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読書の森

泡坂妻夫『しあわせの書』

作家泡坂妻夫は江戸の伝統を継ぐ紋章絵師であると共に奇術の名人でもあります。

彼の作品の殆どにトリックが仕掛けられていると言って良いでしょう。直木賞を取った『蔭桔梗』は数少ない例外です。
作品の何処にも江戸の名残りが色濃く存在して、幸せなタイムスリップが出来ます。

『しあわせの書』の舞台は戦後バブルの豊かな時代。戦前から続くオカルト宗教団体の跡目争いが描かれてます。
霊能力に優れた教祖を始め超能力を持つ幹部が跋扈するんですが、実は中にかなりの悪党がいるのです。つまり教団が持つ富や権力を独り占めしようとする人たちです。

『しあわせの書』は布教の為に出版された有難い本ですが、この本に大きな企みが隠されております。怪し過ぎるこの教団の秘密を探ろうと本部に乗り込んだのがガンジー探偵、彼も一見国籍不明の怪しげな男性なのです。

さて?

あちこち作者のサービス(読者を面白がらせるトリック)が込められたこのミステリー。
コミックみたいで、『しあわせの書』の秘密ってなんだろう?とオカルト的に考えてると結構拍子抜けするかも知れません。

昭和60年代に発表された作品なので、現にあるオカルト宗教の批判でもなんでもないです。ただ、科学的裏付けの出来ない超常現象に対して説得性のある嘘(トリック)と捉える著者の考え方がよく分かります。
軽く読めます。

泡坂妻夫は奇術もミステリーも「お客さんにトリックを仕掛ける」アイデアを練るのが楽しくてやめられない、そうです。

面白い小説と言うのは、著者自身が読者を面白がらせる事に快感を感じて成立する、と私も思います。


桃の季節はもう直ぐです。梅が咲き桃が咲き、桜が咲く、所によっては全部一緒に花開きます。

去り行く冬。写真は雪の鳥取砂丘のグラビアです。
覚えてらっしゃるでしょうか?
桜庭一樹の『じごくゆきっ』の書評。二人の頼りない家出娘が夢見たジゴクが雪の鳥取砂丘(未知の土地)でございます。

大雪は災害ももたらすこわ〜い気候現象でもありますが、昔から雪景色を愛でる習慣は日本各地にあります。
輝く雪景色を風流に感じる余裕がほしいです(とか言ってますが、歳と共に寒いのに弱くなる、寂しい身の上です。トホホ)。





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