読書の森

楠戸義昭 『戦国名城の姫たち』

信長の妹、お市の方は戦国一の美女と呼ばれた。
今残る肖像画を見ても、気品に溢れた美しさ、近寄りがたい美しさを感じる。
この美貌を兄に利用され、政略結婚を押し付けられたのだ。

信長のそばに仕えた秀吉にとって、お市は憧れの女性であり、いつか手に入れたい
女だった。
しかし、相手は高嶺の花、名のある城主の妻になる。
仲良く言っているという話を聞くと相手の男を憎み、復讐を誓う。

このちょっと異常な執着をおねはどう受け取ったろうか?
もちろんおねはごく平凡な容貌だったらしい。
身分も低い女である。

秀吉の上昇志向が身分の高い女への執着になると、利口な彼女に分かっても
ムラムラ怒る嫉妬心は消しがたいだろう。


家と家とに挟まれて悲劇の死を遂げたお市の長女が、淀君である。
「猿」と呼んでいた下賤の男、秀吉が、ついに天下人になった。
両親や弟の敵である。
その男は気味が悪いほど優しい。
亡くなったお市の面影をまだ少女の自分に見て、言い寄ってきている。

幼い時に父(浅井長政)を伯父(信長)に惨殺されて、心に刺を持つ驕慢な乙女、
淀君は秀吉の寵愛を一身に受けることで、落城した浅井の再興を考えたのではないか?

成熟した淀は秀吉の子を産む。
秀吉は狂喜する。
しかし、この子が真実年老いた秀吉の子供だったかどうかは疑わしい。

おねは、淀を寵愛する夫にじっと耐えていた。
いつかは自分の懐に帰ってくるとじっと待っていたのだ。
しかし、秀吉は62歳で伏見城で死ぬのである。
最後まで言い続けたのは、子供の行く末を託す言葉だった。

(続く)

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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