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読書の森

湊かなえ 『往復書簡』

『告白』で湊かなえの作品に初めて触れた。かなり衝撃を受けた。
よく、ちょっと気味悪いけど可愛い事を「きも可愛い」と言うが、そんな感じだった。

生きていく中で傷ついた経験を持たない人はおそらくいないだろう。
ただ、傷つけられた人がどう反応するかはその人の資質によると私は思う。湊かなえさんは多分小説の形で昇華させたのだろうな、と思える。

小説家はそういう一面を持っている人が多いようだ。
過程はどうあれ、結果生まれた作品がより多くの人の胸に響くならそしてより多くの胸を癒すなら、私はそれは名作だと思う。

この『往復書簡』も湊かなえの生んだ名作の一つだ。

本作品は映画化され、『北のカナリア』で吉永小百合主演、一見抒情的な物語となった。
しかし、原作は美しい自然描写や抒情性よりも人間心理の闇を見詰めるものになって読者を引きこんでいく。
余談だが、吉永小百合の夫君は湊作品の大ファンだという。

実は『往復書簡』は関連性の無い三つの物語から構成されている。
共通するのは手紙の交換という古風なコミュニケーションを使っている事だ。

手紙でなければならないシチュエーションを作り、登場人物はその中で巧みなお話づくりをしていくのだ。
『十年後の卒業文集』は、主人公の意図によって往復書簡となった。
そこに高校時代、放送部で仲の良かった女性達のその後の生き方が描かれている。

「月姫伝説」が残る松月山の麓に広がる長閑な地方都市の高校。
放送部の同級生、男女七人。
アイドルの様に素敵な浩一、美貌の千秋、浩一を好きな静香、あずみ。
後の二人が迷っている間に、千秋と浩一は付き合いだす。
微妙なやりとりが続く。
複雑な関係を見て見ぬ振りする悦子、文哉、良太。

表面上は青春を謳歌していたグループに事件は起きた。
卒業後、それぞれの道を歩んで五年、仲間は再会する。
千秋は皆と松月山を降りる途中で、脚を滑らせて転び顔から血を流して倒れた。
病院に担ぎ込まれ入院する。
怪我した場所が場所なので、仲間は見舞いを遠慮する。
それから、千秋はぷっつりと仲間の前から姿を消した。

再起不能の大けがだったとか、誰かが千秋の携帯を盗んだとか、噂の飛び交う中、浩一は千秋から別れを告げられた。

又、五年の月日を経て、女友達の間で手紙の交流が始まった。
あの事件の真相は果たして何なのか。
最後の手紙まで、真相は明らかにされていない。

さて?



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