書評、創作はなるべく残しておきたいです。
好きな本の書評ですが、中でも好きな本のひとつが東野圭吾『白夜行』です。
昭和後期から平成の大阪の下町で育った、人並み以上の能力と外見を持った若い男女の、若さ故の純粋さと残酷さを見事に描いてると思います。
東野圭吾は理系の人で、情報ハッキングの犯罪に触れた部分など、今日的な問題を含んでいて、今読んでも読み応えありです。

1973年東大阪市布施の下町の取り残された廃墟ビル。
その中で質屋の主人の中年男の死体が発見された。
被害者家族を事情聴取したベテラン刑事は、ある違和感を感じた。
母親にも小学生の一人息子にも打ち解けた雰囲気が感じられないのである。普通の親子の馴れ合いにも似た日常感もない。
さらに現場から被害者の女の存在が疑われ、その女の貧しい家庭を取り調べる事になった。小学生の一人娘は環境からまるで浮いてる。上品過ぎて美し過ぎた。
刑事はそこでも違和感を感じる。
それは刑事の直下だけで、それぞれの家族は完璧なアリバイを持っている。
捜査が難航する内、取り調べが苦痛だったのか、女の子の母は謎の死を遂げ自殺と見られた。
犯人像が曖昧なまま月日が流れて、、、19年。
小学生だった子供達、亮司と雪穂はそれぞれ全く別の道を歩む。それぞれ能力の高さを生かして貧しい暮らしを脱していくのだった。ただし、恐ろしい事件が二人の周囲に必ず起こっていった。
退職後もこの事件の真相を追い続ける老刑事は、最初の不思議な違和感から生じた勘を信じて諦める事なく事件の真相に迫っていく。

真相とは、おぞましい肉欲に走る大人に対する純粋な魂の怒りの爆発があったのだ。
実の親殺しの大罪を負う事になった幼い子達は、お互いに共感し合う魂が離れられない恋人同士だったのだ。
この恋を護る為に、逆に残虐極まる罪を犯していく。
二人が初めて出会ったのは町の図書館で、そこで幼い感想を語り合うだけだったに、、。
不思議な事に彼らの恋の逢瀬を他の人は絶対見ていない。非常に巧妙な形で哀し過ぎるほど短い逢瀬を続けていたらしい。
彼らの考える恋の成就とは、一体何だったのだろうか?

大阪生まれの東野圭吾はこの作品の中で昭和の大阪の町をイキイキと描いてます。
彼は亮司や雪穂とほぼ同年代で、時代背景も非常にリアルです。
これほど残虐極まりない犯罪を描いているのに、冷たいホラー的な作品に終わってないのは、華やかなバブルに進んでいく当時の大阪の街をリアルに描いたからでしょうか。
時は今令和7年春、大阪万博は開幕致しました。世界全体不安定で非常に厳しい中で、それでも夢を孕む大会であります。
フィクションの世界ですが昭和後期の時代でも、猥雑で貧しい環境にありながら上昇してきた人間たちが生活してきた大阪。
その街に住む庶民の負けない心意気が反映されて、豊かなイベントになりますよう心から祈っております❣️