黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

公益法人改革の概要(3)

2007-06-21 04:42:50 | 司法一般
 前回の続きです。

9 既存の民法法人について
 現行民法34条、及び現行民法施行法の規定により設立された社団法人や財団法人は、新法の施行後5年間、整備法の規定による特例社団法人または特例財団法人(特例民法法人)として存続することができます。
 特例民法法人は、建前上一般社団法人・一般財団法人に含まれますが、名称については従来どおりであり、その他経過措置が多く設けられ、概ね従来どおりの組織形態のままで存続できるようにされています。旧主務官庁による監督も従来どおりであり、一定の場合には旧主務官庁による措置命令や解散命令の権限も認められています。
 特例民法法人は、新法施行後5年間の移行期間中に、公益社団法人(公益財団法人)へ移行するか、一般社団法人(一般財団法人)への移行しなければならず、そのいずれも行わない場合は、移行期間の満了時に解散したものとみなされます。
 特例民法法人の、公益社団法人または公益財団法人への移行の認定の申請は、法律上公益認定法による公益認定の申請とは別個の手続きとされていますが、認定をする行政庁及び認定の基準はほぼ同じです。
 一方、特例民法法人が一般社団法人・一般財団法人に移行するには、移行の認可を受ける必要があります。
 認可をする行政庁は公益法人への移行の場合と同じであり、認可を受けるには、(1)定款変更案が一般社団・財団法人法及びこれに基づく命令に適合していること、(2)現行民法72条の規定により、解散した場合には当該法人の目的に類似する目的のために処分し、または国庫に帰属すべきものとされる残余財産が一定額以上存在する場合には、その財産を公益目的に支出することにより零とする計画(公益目的支出計画)を作成し、当該民法法人がその計画を確実に実施すると見込まれること、が必要になります。
 その他の選択肢としては、旧主務官庁の認可を経て他の民法法人と吸収合併する、社団法人については移行期間内に総会決議で解散してしまうといったものがあります。特例民法法人の清算手続については、現行民法82条の例により、裁判所の監督に属することとされ、清算人については裁判所に選任・解任の権限が認められています。
 なお、新法の施行により、民法の法人に関する規定の多くが削除されますが、司法試験に出てくる現行民法44条(法人の不法行為能力等)に関する規定は一般社団・財団法人法78条に移り、他の法律で民法の法人に関する規定が準用されていたものについては、現行民法44条を除き、概ね各法律に独自の規定を設ける旨の改正がなされています。

10 今後の展望
 前回にも触れたとおり、公益認定の基準等に関する具体的な中身は、今後制定される政令・内閣府令やガイドラインによって初めて明らかにされるところが多く、現段階ではまだ白紙の事項も多いです(ただし、公益認定等については、実質的審査は内閣府に設けられる審議会である公益認定等委員会によって行われるものであり、NPO法人のように国税庁が公益性を審査するわけではありません)。
 ただ、これまで既存の民法法人については、法律より主務官庁の監督に頼るところが大きく、法律に関しては素人集団と評するしかない法人も散見されました。
(特に、黒猫も会員になっている産業カウンセラー協会の会誌を読むと、いかにも素人が書いたような法律記事が多く、時々協会に抗議してやろうかと思うことがあります。)
 新法施行後は、既存の民法法人も規模によっては大企業並みに法律及び経理に関する体制を整備する必要に迫られ、関係する法律もこれまで見てきたようにかなり複雑で専門的な知識が必要なものですので、公益法人関係も弁護士の新たな専門分野となってくる可能性がありますね。

(やっと終わった・・・。まさかこんなに長くなるとは、書き始めたときには想像してなかったよ。忙しいのに無理して書くんじゃなかった・・・。)