アイヌ文化交流会 ~Ainu Cultural Presentation~メルボルンでとても貴重なアイヌ文化体験。
15th May, 2009 @ Green Building
アイヌ民族の伝統・文化を伝え続けている星野工(ほしのたくみ)氏と先住民サポーター・寺地五一(てらちごいち)氏によるアイヌ文化交流会が、5月15日にメルボルンシティにあるGreen Buildingで開催された。
アイヌ文化を知るこの希少な機会に、アイヌと同じような境遇の先住民族・アボリジニが住むこの国で、約20人の参加者が訪れた。星野氏はアイヌの伝統文様の入った民族衣装を身にまとって参加者を出迎え、すでに会場は開始時刻前から、星野氏と寺地氏を交えて和気あいあいと会話が弾んでいた。そうして、イベントはまるで昔ながらの友人の家に招待されたかのように、和やかな雰囲気で始まったのだ。
会場にすでに準備されていたのは、アイヌの祭具の数々。参加者はそれらを取り囲むようにして床に座り、火の神様に降りて来てもらうカムイ(神様)の儀、というアイヌの伝統儀式を体験することとなった。
儀式では、星野氏が「エカシ」と呼ばれる儀式を司る役目を担った。「いま私たちが精一杯あげることのできる穀物、お酒などを捧げる。」ということで、今回の儀式では、特別な神様への酒ではなくオーストラリアのヴィンテージワインを使用することや、また、伝統的には前の席は男性のみが座る場所であるということなど、参加者に手順が丁寧に説明された。
そうして星野氏によるアイヌの祈りが始まると、各々が手にした神様用の棒酒箸(イクパスイ)を使って、酒杯(トュキ)からイナウと呼ばれる、木で作られた幣(ぬさ)のような供物へ酒が捧げられた。参加者らは最初、緊張の面持ちではあったが、次第にその厳かな雰囲気の中でも笑顔がこぼれ、非日常な時間を存分に楽しんでいる様子であった。
儀式は約30分ほど続き、神様が神の国へ帰ることで終了した。本来は4、5時間続く長い儀式なのだそうだ。それほどアイヌの人々は神様との結びつきが強い。「アイヌの考えでは、人間と神様は平等なんですよ。例えば川で子供が溺れたら、村人はみんなで川に石を投げて、川の神様に抗議するんです。なぜ、守ってくれなかったんだ、って。そうしたら神様はちゃんと聞いてくれるから。」と星野氏は教えてくれた。
その後、参加者からの質疑応答では、アイヌの料理についての質問に、「アイヌは調味料を塩しか持たないんです。あとは自然にある物が味付けをしてくれる。」と星野氏は答える。アイヌは神様と自然と共に、穏やかに生きてきた民族だったのだ、とつくづく思った。
質疑応答が歓談に変わったころ、星野氏による、アイヌの民族楽器・ムックリの演奏が行われた。顎と歯を使って弦を弾き奏でる音は、奏者によって異なる。小さな音ではあるが、不思議にどこまでも遠く伸びて、その昔、恋人を呼び寄せるためにアイヌの女性が奏でたという話も納得できた。
日本人でアイヌ民族に関して知る人は意外に少ない。今回、半数の参加者が日本人であり、彼らが、「東京にアイヌが5,000人以上いる。差別などを恐れて、自身をアイヌだと公表できない人々はもっといるだろう。」という星野氏の話に驚いていたことからもそれはうかがえる。アイヌ民族は北海道にのみ存在する、とさえ思っている日本人は多数いるだろうと思われる。アイヌの現状、そして歩んできた道を伝えるために、現在、寺地氏らはドキュメンタリー映画『TOKYOアイヌ』を製作中であることが伝えられ、イベントの最後でその予告編が上映された。
土地を奪われ、辛苦の道を辿ることになったアイヌ。その歴史を伝え続け、文化を守るために活動している星野氏は言う。
「思いやりのあふれる社会になって欲しいんだ。アイヌの問題だけでなく、普通のことなんだよ。お年寄りをうやまい、助け、近所同士で子供の面倒を見る。そういうことなんだ。」
会場となったGreen Buildingはリサイクル資源を利用する環境にやさしい建物。自然とともに歩んで来たアイヌの文化を伝えるのに、充分にふさわしい場所であったに違いない。
●ドキュメンタリー映画『TOKYO アイヌ』ウェブサイト
URL:http://www.kamuymintara.com/film/index.htm
15th May, 2009 @ Green Building
アイヌ民族の伝統・文化を伝え続けている星野工(ほしのたくみ)氏と先住民サポーター・寺地五一(てらちごいち)氏によるアイヌ文化交流会が、5月15日にメルボルンシティにあるGreen Buildingで開催された。
アイヌ文化を知るこの希少な機会に、アイヌと同じような境遇の先住民族・アボリジニが住むこの国で、約20人の参加者が訪れた。星野氏はアイヌの伝統文様の入った民族衣装を身にまとって参加者を出迎え、すでに会場は開始時刻前から、星野氏と寺地氏を交えて和気あいあいと会話が弾んでいた。そうして、イベントはまるで昔ながらの友人の家に招待されたかのように、和やかな雰囲気で始まったのだ。
会場にすでに準備されていたのは、アイヌの祭具の数々。参加者はそれらを取り囲むようにして床に座り、火の神様に降りて来てもらうカムイ(神様)の儀、というアイヌの伝統儀式を体験することとなった。
儀式では、星野氏が「エカシ」と呼ばれる儀式を司る役目を担った。「いま私たちが精一杯あげることのできる穀物、お酒などを捧げる。」ということで、今回の儀式では、特別な神様への酒ではなくオーストラリアのヴィンテージワインを使用することや、また、伝統的には前の席は男性のみが座る場所であるということなど、参加者に手順が丁寧に説明された。
そうして星野氏によるアイヌの祈りが始まると、各々が手にした神様用の棒酒箸(イクパスイ)を使って、酒杯(トュキ)からイナウと呼ばれる、木で作られた幣(ぬさ)のような供物へ酒が捧げられた。参加者らは最初、緊張の面持ちではあったが、次第にその厳かな雰囲気の中でも笑顔がこぼれ、非日常な時間を存分に楽しんでいる様子であった。
儀式は約30分ほど続き、神様が神の国へ帰ることで終了した。本来は4、5時間続く長い儀式なのだそうだ。それほどアイヌの人々は神様との結びつきが強い。「アイヌの考えでは、人間と神様は平等なんですよ。例えば川で子供が溺れたら、村人はみんなで川に石を投げて、川の神様に抗議するんです。なぜ、守ってくれなかったんだ、って。そうしたら神様はちゃんと聞いてくれるから。」と星野氏は教えてくれた。
その後、参加者からの質疑応答では、アイヌの料理についての質問に、「アイヌは調味料を塩しか持たないんです。あとは自然にある物が味付けをしてくれる。」と星野氏は答える。アイヌは神様と自然と共に、穏やかに生きてきた民族だったのだ、とつくづく思った。
質疑応答が歓談に変わったころ、星野氏による、アイヌの民族楽器・ムックリの演奏が行われた。顎と歯を使って弦を弾き奏でる音は、奏者によって異なる。小さな音ではあるが、不思議にどこまでも遠く伸びて、その昔、恋人を呼び寄せるためにアイヌの女性が奏でたという話も納得できた。
日本人でアイヌ民族に関して知る人は意外に少ない。今回、半数の参加者が日本人であり、彼らが、「東京にアイヌが5,000人以上いる。差別などを恐れて、自身をアイヌだと公表できない人々はもっといるだろう。」という星野氏の話に驚いていたことからもそれはうかがえる。アイヌ民族は北海道にのみ存在する、とさえ思っている日本人は多数いるだろうと思われる。アイヌの現状、そして歩んできた道を伝えるために、現在、寺地氏らはドキュメンタリー映画『TOKYOアイヌ』を製作中であることが伝えられ、イベントの最後でその予告編が上映された。
土地を奪われ、辛苦の道を辿ることになったアイヌ。その歴史を伝え続け、文化を守るために活動している星野氏は言う。
「思いやりのあふれる社会になって欲しいんだ。アイヌの問題だけでなく、普通のことなんだよ。お年寄りをうやまい、助け、近所同士で子供の面倒を見る。そういうことなんだ。」
会場となったGreen Buildingはリサイクル資源を利用する環境にやさしい建物。自然とともに歩んで来たアイヌの文化を伝えるのに、充分にふさわしい場所であったに違いない。
●ドキュメンタリー映画『TOKYO アイヌ』ウェブサイト
URL:http://www.kamuymintara.com/film/index.htm
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