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読書の森

別れる理由


巣ごもりして昔読んだ本からブログネタを探していたら、ご大層なとんがった記事ばかりになってしまいました。

脚の痛みと懐の痛みとでダブルパンチの私の今、長閑なブログ記事を楽しんでた方が遥かに精神衛生上よろしい様です。


ところが、本日取り上げたのが『別れる理由』というアンソロジーです。
又も深刻そうな話になってしまいました。

年齢を重ねれば重ねる程実感するのは、人生において洒落た楽しい別れなど本当は無いということです。
まして、コロナ禍の別れは、死別だろうとリアルな相手の顔も見られない残酷なものです。

以前興味を持って購入した本も、「別れる理由」を巧みに描いても所詮小説だからと思ってしまいます。
しかし小説とはそんな単純に割り切れるものではないらしい。

アンソロジーの中に赤川次郎の『離婚案内申し上げます』、これは六十代七十代のおじさん(おじいちゃん?)が泣いて喜びそうなお話です。

貞淑で優しくて美人の妻を持った50代のサラリーマンは出張帰りに驚天動地の事実を知りました。
この奥様が離婚通知を知人に配ったというのです。

一人娘が良縁に恵まれた、平穏無事な毎日に突然起きた妻の爆弾発言です。

何が原因なのか?

赤川次郎らしく、夫の浮気、妻の欲求不満の爆発、妻の浮気など、岡目八目の周りのユーモラスな反応があって、面白い展開になっています。

多分、貞淑で優しい妻を甘くみた夫の勝手過ぎる我がままな言動が原因だと、読者も幻惑されてしまう、と思います。

ところが。



真相は最後にちょこっと匂わしてるだけ、それは妻の体が最早結婚生活を続けていける状態でなかったという事だったのです。
家事もやれない夫に自分の看病と仕事と両立出来る訳がない。夫を苦しめたくない。
自分が悪者になって身を退けばいい、と考えたのです。
それを知るのは娘だけなのです。

いくら何でも古い、男尊女卑の典型だと信じられない人が多いと思います。
赤川次郎さんは1948年生まれ、この年代だから、こんな虫のいい話が書けたのでしょうね。
もっとも、この女性と離婚するなんて出来ないでしょうが。



赤川次郎さんのお話、夫側には虫が良すぎるけど、こんな奥様の愛情って私憧れてしまいます。
「いや、それは本当の愛でない、人生知らないんでしょ」と言われるの覚悟してます。
それ以上に、ずっと独身の70代の婆さんが言っても、無視されて呆れられるだけかしら。

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