菅藤浩三弁護士のブログで,ギャンブル依存症の話がとりあげられていました。
<参照>ギャンブル依存症の細い細い医療体制 in九州
http://ameblo.jp/kantokozo/entry-11528546532.html
ギャンブル依存症に限らず,弁護士の仕事をしていると,「この人病気なんじゃない?」と思えるような関係者に遭遇することが少なからずあります。その中には,ギャンブル依存症のように病気として認知され始めているものもあれば,未だ病気として認知されていないものもあります。以下,黒猫の知っている主なものを取り上げます。
※ 記事の内容は,一部ブラックジョークも含まれています。
※ アルコール依存症や薬物依存症は,既によく知られているのでこの記事では取り上げません。
○ ギャンブル依存症
パチンコ,カジノ等のギャンブルにはまり,ギャンブルが生き甲斐のようになってしまう。ギャンブルをやりたいという欲求が抑えられず,長期間ギャンブルをやらないと禁断症状が出る人もいる。ギャンブルのために仕事をさぼったり,大切な預貯金を取り崩してギャンブルにつぎ込んだり,多額の借金をしたりする。ギャンブルのために会社の金を横領するなど,犯罪行為に走る人もいたりする。
ギャンブル依存症は脳内状態の変化による精神疾患であり,ドーパミンやノルアドレナリンの分泌が増え,行動の抑制をつかさどるセロトニンの分泌が抑えられてしまっていることに起因するといわれているが,医学界でも詳しいメカニズムは未だ解明されておらず,確立した治療法も未だ発見されていない。なお,ギャンブル依存症は進行性の病気であり,放置しても自然治癒はまず期待できない。
ギャンブル依存症は早期発見が重要であり,親族や身内でギャンブル依存症と疑われる人がいる場合には,各県にある精神保健福祉センターなどに問い合わせるのが得策である。なお,ギャンブル依存症と疑われる人に対し,借金の肩代わりは絶対にやってはいけない。借金を肩代わりしても本人はまた借金をするだけで,問題の解決には全く結びつかないばかりか,肩代わりをした人まで経済的破滅に追い込まれるのが常である。
○ ネトゲー依存症
いわゆるネトゲー,ソーシャルゲームといわれるゲームにはまる病気である。ギャンブルと異なり,ネトゲーをいくらプレイしても経済的利益を得られる可能性はまずないが,他のプレイヤーに勝つことが生き甲斐のようになり,ゲーム内で提供される課金アイテム(ゲームを有利に進めることができるが,アイテムの入手に現実のお金が必要になる)に,信じられないくらいのお金をつぎ込むようになってしまう。
また,課金アイテム自体も「ガチャ」という形式で販売されていることが多く,ガチャの購入は通常一回数百円程度であるが,非常にレアなアイテムの出現確率は非常に低い。やがて,レアアイテムをゲットするだけのためにガチャを何百回,何千回も回す(購入する)ようになり,そのうちガチャを回すこと自体が快感になってしまうという,一種の擬似ギャンブルである。
ガチャのうち,いくつかのアイテムを揃えると景品としてレアアイテムをもらえるという「コンプガチャ」は景品表示法違反として規制の対象になったが,それ以外のガチャは現在でも放置状態であり,その社会的弊害は計り知れない。
もちろん,ゲーム自体にも多くの時間を割かれるため,ネトゲー依存症の多くは引きこもりである。仕事のある人でも,次第に仕事よりゲームの方が大事になってしまい,仕事の合間も携帯やスマホでゲームの状況を確認したり,他のユーザーと連絡を取り合ったりするようになる。
症状はギャンブル依存症と似ているが,ユーザー同士の仲間割れ等がきっかけで突然治癒したり,プレイしていたゲームが配信停止になって治癒したりということもたまにある。ネトゲー依存症により借金をする人も相当数おり,中には未成年者である子供のせいにしてネトゲーで出来た借金を踏み倒そうとする人もいるが,そういう人の借金を肩代わりしてはいけないのはギャンブル依存症の場合と同様である。
○ 買物依存症・ブランド品依存症
商品を使用するために買うのではなく,商品を買うこと自体に快感を覚えてしまう病気である。買い込んでしまう商品は人によって日用品からブランド物まで様々であるが,いずれも買うこと自体が目的であるため,購入した商品は全く使用されないことも多い。
特にブランド品は,購入するときに店員から丁寧に対応されたり,購入した後それを身に付けて親戚や知人に自慢したりすることで「自分は偉い人である」という空虚な快感を得ることができる(しかし,フランス製やイタリア製とされるブランド品でも,実際には製造工程の多くを中国の工場に外注していたりする)ので,買物依存症の対象になりやすい。ブランド品にはまる人は,要するに商品の価値を自分の目で見分けることができず,頭の中身のない人が外見を誤魔化すため身に付けているに過ぎないのだが,多くの人はそれに気付いていない。
ブランド品依存症は買物依存症の亜流であるが,ブランド品のロゴが付いているというだけで,商品の内容に照らしてもぼったくりとしか思えない金額を平然と出す(),またブランド品の着用を辞めると周囲から「懐事情が悪くなった」などと誤解され人によっては自分の商売にも悪影響が出るので自然治癒も困難であるといった特徴があることから,通常の買物依存症とは分けて考えるべきかも知れない。
買物依存症・ブランド品依存症ともに,それが原因で多額の借金をして自己破産に至る人は少なくないが,医学界でも未だ正式な病気としては位置づけられていない。
○ ヤミ金依存症
弁護士がヤミ金事件を何件か受任すると,依頼者の側にも相当に問題があることに気付く。やっとヤミ金退治が終わりかけた頃に「また借りました」との申告を受けたり,弁護士に内緒で一部の業者に対する返済を続けたりする。ヤミ金同士の情報交換も行われていて,弁護士に処理を依頼しても自分で返済してしまうような依頼者はヤミ金からカモにされ,そのような依頼者の事件は弁護士がいくら頑張っても,もはやヤミ金側は反応しなくなる。
通常の消費者金融ではブラックリスト制度があるため,弁護士に債務整理を依頼すれば原則として新たな借入れはできなくなるのだが,非合法の業者であるヤミ金にこのような制度はないため,弁護士に事件処理を依頼した後もヤミ金に頼ってしまう依頼者が少なからず出現してしまうのである。
こうした依頼者には,ヤミ金から取り立てを受けるのが「癖」「生き甲斐」「趣味」になっている様子さえ窺われ,本人の精神的な状態が疑われることもあるため,消費者問題MLでは「借金依存症(ヤミ金依存症)」という病気があるのではないかと真面目に議論されたこともあるが,医学界では未だ議論すら行われていないのが実情である。
こうしたヤミ金の再利用をする依頼者の事件は,永遠に終わることのないモグラ叩きのようなものであり,「ヤミ金の再利用が何度あったら辞任するか」という問いに対しては,概ね「3回まで」と答えるのが多数説であろう。ただし,最近は弁護士も事件が取れず経済的に窮乏している者が多いことから,こうしたヤミ金の再利用を続ける依頼者の事件を辞任もせずに延々と処理し続け,このような依頼者を「金のなる木」と見なしている弁護士がいる可能性も否定できない。仮にそういう弁護士がいたら,その弁護士も一種の「ヤミ金依存症」にかかっていると言えるであろう。
(参照:『クレジット・サラ金処理の手引き(5訂版)』170頁)
○ 万引き依存症
窃盗事件といえば,お金がなく生活に窮乏した人が行う犯罪であるというイメージが強いが,実際の窃盗はそうした事件ばかりではない。特にスーパーなどで行われる万引きについては,日常生活でストレスのたまった主婦や高齢者などが,店員に発覚しないよう商品の万引きを成功させることに快感を覚えてしまい,半ば趣味ないしゲーム感覚で万引きを繰り返すことも少なくない。平成18年の刑法改正で窃盗罪に罰金刑が新設されたのは,こうした社会的実態を踏まえてのことである。
趣味ないしゲーム感覚で犯罪を繰り返すのは,一種の精神的疾患によるものであるとも考えられ,単に窃盗罪を厳罰化するだけでは問題が解決しない可能性もあるが,万引きの常習者に対する精神医療的な取り組みは,今のところ全くと言って良いほどなされていない。
○ 法科大学院依存症
法曹養成の中核的機関とされる法科大学院は,実際には法曹養成の役割を全くと言って良いほど果たしておらず,法科大学院を修了して司法試験に合格する人は,いずれかの時点で法科大学院の教育方法が間違いであることに気付き,予備校に通ったり自主ゼミで勉強したりして,独自に司法試験対策の勉強をしているのが普通である(もっとも,法科大学院制度を批判すると自分の立身出世に響くことから,表立っては法科大学院を批判せず,ろくな根拠もなく「法科大学院教育は役に立った」などと主張する合格者も多い)。
しかし,法科大学院生・修了生の全てがそのように気付くわけではなく,残念ながら学者教員の言うことを真に受けて,法科大学院で学ぶことこそが真の法律学であるなどと誤信したまま三振博士となってしまう者も多い。そのような三振博士が司法試験を諦めて司法書士試験に転身すると,訴訟物とか要件事実とかいった怪しげな「法科大学院語」を使用して予備校講師に議論をふっかけたり,試験に必要な法的知識の暗記を「つまらない」などと主張して,法科大学院と同じような討論形式(ソクラティック・メソッド)による授業を要求したりして,予備校講師や他の受験生を閉口させる。
当たり前だが,そのような三振博士が実社会に受け容れられるはずもなく,彼らは自分の勉強不足または勘違いを棚に上げて,司法試験が悪い,弁護士が悪いなどといった見当違いの批判(そのほとんどが学者教員の受け売り)を繰り返す。結局,彼らを暖かく受け容れてくれるところは社会の中でも法科大学院しか存在しないので,三振博士の一部は法科大学院への再入学を希望することになる。
三振博士が法科大学院に再入学するのは,一般的には司法試験の受験資格を再取得するのが唯一の目的だと思われがちであるが,実際には修了後4年目くらいでまだ三振していないにもかかわらず,「三振した場合に備えて」法科大学院に再入学しようとする者もいる。
司法試験法4条2項後段の規定により,例えば修了後5年目で司法試験に落ちて三振しても,6年目と7年目は別の受験資格を取得しても司法試験を受験することは出来ないため,三振した場合に備えて「早めに」再入学するメリットは特にないのだが,それでも受験資格喪失前に再入学する者が相当数いるということは,法科大学院の教育こそ真の法律学だと信じ込んでいる「法科大学院依存症」患者にとって,要するに法科大学院の居心地が良いからに他ならない。
このような指摘に対し,法科大学院は多額の学費がかかるから再入学できる者はごく一部ではないかという批判はあり得よう。しかし,三振博士であっても既修者の特待生試験に合格できる程度の実力を備えている者は,授業料の全額免除を受けて法科大学院に再入学することも可能であるし,特待生試験に合格できない者であっても,日本学生支援機構の貸与制奨学金は,少なくとも法科大学院を修了できる見込みがあれば(おそらく再入学者であっても)受給できることになっている。
しかも,大学院在学期間中は(法科大学院への再入学であっても)奨学金の返還猶予を受けることができ,少なくとも当座の資金繰りは結構楽になるので,奨学金の返済に悩む法務博士にとって,法科大学院への再入学は経済的にも意外とメリットのある選択肢である。もちろん,再入学によって最終的に返済すべき奨学金の額は救い難いほど膨らむ可能性もあり,また再入学後の4回目の受験で司法試験に合格してもまともな就職先を得られる可能性はほとんどないのだが,そのようなことを気にする現実的思考の持ち主は,そもそも法科大学院に入学しないだろう。
今年の法科大学院入学者2,698名のうち,再入学者が何人いるかは分からないが,大半の法科大学院は再入学希望者の出願を広く受け入れており,中には再入学者をターゲットにしているところもあるくらいなので,合計では100名以上いたとしても不思議ではない。彼らは精神的要因によるか,あるいは社会的・経済的動機に後押しされているかを問わず,まさしく「法科大学院依存症」の患者たちなのである。
<参照>ギャンブル依存症の細い細い医療体制 in九州
http://ameblo.jp/kantokozo/entry-11528546532.html
ギャンブル依存症に限らず,弁護士の仕事をしていると,「この人病気なんじゃない?」と思えるような関係者に遭遇することが少なからずあります。その中には,ギャンブル依存症のように病気として認知され始めているものもあれば,未だ病気として認知されていないものもあります。以下,黒猫の知っている主なものを取り上げます。
※ 記事の内容は,一部ブラックジョークも含まれています。
※ アルコール依存症や薬物依存症は,既によく知られているのでこの記事では取り上げません。
○ ギャンブル依存症
パチンコ,カジノ等のギャンブルにはまり,ギャンブルが生き甲斐のようになってしまう。ギャンブルをやりたいという欲求が抑えられず,長期間ギャンブルをやらないと禁断症状が出る人もいる。ギャンブルのために仕事をさぼったり,大切な預貯金を取り崩してギャンブルにつぎ込んだり,多額の借金をしたりする。ギャンブルのために会社の金を横領するなど,犯罪行為に走る人もいたりする。
ギャンブル依存症は脳内状態の変化による精神疾患であり,ドーパミンやノルアドレナリンの分泌が増え,行動の抑制をつかさどるセロトニンの分泌が抑えられてしまっていることに起因するといわれているが,医学界でも詳しいメカニズムは未だ解明されておらず,確立した治療法も未だ発見されていない。なお,ギャンブル依存症は進行性の病気であり,放置しても自然治癒はまず期待できない。
ギャンブル依存症は早期発見が重要であり,親族や身内でギャンブル依存症と疑われる人がいる場合には,各県にある精神保健福祉センターなどに問い合わせるのが得策である。なお,ギャンブル依存症と疑われる人に対し,借金の肩代わりは絶対にやってはいけない。借金を肩代わりしても本人はまた借金をするだけで,問題の解決には全く結びつかないばかりか,肩代わりをした人まで経済的破滅に追い込まれるのが常である。
○ ネトゲー依存症
いわゆるネトゲー,ソーシャルゲームといわれるゲームにはまる病気である。ギャンブルと異なり,ネトゲーをいくらプレイしても経済的利益を得られる可能性はまずないが,他のプレイヤーに勝つことが生き甲斐のようになり,ゲーム内で提供される課金アイテム(ゲームを有利に進めることができるが,アイテムの入手に現実のお金が必要になる)に,信じられないくらいのお金をつぎ込むようになってしまう。
また,課金アイテム自体も「ガチャ」という形式で販売されていることが多く,ガチャの購入は通常一回数百円程度であるが,非常にレアなアイテムの出現確率は非常に低い。やがて,レアアイテムをゲットするだけのためにガチャを何百回,何千回も回す(購入する)ようになり,そのうちガチャを回すこと自体が快感になってしまうという,一種の擬似ギャンブルである。
ガチャのうち,いくつかのアイテムを揃えると景品としてレアアイテムをもらえるという「コンプガチャ」は景品表示法違反として規制の対象になったが,それ以外のガチャは現在でも放置状態であり,その社会的弊害は計り知れない。
もちろん,ゲーム自体にも多くの時間を割かれるため,ネトゲー依存症の多くは引きこもりである。仕事のある人でも,次第に仕事よりゲームの方が大事になってしまい,仕事の合間も携帯やスマホでゲームの状況を確認したり,他のユーザーと連絡を取り合ったりするようになる。
症状はギャンブル依存症と似ているが,ユーザー同士の仲間割れ等がきっかけで突然治癒したり,プレイしていたゲームが配信停止になって治癒したりということもたまにある。ネトゲー依存症により借金をする人も相当数おり,中には未成年者である子供のせいにしてネトゲーで出来た借金を踏み倒そうとする人もいるが,そういう人の借金を肩代わりしてはいけないのはギャンブル依存症の場合と同様である。
○ 買物依存症・ブランド品依存症
商品を使用するために買うのではなく,商品を買うこと自体に快感を覚えてしまう病気である。買い込んでしまう商品は人によって日用品からブランド物まで様々であるが,いずれも買うこと自体が目的であるため,購入した商品は全く使用されないことも多い。
特にブランド品は,購入するときに店員から丁寧に対応されたり,購入した後それを身に付けて親戚や知人に自慢したりすることで「自分は偉い人である」という空虚な快感を得ることができる(しかし,フランス製やイタリア製とされるブランド品でも,実際には製造工程の多くを中国の工場に外注していたりする)ので,買物依存症の対象になりやすい。ブランド品にはまる人は,要するに商品の価値を自分の目で見分けることができず,頭の中身のない人が外見を誤魔化すため身に付けているに過ぎないのだが,多くの人はそれに気付いていない。
ブランド品依存症は買物依存症の亜流であるが,ブランド品のロゴが付いているというだけで,商品の内容に照らしてもぼったくりとしか思えない金額を平然と出す(),またブランド品の着用を辞めると周囲から「懐事情が悪くなった」などと誤解され人によっては自分の商売にも悪影響が出るので自然治癒も困難であるといった特徴があることから,通常の買物依存症とは分けて考えるべきかも知れない。
買物依存症・ブランド品依存症ともに,それが原因で多額の借金をして自己破産に至る人は少なくないが,医学界でも未だ正式な病気としては位置づけられていない。
○ ヤミ金依存症
弁護士がヤミ金事件を何件か受任すると,依頼者の側にも相当に問題があることに気付く。やっとヤミ金退治が終わりかけた頃に「また借りました」との申告を受けたり,弁護士に内緒で一部の業者に対する返済を続けたりする。ヤミ金同士の情報交換も行われていて,弁護士に処理を依頼しても自分で返済してしまうような依頼者はヤミ金からカモにされ,そのような依頼者の事件は弁護士がいくら頑張っても,もはやヤミ金側は反応しなくなる。
通常の消費者金融ではブラックリスト制度があるため,弁護士に債務整理を依頼すれば原則として新たな借入れはできなくなるのだが,非合法の業者であるヤミ金にこのような制度はないため,弁護士に事件処理を依頼した後もヤミ金に頼ってしまう依頼者が少なからず出現してしまうのである。
こうした依頼者には,ヤミ金から取り立てを受けるのが「癖」「生き甲斐」「趣味」になっている様子さえ窺われ,本人の精神的な状態が疑われることもあるため,消費者問題MLでは「借金依存症(ヤミ金依存症)」という病気があるのではないかと真面目に議論されたこともあるが,医学界では未だ議論すら行われていないのが実情である。
こうしたヤミ金の再利用をする依頼者の事件は,永遠に終わることのないモグラ叩きのようなものであり,「ヤミ金の再利用が何度あったら辞任するか」という問いに対しては,概ね「3回まで」と答えるのが多数説であろう。ただし,最近は弁護士も事件が取れず経済的に窮乏している者が多いことから,こうしたヤミ金の再利用を続ける依頼者の事件を辞任もせずに延々と処理し続け,このような依頼者を「金のなる木」と見なしている弁護士がいる可能性も否定できない。仮にそういう弁護士がいたら,その弁護士も一種の「ヤミ金依存症」にかかっていると言えるであろう。
(参照:『クレジット・サラ金処理の手引き(5訂版)』170頁)
○ 万引き依存症
窃盗事件といえば,お金がなく生活に窮乏した人が行う犯罪であるというイメージが強いが,実際の窃盗はそうした事件ばかりではない。特にスーパーなどで行われる万引きについては,日常生活でストレスのたまった主婦や高齢者などが,店員に発覚しないよう商品の万引きを成功させることに快感を覚えてしまい,半ば趣味ないしゲーム感覚で万引きを繰り返すことも少なくない。平成18年の刑法改正で窃盗罪に罰金刑が新設されたのは,こうした社会的実態を踏まえてのことである。
趣味ないしゲーム感覚で犯罪を繰り返すのは,一種の精神的疾患によるものであるとも考えられ,単に窃盗罪を厳罰化するだけでは問題が解決しない可能性もあるが,万引きの常習者に対する精神医療的な取り組みは,今のところ全くと言って良いほどなされていない。
○ 法科大学院依存症
法曹養成の中核的機関とされる法科大学院は,実際には法曹養成の役割を全くと言って良いほど果たしておらず,法科大学院を修了して司法試験に合格する人は,いずれかの時点で法科大学院の教育方法が間違いであることに気付き,予備校に通ったり自主ゼミで勉強したりして,独自に司法試験対策の勉強をしているのが普通である(もっとも,法科大学院制度を批判すると自分の立身出世に響くことから,表立っては法科大学院を批判せず,ろくな根拠もなく「法科大学院教育は役に立った」などと主張する合格者も多い)。
しかし,法科大学院生・修了生の全てがそのように気付くわけではなく,残念ながら学者教員の言うことを真に受けて,法科大学院で学ぶことこそが真の法律学であるなどと誤信したまま三振博士となってしまう者も多い。そのような三振博士が司法試験を諦めて司法書士試験に転身すると,訴訟物とか要件事実とかいった怪しげな「法科大学院語」を使用して予備校講師に議論をふっかけたり,試験に必要な法的知識の暗記を「つまらない」などと主張して,法科大学院と同じような討論形式(ソクラティック・メソッド)による授業を要求したりして,予備校講師や他の受験生を閉口させる。
当たり前だが,そのような三振博士が実社会に受け容れられるはずもなく,彼らは自分の勉強不足または勘違いを棚に上げて,司法試験が悪い,弁護士が悪いなどといった見当違いの批判(そのほとんどが学者教員の受け売り)を繰り返す。結局,彼らを暖かく受け容れてくれるところは社会の中でも法科大学院しか存在しないので,三振博士の一部は法科大学院への再入学を希望することになる。
三振博士が法科大学院に再入学するのは,一般的には司法試験の受験資格を再取得するのが唯一の目的だと思われがちであるが,実際には修了後4年目くらいでまだ三振していないにもかかわらず,「三振した場合に備えて」法科大学院に再入学しようとする者もいる。
司法試験法4条2項後段の規定により,例えば修了後5年目で司法試験に落ちて三振しても,6年目と7年目は別の受験資格を取得しても司法試験を受験することは出来ないため,三振した場合に備えて「早めに」再入学するメリットは特にないのだが,それでも受験資格喪失前に再入学する者が相当数いるということは,法科大学院の教育こそ真の法律学だと信じ込んでいる「法科大学院依存症」患者にとって,要するに法科大学院の居心地が良いからに他ならない。
このような指摘に対し,法科大学院は多額の学費がかかるから再入学できる者はごく一部ではないかという批判はあり得よう。しかし,三振博士であっても既修者の特待生試験に合格できる程度の実力を備えている者は,授業料の全額免除を受けて法科大学院に再入学することも可能であるし,特待生試験に合格できない者であっても,日本学生支援機構の貸与制奨学金は,少なくとも法科大学院を修了できる見込みがあれば(おそらく再入学者であっても)受給できることになっている。
しかも,大学院在学期間中は(法科大学院への再入学であっても)奨学金の返還猶予を受けることができ,少なくとも当座の資金繰りは結構楽になるので,奨学金の返済に悩む法務博士にとって,法科大学院への再入学は経済的にも意外とメリットのある選択肢である。もちろん,再入学によって最終的に返済すべき奨学金の額は救い難いほど膨らむ可能性もあり,また再入学後の4回目の受験で司法試験に合格してもまともな就職先を得られる可能性はほとんどないのだが,そのようなことを気にする現実的思考の持ち主は,そもそも法科大学院に入学しないだろう。
今年の法科大学院入学者2,698名のうち,再入学者が何人いるかは分からないが,大半の法科大学院は再入学希望者の出願を広く受け入れており,中には再入学者をターゲットにしているところもあるくらいなので,合計では100名以上いたとしても不思議ではない。彼らは精神的要因によるか,あるいは社会的・経済的動機に後押しされているかを問わず,まさしく「法科大学院依存症」の患者たちなのである。
失礼しました。
なんといっても考査委員が試験直前に特別の演習をやってくれるのですから!
「法科大学院では司法試験対策をしてはならない」というような奇妙なことになってしまったのは、あの事件の後遺症ですね。
それから、今年3回目の別の友人が適性も申し込んで「慶應受ける」とか言ってました。
慶應って三振博士受け入れてたのね。
思い出は美しいのでしょうか。
もしそういう制度になっているなら、三振博士はもちろん、司法試験に合格した人でもどこかの大学院に籍を置いて返還猶予してもらう人が出てきてしまうのではないでしょうか。
下位ローなら既修学費全免当たり前だから、生活費さえ工面できれば、ローの再入学はリーズナブル
しかし東大ローではバッチリ予備試験対策やっています。
井上○仁公認です。