読書の森

転校の思い出 その4



小学4年の春、武蔵新田駅に近い借家に移った。
平屋で庭も無く、ウサギ小屋の様に狭い家でも間借りやアパートにない開放感があった。

家の前が原っぱで、その向こうに当時の東急目蒲線が通っていた。
昼過ぎになると原っぱは子供が占領した。
子供が実に多くて元気な時代だった。
電車の音を子守唄に聞いた。

このロケーションは、私を外向きの子供にしてくれた。
家の前の道路を渡ると同年代の子が声をかける。
名前を知らなくとも「だるまさん転んだ」や「隠れんぼ」の仲間に直ぐ入れてくれた。
心が弾み、お喋りが楽しかった。

脚の悪いからって虐められる事も無かった。
多分そんなのどうでも良かったらしい。
一緒に遊ぶ仲間が多ければ多い程楽しいという感覚だった。

平成の映画じゃないけど、昭和の夕日はそれは大きく綺麗なものだった。
それを見て家路を辿るのは、ちょっとしたロマンだった。
と言っても我が家は目と鼻の先だったが。



父の商売が落ち着くと共に、我が家の生活が楽になった。
余裕が出て母は学校時代の友達と連絡を取り合った。
仲の良い友人の夫は皆一流企業に勤めていた。
本当の暮らしを母はひた隠しに隠し、同窓会に出た。

この辺りから私は母の昔の恋人の話や豊かな娘時代の話を聞かされたのだ。
だんだん私は両親に反抗的になった。

近所のエプロン姿で構わないけど、御節介過ぎる程親切なおばさんに懐いた。
頭や顔なんてどうでもいい、普通のおばさんが一番と思ってた。

この小さな家で暮らした10年の間は宝物の様な昭和の思い出が詰まっていた。

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