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「野外民族博物館 リトルワールド」アイヌ伝統家屋建て直し・棟梁の尾崎剛さんに聞く
Esaman
2月8日、愛知県犬山市にある野外民族博物館・リトルワールドに建っているアイヌの伝統家屋「チセ」の建て直し作業の現場監督をされている、尾崎剛さんに話を聞きました。
関連記事:「野外民族博物館 リトルワールド」でアイヌ伝統家屋の建て直し始まる
http://www.janjannews.jp/archives/2527809.html
![1](https://livedoor.blogimg.jp/janjannews/imgs/e/1/e179cd42.jpg)
●チセは何でできていて、どこにあるのか?
Q(筆者):今回のチセの建築は、1ヶ月ほどと伺っていますが、そんなに早く建てられるものでしょうか?
A(尾崎さん):ここに材料を全て持ち込んで、組み立てだけで1ヶ月ということです。
材料の皮むきや選定、準備などもあわせると、全て手作業ですから、携わる人間にもよりますが、2ヶ月半から3ヶ月はかかります。
Q:チセの材料はどのようなものですか?
A:壁や屋根は萱というよりは、葦で拭きます。
骨組みは、ヤチダモ、ニレ、ナラなど…。
昔はナラ、エンジュなどを中心に使っていましたが、いまは特にエンジュなどの木はなくなってきています。
それにみあったような木を選んで使っています。
Q:萱や葦は北海道でも少なくなっていると聞きますが。
A:北海道でもヤチ気のところはなくなってきているので、大変ですね。
河川なども整備されており、採集できるところは少なくなってきています。
Q:材料の産地はどこでしょうか?
A:主に北海道平取周辺のものを使っています。
最初にここのチセが建てられたときも、平取から萱野茂さんが来て平取の材料を使って仕上げました。
意識して平取周辺のものをそろえて使っています。
Q:16年前に一度修復がされたそうですが、どのようなことをされたのでしょうか?
A:その修復作業の時には私も参加しましたので、よく覚えています。
まず熊の檻以外の、全ての建物、ポンチセ2つ、ポロチセ、便所、プ(倉庫)、の屋根と壁の萱を取り払って葺き替えました。
そして、主な骨組みは全てそのまま使いましたが、屋根や壁の横木のサキリ(横垂木)とサクマ(横木?)は、痛んでいたものは取り替えました。骨組み以外は入れ替えた大仕事でした。
Q:昔、人が住んでいた当時も、そのように壁と屋根を葺き替えて住んでいたのでしょうか?
A:さぁ、私の年代では、住んでいたことがあるわけではないので、よくわかりません。
多分、葺き替えて住んでいたのではないかとは、思います。
Q:チセを建てることは、よくあるものですか?
A:チセというものは、20年か15年に一回葺き替えたり、建てたりすることがあるかどうかだね。そんなにないよ。
北海道でも、自分のようなチセを立てれる人間も、何人もいないので、何年かに一回の建て替えのたびに、思い出してやらないといけないから、大変だよ。
Q:最近建てた件数はいくつぐらいですか?
A:ここ数年は多くて、昨年と今年で、7件建てたね。あと2件予定があるよ。ここ2年で9件建てるわけだ。
こんなに多いことは滅多にない。これは、博物館にあったチセが老朽化して建て直しの時期にきていたのと、イウォロ事業という国の事業に、平取と白老が選定されて、その事業でのチセの新築が重なったからだよ。だから、いまはチセの建設ラッシュになっているけども、こんなことは、自分の記憶でも初めてのことだね。いままでは、年に1度あるかないかの仕事だったな。
Q:全国でも、チセがあるのは珍しいのではないでしょうか?
A:そうだね…平取で、もともと8軒あったのかな? 白老でも5、6軒、登別の熊牧場で3、4軒だよね。
あとは大阪の民族博物館と人権博物館に1軒づつ、リトルワールドに3軒…。
あとは地域地域で、1軒とか2軒あるよね。人権博物館は自分も建てに行きました。
Q:人権博物館などの館内にあるチセの場合、建て直しはしなくてもいいんでしょうか?
A:そうでもないよ。建ててから12年くらいたった年かな? 3年ほど前に建て替えに行った覚えがある。
![2](https://livedoor.blogimg.jp/janjannews/imgs/b/3/b3ce8f74.jpg)
●どんな人たちが作っているの?
Q:尾崎さんや職人の皆さんは、普段はどのような仕事をされているのでしょうか?
A:普段は造園業をしています。もともと木彫りの仕事をしていました。観光地などで売っている熊の木彫りなどです。
昔はとても観光でにぎやかだったけど、いまは仕事はあまりはやっていないね。
ほかの職人達も、木彫りなどに携わっている人もいれば、ほかの仕事をしている人もいます。
自分は、木彫りなどをしていたときに、チセの建て方などにも興味があって、機会があるごとに参加していたので、覚えることができました。たまたま、ここ何年かの間はチセをたくさん建てる機会があって、皆にとって良い経験になっています。
Q:リトルワールドのチセが建てられたのは、アイヌ文化振興財団ができる前だったと思うのですが、そのような時代のチセ建築はどのように作ったのでしょうか?
A:自分が最初に携わったのは、支笏湖のチセでした。
その当時は僕らの先輩達が建てていたのに参加して覚えました。
でも滅多にないもので、機会を逃すと覚えられませんでした。
その当時は仕事を覚えるといっても、誰かが教えてくれるというものではなくて、参加して体で覚えました。
覚えても、このような仕事を活かす場がないので、覚えたくても機会がなかったです。
Q:予算の見直しもあると思いますが、今後のチセに関わる政策で要望はありますか?
A:できれば、1年に1回ぐらいは、こうしたチセの建設などを体験する機会を作ってほしいと思います。
作り方を覚えていても、10年に一度作業をする、ということだと、忘れてしまうことも多いです。
自分もあと10年も20年も活躍できるわけではないので、後輩を育てていきたいし、技術をもっと残して生きたいです。
![3](https://livedoor.blogimg.jp/janjannews/imgs/4/a/4a26590a.jpg)
●チセの構造について
Q:チセの建て方で特徴的な部分を教えてください。
A:丸太には太い細いがあり、乗せてみないとわからない部分もあります。
実際に柱の上の乗せてみて、それから細かい寸法なども決めるんです。
柱は「ハの字型」に傾いています。
それだけでも地震に強いのですが、最近では、安全性のことも考えて、見えないところには釘を使って補強しています。
チセの骨組みは、釘だけでなくて紐でも縛ってあります。
このチセには、現代のロープを使っていますが、昔はシナの木の皮などを使っていました。
この紐で縛る構造は、自分の教わった時代の作り方では細かい部分はされていませんでした。ですが、昔のアイヌは釘をたくさん持っていなかったので、省略されていた部分も紐で補強していたと思って、そのようなしています。
細かい部分は、資料も残っていないところも多く、よくわからないところも多いです。
言い伝えで作り方が残っていますが、やはり疑問もたくさん出てきます。
そのような部分は、自分なりに考えて作っています。
Q:コンクリートの土台は何故あるのでしょうか?
A:水が入らないように、コンクリートが土台になっています。
ですが、これで実際にどれだけ長持ちするのか、というのは、コンクリートを土台にして作るようになったのは、それほど昔のことではないので、自分にもよくわかりません。
Q:このチセの屋根には、木が生えていたり、北側はずいぶん苔むしていましたが…。
A:北海道でも、白樺の木が屋根に生えているチセを見かけます。
鳥が種を持ってきて生えるので、よくあることです。
北側の屋根が苔むしているのは、やはり太陽が当たらないからで、ほかのチセでもよくみられる光景です。
Q:昔のチセの屋根裏には、たくさん矢が刺さっていましたね。
A:チセノミ(家のお祈り)をした時のもです。
今回のチセができたときにも、チセノミを行う予定です。3月中ごろの予定です。
いま、チセコロカムイ(家の神様)は、隣のうちに引越しをしています。
儀式に使うイナウは、一度平取に帰って、そこの木で作って持ってきます。
Q:火をた焚いているのと、焚いていないのとでは、もちが違いますか?
A:火を焚いていると長持ちします。
でも、このチセでもいくらかは焚いていましたね。
前のチセを解体した時に、家の大きな梁を3本流用しているのですが、その梁の一本には、火を焚いた煤の跡が残っています。
Q:昔、行政が木造住宅を建てたけども、それが寒いので、木造十打区は物置にして、みんなチセを建てて住んでいたと聞きますが、暖かかったのでしょうか?
A:実際に住んだことがないので、よくわからないです。ですが、寒い時期にはトマ(ガマ)でできたゴザを内側にめぐらせていたので、もうちょっと暖かかったのではないかと思います。
2、3日前も、北海道ではマイナス30度になっていたからね、さすがに寒いよね。みんな凍っちゃうよ。
そんな日には、いまの方法ではチセの中では越せないよね。
だから、いまでは壁に断熱材を入れて作ったところもあります。
もちろん外からは見えないようにね。ところどころ、現代のやり方を取り入れています。
でも、昔ながらの方法も残したいということで、最近でも1軒、全て昔の方法で作ったチセもありました。多分、あれは誰かが泊まってみるんではないだろうか?
Q:窓はどのようにふさいでいたのでしょうか?
A:ヨシが外側にきてトマ(ガマ)が内側に来るようなゴザで、窓を覆っていました。
ガマは時期をみて採集すると、スポンジのようになって暖かいです。
Q:今後の予定を教えてください。
A:屋根が拭き終わったら、水はけのために、土台のコンクリートを少し直します。それから壁にとりかかります。屋根が出来上がったころに見てみると、面白いと思うよ。23日くらいには、だいたい形になっていると思う。
それから一度北海道に帰って、またやってきて最後にお祈りをして完成です。
◇
作業中であったにもかかわらず、尾崎さんと職人の皆さんには、親切にいろいろとお話いただき、とてもわかりやすかったです。また、意外と急ピッチで作業が進んでいるので、チセの建築作業を見たい方は、早めに訪れたほうがよいかもしれません。隣に立っている古くなったチセとの比較も面白いと思います。
平日のリトルワールドは、とても人の数が少なく閑散としていて、それはそれで味のある光景でした。
関連記事:
「野外民族博物館 リトルワールド」アイヌの伝統家屋建て直し、急ピッチで進行中Esaman2010年02月10日
日本の大学に人骨や副葬品が放置されているのは何故か?Esaman2010年02月09日
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関連リンク:
野外民族博物館 リトルワールド
アイヌの伝統民家「チセ」(実際にチセに泊まって防寒システムを研究したレポート)
テレビで放映された【外断熱の地熱住宅】と【チセ=アイヌの伝統民家】
性能とデザイン いい家大研究 アイヌの家・チセ(二風谷のチセでのインタビュー)
}{}{ Ainu puyarA }{}{ アイヌの生活と現在を考える窓
『アイヌ』にまつわるQ&A(Esaman作成のQ&A)
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
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関連記事:「野外民族博物館 リトルワールド」でアイヌ伝統家屋の建て直し始まる
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![1](https://livedoor.blogimg.jp/janjannews/imgs/e/1/e179cd42.jpg)
チセについて解説をしてくれた棟梁の尾崎剛さん。本業は造園業だが、昔は熊の木彫りなどの職人だった。機会をみてチセの復元などに参加していたので、いまは指導する立場にある。後輩を教育して残して生きたいと繰り返し語っていた。
●チセは何でできていて、どこにあるのか?
Q(筆者):今回のチセの建築は、1ヶ月ほどと伺っていますが、そんなに早く建てられるものでしょうか?
A(尾崎さん):ここに材料を全て持ち込んで、組み立てだけで1ヶ月ということです。
材料の皮むきや選定、準備などもあわせると、全て手作業ですから、携わる人間にもよりますが、2ヶ月半から3ヶ月はかかります。
Q:チセの材料はどのようなものですか?
A:壁や屋根は萱というよりは、葦で拭きます。
骨組みは、ヤチダモ、ニレ、ナラなど…。
昔はナラ、エンジュなどを中心に使っていましたが、いまは特にエンジュなどの木はなくなってきています。
それにみあったような木を選んで使っています。
Q:萱や葦は北海道でも少なくなっていると聞きますが。
A:北海道でもヤチ気のところはなくなってきているので、大変ですね。
河川なども整備されており、採集できるところは少なくなってきています。
Q:材料の産地はどこでしょうか?
A:主に北海道平取周辺のものを使っています。
最初にここのチセが建てられたときも、平取から萱野茂さんが来て平取の材料を使って仕上げました。
意識して平取周辺のものをそろえて使っています。
Q:16年前に一度修復がされたそうですが、どのようなことをされたのでしょうか?
A:その修復作業の時には私も参加しましたので、よく覚えています。
まず熊の檻以外の、全ての建物、ポンチセ2つ、ポロチセ、便所、プ(倉庫)、の屋根と壁の萱を取り払って葺き替えました。
そして、主な骨組みは全てそのまま使いましたが、屋根や壁の横木のサキリ(横垂木)とサクマ(横木?)は、痛んでいたものは取り替えました。骨組み以外は入れ替えた大仕事でした。
Q:昔、人が住んでいた当時も、そのように壁と屋根を葺き替えて住んでいたのでしょうか?
A:さぁ、私の年代では、住んでいたことがあるわけではないので、よくわかりません。
多分、葺き替えて住んでいたのではないかとは、思います。
Q:チセを建てることは、よくあるものですか?
A:チセというものは、20年か15年に一回葺き替えたり、建てたりすることがあるかどうかだね。そんなにないよ。
北海道でも、自分のようなチセを立てれる人間も、何人もいないので、何年かに一回の建て替えのたびに、思い出してやらないといけないから、大変だよ。
Q:最近建てた件数はいくつぐらいですか?
A:ここ数年は多くて、昨年と今年で、7件建てたね。あと2件予定があるよ。ここ2年で9件建てるわけだ。
こんなに多いことは滅多にない。これは、博物館にあったチセが老朽化して建て直しの時期にきていたのと、イウォロ事業という国の事業に、平取と白老が選定されて、その事業でのチセの新築が重なったからだよ。だから、いまはチセの建設ラッシュになっているけども、こんなことは、自分の記憶でも初めてのことだね。いままでは、年に1度あるかないかの仕事だったな。
Q:全国でも、チセがあるのは珍しいのではないでしょうか?
A:そうだね…平取で、もともと8軒あったのかな? 白老でも5、6軒、登別の熊牧場で3、4軒だよね。
あとは大阪の民族博物館と人権博物館に1軒づつ、リトルワールドに3軒…。
あとは地域地域で、1軒とか2軒あるよね。人権博物館は自分も建てに行きました。
Q:人権博物館などの館内にあるチセの場合、建て直しはしなくてもいいんでしょうか?
A:そうでもないよ。建ててから12年くらいたった年かな? 3年ほど前に建て替えに行った覚えがある。
![2](https://livedoor.blogimg.jp/janjannews/imgs/b/3/b3ce8f74.jpg)
木の縛り方について解説する尾崎剛さん。建て方について細かい部分は、よくわからないことも多く、自分なりに考えて作ることも多いとのこと。この屋根の木の縛り方も、尾崎さんが考えたもの。
●どんな人たちが作っているの?
Q:尾崎さんや職人の皆さんは、普段はどのような仕事をされているのでしょうか?
A:普段は造園業をしています。もともと木彫りの仕事をしていました。観光地などで売っている熊の木彫りなどです。
昔はとても観光でにぎやかだったけど、いまは仕事はあまりはやっていないね。
ほかの職人達も、木彫りなどに携わっている人もいれば、ほかの仕事をしている人もいます。
自分は、木彫りなどをしていたときに、チセの建て方などにも興味があって、機会があるごとに参加していたので、覚えることができました。たまたま、ここ何年かの間はチセをたくさん建てる機会があって、皆にとって良い経験になっています。
Q:リトルワールドのチセが建てられたのは、アイヌ文化振興財団ができる前だったと思うのですが、そのような時代のチセ建築はどのように作ったのでしょうか?
A:自分が最初に携わったのは、支笏湖のチセでした。
その当時は僕らの先輩達が建てていたのに参加して覚えました。
でも滅多にないもので、機会を逃すと覚えられませんでした。
その当時は仕事を覚えるといっても、誰かが教えてくれるというものではなくて、参加して体で覚えました。
覚えても、このような仕事を活かす場がないので、覚えたくても機会がなかったです。
Q:予算の見直しもあると思いますが、今後のチセに関わる政策で要望はありますか?
A:できれば、1年に1回ぐらいは、こうしたチセの建設などを体験する機会を作ってほしいと思います。
作り方を覚えていても、10年に一度作業をする、ということだと、忘れてしまうことも多いです。
自分もあと10年も20年も活躍できるわけではないので、後輩を育てていきたいし、技術をもっと残して生きたいです。
![3](https://livedoor.blogimg.jp/janjannews/imgs/4/a/4a26590a.jpg)
ここにアペオイ(囲炉裏)の上の棚がくると解説する尾崎剛さん。囲炉裏の上に来る梁には煤の跡がある。この梁は、30年前に萱野茂さんが建てた初代チセの材料を残したもの。
●チセの構造について
Q:チセの建て方で特徴的な部分を教えてください。
A:丸太には太い細いがあり、乗せてみないとわからない部分もあります。
実際に柱の上の乗せてみて、それから細かい寸法なども決めるんです。
柱は「ハの字型」に傾いています。
それだけでも地震に強いのですが、最近では、安全性のことも考えて、見えないところには釘を使って補強しています。
チセの骨組みは、釘だけでなくて紐でも縛ってあります。
このチセには、現代のロープを使っていますが、昔はシナの木の皮などを使っていました。
この紐で縛る構造は、自分の教わった時代の作り方では細かい部分はされていませんでした。ですが、昔のアイヌは釘をたくさん持っていなかったので、省略されていた部分も紐で補強していたと思って、そのようなしています。
細かい部分は、資料も残っていないところも多く、よくわからないところも多いです。
言い伝えで作り方が残っていますが、やはり疑問もたくさん出てきます。
そのような部分は、自分なりに考えて作っています。
Q:コンクリートの土台は何故あるのでしょうか?
A:水が入らないように、コンクリートが土台になっています。
ですが、これで実際にどれだけ長持ちするのか、というのは、コンクリートを土台にして作るようになったのは、それほど昔のことではないので、自分にもよくわかりません。
Q:このチセの屋根には、木が生えていたり、北側はずいぶん苔むしていましたが…。
A:北海道でも、白樺の木が屋根に生えているチセを見かけます。
鳥が種を持ってきて生えるので、よくあることです。
北側の屋根が苔むしているのは、やはり太陽が当たらないからで、ほかのチセでもよくみられる光景です。
Q:昔のチセの屋根裏には、たくさん矢が刺さっていましたね。
A:チセノミ(家のお祈り)をした時のもです。
今回のチセができたときにも、チセノミを行う予定です。3月中ごろの予定です。
いま、チセコロカムイ(家の神様)は、隣のうちに引越しをしています。
儀式に使うイナウは、一度平取に帰って、そこの木で作って持ってきます。
Q:火をた焚いているのと、焚いていないのとでは、もちが違いますか?
A:火を焚いていると長持ちします。
でも、このチセでもいくらかは焚いていましたね。
前のチセを解体した時に、家の大きな梁を3本流用しているのですが、その梁の一本には、火を焚いた煤の跡が残っています。
Q:昔、行政が木造住宅を建てたけども、それが寒いので、木造十打区は物置にして、みんなチセを建てて住んでいたと聞きますが、暖かかったのでしょうか?
A:実際に住んだことがないので、よくわからないです。ですが、寒い時期にはトマ(ガマ)でできたゴザを内側にめぐらせていたので、もうちょっと暖かかったのではないかと思います。
2、3日前も、北海道ではマイナス30度になっていたからね、さすがに寒いよね。みんな凍っちゃうよ。
そんな日には、いまの方法ではチセの中では越せないよね。
だから、いまでは壁に断熱材を入れて作ったところもあります。
もちろん外からは見えないようにね。ところどころ、現代のやり方を取り入れています。
でも、昔ながらの方法も残したいということで、最近でも1軒、全て昔の方法で作ったチセもありました。多分、あれは誰かが泊まってみるんではないだろうか?
Q:窓はどのようにふさいでいたのでしょうか?
A:ヨシが外側にきてトマ(ガマ)が内側に来るようなゴザで、窓を覆っていました。
ガマは時期をみて採集すると、スポンジのようになって暖かいです。
Q:今後の予定を教えてください。
A:屋根が拭き終わったら、水はけのために、土台のコンクリートを少し直します。それから壁にとりかかります。屋根が出来上がったころに見てみると、面白いと思うよ。23日くらいには、だいたい形になっていると思う。
それから一度北海道に帰って、またやってきて最後にお祈りをして完成です。
作業中であったにもかかわらず、尾崎さんと職人の皆さんには、親切にいろいろとお話いただき、とてもわかりやすかったです。また、意外と急ピッチで作業が進んでいるので、チセの建築作業を見たい方は、早めに訪れたほうがよいかもしれません。隣に立っている古くなったチセとの比較も面白いと思います。
平日のリトルワールドは、とても人の数が少なく閑散としていて、それはそれで味のある光景でした。
関連記事:
「野外民族博物館 リトルワールド」アイヌの伝統家屋建て直し、急ピッチで進行中Esaman2010年02月10日
日本の大学に人骨や副葬品が放置されているのは何故か?Esaman2010年02月09日
解体される北海道・白老のアイヌ民芸館「ミンタラ」Esaman2010年02月05日
「野外民族博物館 リトルワールド」でアイヌ伝統家屋の建て直し始まるEsaman2010年02月03日
導入にも学問の施設としてのプライド 野外民族博物館 リトルワールドのボランティアガイド制度 Esaman 2008/06/21
イヨマンテを知っていますか?「アイヌと共に語る」講座より 小宮朗 2009/05/22
関連リンク:
野外民族博物館 リトルワールド
アイヌの伝統民家「チセ」(実際にチセに泊まって防寒システムを研究したレポート)
テレビで放映された【外断熱の地熱住宅】と【チセ=アイヌの伝統民家】
性能とデザイン いい家大研究 アイヌの家・チセ(二風谷のチセでのインタビュー)
}{}{ Ainu puyarA }{}{ アイヌの生活と現在を考える窓
『アイヌ』にまつわるQ&A(Esaman作成のQ&A)
◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
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