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読書の森

木々高太郎と精神分析

木々高太郎は代々続く医師の家に生まれ、若い頃文学に憧れますが、生活を維持する為医学部で学び大脳生理学の教授となります(臨床は殆どしなかった)。
しかし文学の夢止まず、後には流行作家となります。
その彼が深く興味を持ったのが「精神分析」であります。

現在の精神医学ではむしろ排斥される傾向にある「精神分析」。
これは、本来19世紀末自然科学者のフロイトが提唱した心理療法を称するものです。

人の生育歴において抑圧された無意識が時に病的精神症状として発症します。
精神分析療法とは、異常な精神症状を示した患者の生い立ちを分析して、受けた心の傷を理解して共感を示す事で劇的に回復した事例を基に唱えたものです。

ただし現在の精神医学では殆ど無視されています。

木々高太郎さん、学生時代に『家出』という習作を書いてます。表題に挙げた一冊の中でも女学生など若者の傷つきやすい心理を描いた作品が結構あります。
私めの推測ですが、「医院を営むGod fatherに対する反抗心が強かったのでは?」と思います。

上の写真は1926年制作されたフロイト精神分析の初映画化『心の不思議』が紹介された雑誌のもの。ここから彼はヒントを得たとみられてます。
映画の筋は、化学者の異常な潔癖症の裏に抑圧された殺意の背景を探るというものです。

私が彼の作品を読んで、昭和初期としてはかなり斬新な心理分析がされてるけど、残念ながら「難解で硬い、生活実感が無い欠点がある」という印象を持ちました。それでも面白いです。
ただ、作品の裏に自意識過剰の教養高い男性が持つ願望みたいなモノがチラチラして、それを分析してるのが面白い、という良からぬ理由ですが^_^

かの江戸川乱歩氏は彼の才能を高く買ってます。
江戸川乱歩氏自身が深層心理に相当興味を持った人ですので、共感したのでしょうね。

上の写真は戦後間もないテレビスタジオで対談する両氏です。白衣の男性が木々高太郎です。


さて、彼は一見かなり気難しい謹厳な顔の方だったらしいですが、見かけと別にベストセラー(本名林髞で出す)になったハウツー本『頭のよくなる本』を出してお金儲けをしたり、人生二度結婚説を唱え、若い時は年上の女性に導いてもらい、次に年取った時若い女性を妻にすると良いなどと勝手な事仰ってます。
しかもそれを実行されてます。

作家は作品だけじゃ分からない見本みたいな方でした!

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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