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読書の森

世の中はまさかの連続?


本日、突然の報(テロは突然に決まってるけど)聴衆の面前でのトランプ氏襲撃事件、命に別状無くて何よりでした。
ただし、聴衆の一人と容疑者が亡くなったのは非常に残念です。真相が分かりません。私には単独犯とは思えないからです。
これが、世の中に与えた衝撃は大きいし、世界は変わり目にきてるのかも知れません。



古希を過ぎて思うのは、世の中の動きと人の一生は決して平坦であり得ない、ということです。今の時代に平穏な日々を続ける方が奇跡のようです。




ここからの話は事件と全く関係ないです。
「まさか」の事件から飛躍し過ぎた連想をしたものです。あまりに不謹慎な連想でお許しください。


哀しい事にこの頃著名人の突然の悲報に接する事が多いです。

最近とは言えないけど、作家の渡辺淳一も2014年に他界されてます。
『失楽園』や『鈍感力』で著名な方でしたが私は『阿寒に果つ』が一番好きです。

某週刊誌に生前の写真やエピソードが載ってましたので紹介しますね。
見出し写真は珍しい子ども時代の写真です。
これが昭和16年、真珠湾攻撃の時、所は北海道です。
姉と両親に囲まれてとびきりの笑顔です。
束の間の平和だったのかも。

つまり渡辺淳一はバリバリの戦中派なんですね。とても腕白な子どもだったらしくて、後年の男女の不可思議な愛憎を描く人と同一人物とは思えないです。


多分、彼の一生を支配した体験、それが初恋の女性、クラスメイトの自殺でした。

上の写真が二人の写真。気弱い表情を浮かべる若い男と不遜とさえ見える美女、これがその頃の公立高校生ですから、昔の方がませてたんでしょうか?

この少女は当時天才少女画家として北海道では有名だったそうです。彼女のファンが非常に多かったとか。
自分の初恋の相手で、しかも肉体的に結ばれているのに、その心の中が分からない不可思議な女性。そして、突然阿寒湖の近くの雪の中で彼女は自死します。大雪に閉ざされた為か、生前の面影そのままの死顔だったとか。
さらに彼女の遺書から複数の大人の男と関係を持っていた事が分かってしまった。
しかも、どちらかと言うと彼女の方が積極的だったとか。

成績が良くて見た目はイケメンでモテるけど、陰の部分の少ない、うぶな男子高校生が豹変したのは、この恋がきっかけです。
女性心理とはかくも神秘的なのだろうか?
彼は仕事を通じて人間を知りたい、と思ったのです。
これが、渡辺淳一が小説家になった最大の動機と言えます。

この事件を小説の形にしたのが『阿寒に果つ』です。
医者になってから小説を発表、数年後に直木賞受賞して、その後やっと世に出たこの小説、若い私は強烈なショックを受けてしまいました。

「許せない。こんな女性。自惚れ屋で相手を真剣に愛してるなどと思えない、ナルシストの骨頂!」
と怒って、それから
「でも凄いなあ」と思った。

その後、主人公を「飛んでる女を気取った」とは思わなくなりました。
人の世は善と悪でくっきり区分け出来るような単純なものでないようです。


ずっと飛んで1974年、神楽坂の料亭で自作『氷紋』に主演した岩下志麻と呑む渡辺淳一です。男盛りです。美人の隣でちょっとデレデレ。

それよりもっと飛んで晩年の渡辺淳一。八十歳に近いです。これも美人の側でデレデレ。
銀座の一流クラブの中でございます。

写真だけ見て思う事は渡辺淳一さんはかなりモテるお金持ちで、恵まれておおらかな印象です。
ただし作品は違います。男女の修羅場がこれでもかとリアルに描かれてます。

小池真理子さんは「一生一つもブレずに男女の心理やエロティシズムに拘り続けてきた方」と評してます。
同時に実生活では、男女を問わず優しくて周りに笑いが絶えない人だったと言ってます。

華があった方なのでしょうね。
お医者さんとしても看護師や患者に優しく接していたようです。

もともとあったこの人の華が大きく開いたきっかけが、初恋の人の「まさか」の死だったのかも知れません。
こんなシビアな時代には甘過ぎますかね。





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