黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

電子記録債権法、あるいは今国会中に成立か?

2007-06-19 02:48:56 | 司法一般
 3月14日に国会に提出された電子記録債権法案は、6月7日に衆議院財務金融委員会に付託され、6月15日には早くも財務金融委員会及び衆議院本会議で可決され、同日には参議院の財政金融委員会に付託されました。
 衆議院財務金融委員会の議事録を見ると、山本国務大臣及び政府参考人に対する質疑の後、自民党の宮下一郎議員から質疑を終局し討論を省略し直ちに採決すべしとの討議が提出され、同動議が自民、公明の賛成多数で可決されたことにより、異様なスピードでの衆議院通過となったようです。
 このようなハイペースで審議を終えてしまうのであれば、あるいは今国会の会期中にも法案が成立するかもしれません。

 黒猫は、ある出版社から電子記録債権法に関する本の執筆を依頼されているところなので、法案が無事成立すること自体は有り難いのですが、若干類似する制度である韓国の「電子金融取引法」については、2003年8月に国会に提出されたものの、消費者保護の問題や金融監督当局による規制のあり方などをめぐって審議が難航し、ようやく2006年4月に法案が成立したと聞いています。
 しかも、韓国の電子金融取引法は、民法上の指名債権について、電子的方法による債権譲渡の対抗要件具備を認めることを主眼としている法律に過ぎませんが、日本の電子記録債権法案は、電子的な取引を前提とした、民法上の指名債権制度とも手形・小切手制度とも異なる新たな債権制度を創設しようというものであり、韓国の電子手形法や電子金融取引法に比べてもかなり大掛かりなことをやろうとしているのですが、そのように重大な法律を制定しようとしているのに、与党側のゴリ押しで討論もほとんど省略し、無理やりスピード採決で法案成立に持ち込むというやり方はいかがなものなのかと思われます。