めば、ドラマティックな出来事とおよそ縁が無い、極貧の中で刻苦努力して大新聞社の社員になった、一見全然面白味のない男の話です。普通は立ち直れないような残酷な目に遭っても、向上心を失わなかった大作家です。

ただし、後年彼の創作のタネになったエピソードが満載されていて、しかも筆を抑えてリアルに描かれている為、私にとって非常に面白い読み物でした。

松本清張は基本的にリアリストであり、創意工夫に富んだ市井の人です。権威に逆らう事も無いし思想も持たない、ましてや反戦運動に加わった事もない人です。

ただ学問好きな人の為、印刷業に従事していた時文学仲間の集まりに参加して、当時発禁本となっていた思想関係の書籍を借りたばかりに、「あか」(当時の左翼)の疑いをかけられ、留置場に数十日ぶち込まれてしまいます。
さらに釈放されてからも刑事が行動を監視されたという事です。

この屈辱的な体験を覆したい為、昭和11年彼は社会的に安定した地位を得る為、当時の朝日新聞社に単身乗り込んで新聞広告デザインの職を得たのです。
どういうやり方か?
小倉に朝日新聞社西部支社が出来るという記事を読んで支社長に手紙を書いて自分を売り込み、そこから採用試験を受けて合格したのです。その後真面目に働き正社員となったという事です。

もし今日のような時代であれば、いかなる理由だろうと彼が留置場に入ったという事実は周りの知るところになってしまう。又、刑事が彼を尾行すれば胡散臭いとより広い地域で噂されるでしょう。

ただし今日であれば、あるネット記事を繰り返し読んだ、とか、ある情報を繰り返し得たというだけで、捕らえられる事はありません。
だから、真の自由と言う訳では無いですね。

いずれの時代も自分の創意工夫で生きる事は可能です。ただし時代の波に応じての事ですが。
戦争に突入せんとする時代、何の後ろ盾も学歴も無い松本清張が自身の力で大作家になっていく道を読む思いでありました。




もうすぐ(でもないけど)ひな祭りですね🎎

桃と菜の花が安かったので(業務スーパーで600円)購入、簡単寿司を作っちゃいました。
簡単寿司は硬めに炊いたご飯に甘酢を振って、丼に盛り、上に薄焼き卵とカニかま、ノリを載せただけですよ。
お寿司は難しいものではないみたいです。


読んでいただきありがとうございました。

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