黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

共同親権といっても・・・

2011-07-30 16:08:44 | 司法一般
 最近,ハーグ条約の批准問題にも関連して,わが国でも子の共同親権を認めるべきだという風潮が高まっているような雰囲気があり,そのような考え方に対し消極的な法律実務家を非難する声もあるようです。
 そのような論調を採る意見の一つとして,共同親権運動ネットワークによる以下のような指摘があります。

「法曹関係者の中には、現在の単独親権制度においてすら親どうしの紛争が激しいのに、離婚後も子どものことで合意をとることが必要となる共同親権制度では、紛争が離婚後も継続することになり、共同親権には慎重という意見が多くあります。
 家裁では「両親間の葛藤が高い」、「監護家庭の安定」を理由に、多くの親子関係が絶たれ、法曹関係者がそれを「しかたのないこと」と当事者に諦めさせる場面が多くあります。
 しかし、このような離婚に伴う葛藤の高まりは、当事者のせいだけではなく、一方的に親権を剥奪させられ、親権のない親が親たりえない証明とされる現在の法制度と家裁の運用の結果です。
 共同親権になっても、離婚後の子どもの養育について紛争が続く親はいるでしょう。しかし、離婚しても子どもの成長にかかわり続けられることが法的に保障されれば、離婚時に譲り合う部分も多くなり、葛藤が離婚を契機に高まることは避けられることが予想されます(実際、ドイツでは共同親権の採用とともに調停の申し立て件数が減少しました)。
 また共同養育は、お互い手元に子どもがいる場合にだけ子どもの養育に責任を持ち、それぞれの家庭生活には干渉しない並行養育が基本です。「非関与という協力」さえできれば、あとは子どもの受け渡し時の安全が確保できれば、大部分の共同養育、面会交流は安定していくはずです。
 裁判所関係者や弁護士の方々にも、この点をご理解いただき、現行法制度のもとにおいても共同養育、面会交流を進めていくことをお願いします。また「争わないではいられない」現在の法制度を、「協力することも可能な」法制度へと移行していくことに力をお貸しください。」

 このような指摘は,一見すると妥当性を有するようにも読めますが,共同親権の導入という大きな問題に関して,あまりにも楽観的な見方であるとの批判を免れません。
 現行民法下でも,離婚した両親の間で親権者と監護権者を分離して,事実上の共同親権のような形で運用させること自体は可能であり,あまりしっかりとした出典を挙げることはできませんが,わが国の家裁実務でも一時期,例えば子と同居する母親を監護権者,子と別居する父親を親権者をするといった運用が試みられていた時期もあるようです。
 しかし,親権者と監護権者の権限は法律上明確ではなく,結局は離婚後も家庭的紛争を継続させるだけであるという結果が判明したことから,黒猫が弁護士登録をした時期には,既に親権者と監護権者の分離は相当でないというのが,実務界の基本的認識となっていました。
 つまり,共同親権に類似した考え方は,既にわが国でも試験的な実務運用が行われ,しかも散々な失敗に終わっているというわけです。「離婚しても子どもの成長にかかわり続けられることが法的に保障されれば、離婚時に譲り合う部分も多くなり、葛藤が離婚を契機に高まることは避けられる」などという考え方は,既に実務法曹の多くが全く現実的でないことを実感してしまっているので,つい最近弁護士登録したばかりの新人さん相手ならともかく,ある程度経験のある実務関係者に対しては,全く説得力のない議論でしかありません。
 そもそも,離婚して子供と別居した親のすべてが,子供の養育について熱心に取り組んでいるわけではありません。逆に言えば,子供の養育費さえ支払いを渋るような親も少なくないため,子供の養育費に関する強制執行については民事執行法に特則を設けざるを得なかったくらいです。
 そのような親について,仮に面接交渉の機会を法的に保証したところで,それが子の利益のために活かされるとは限りません。面接交渉の機会を利用して子やその親に虐待をし,それがきっかけで片親が面接交渉を拒否して法的紛争となる場合もあり,子の引き渡しに関するハーグ条約についても,子やその親に対する嫌がらせの手段として悪用する例が少なくないと聞いています。
 もっとも,弁護士や裁判官など法律の専門家は,実際に紛争となったケースだけを見ているのが通常なので,あるいは性悪説のような考え方にこだわり過ぎているのかも知れず,世の中には共同親権者となるに相応しい真面目な親も相当数いるのかもしれません。
 ただし,離婚後における子の養育について夫婦間で合意ができるのであれば,別に法律をどうこうしなくても,前述したように親権者と監護権者を分離し,夫婦共同親権のような形で子の養育を行うことは可能であり,離婚後における子の養育についてそのような取り決めをする社会慣行が広がっているのであれば,それを法的に保護するような立法措置の在り方を考えることは可能でしょう。
 そのような慣行が実際にはないにもかかわらず,諸外国で共同親権制度を導入している例があることを理由に,わが国でも共同親権制度を導入すべきとの考え方は,当事者であれば法律上子の親権が認められなかったことへの腹いせか,当事者でなければ離婚後における子の共同親権が実務上いかに難しいものであるか理解しておらず,単に理念的見地から主張しているものとしか考えられず,実務家としてはそのような議論の方向性には疑問を呈するしかありません。
 上記の指摘では,「共同養育は、お互い手元に子どもがいる場合にだけ子どもの養育に責任を持ち、それぞれの家庭生活には干渉しない並行養育が基本です。」と述べていますが,両親が近くに居住しており,面接交渉にもそれほど支障がない状態であればあるいはこのような並行養育も可能かもしれません。しかし,仕事ないし生活の都合上,親の一方が遠隔地に転居し,又は外国に移住することとなった場合はどうでしょうか。
 実際に共同親権を認めている国では,このような事情によって共同親権が破綻することを防ぐために,国外への移住には裁判所の許可が必要であるなどという法律を定めている国も珍しくありません。「それぞれの家庭生活には干渉しない並行養育」など,何ら現実性のない建前論に過ぎないことは明らかでしょう。
 同様に,子供の引渡し時における安全の確保についても,保証など全く出来ません。共同親権導入論者は,子の面接交渉が行われる度,いちいち警察官を立ち会わせることができるなどと思っているのでしょうか。
 上記のような指摘に対しては,日弁連などの法曹関係者は,基本的にまともに取り合っていないようですが,仮にまともに取り合ったとしても,結論としてはゼロ回答を出すしかないであろうというのが結論です。

7 コメント

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BLGOOSについて (BLOGOS編集部)
2011-08-02 12:52:40
突然の書き込みにて、失礼いたします。
政治・経済を中心とした情報サイト「BLOGOS」の編集部です。
貴ブログのエントリを転載させていただけないかと思い書き込みさせていただきました。
もしよろしければ、詳細を説明させていただきますので、
blogos@livedoor.net
までご連絡いただけないでしょうか。
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Unknown (Unknown)
2011-11-23 00:06:02
はじめまして。同業者です。

さて、共同親権については、共同親権の具体的内容にふれられないまま、無駄に理想化されているのではないか、と危惧しています。

例えば、ブラジルの父の元で半年、アメリカの母の元で半年、そしてまたブラジルに半年、アメリカに半年・・・を延々と繰り返すのが共同親権。
つまるところ、親が子供を取り合う状態が離婚後も続くが、とりあえず裁判所の前からは紛争がなくなるので裁判所にとっては便利な制度、というのが共同親権の実態です。

日本でこの制度が導入されたらどうなるでしょうか。
日本では教育カリキュラムが緻密で教育水準が高いため、転校を繰り返せば授業について行けなくなります。
塾や予備校などの受験対策にも差し障りがでます。
転校の繰り返しによるいじめなどの弊害も大きい。特に、親が離婚したと言うことは日本ではネガティブ評価になりがちなので、一般にはオープンにされませんが、共同親権の場合には明らかになってしまいます。
親が再婚した場合などに問題は顕著で、行ったり来たりでは新しい家庭を形成しなじんでいくことはとても難しくなります。そのため、学校のみならず家庭でも子供の居場所がなくなる危険性もあります。
総じて、共同親権の導入は、子供の生活も精神状態も安定しない危険性が高すぎます。

家庭は社会の最低構成要素であり、家庭が安定しなければ社会も安定しません。共同親権制度のある国のていたらくがどうなっているか、を考えると、共同親権導入後の弊害も容易に予測できます。ロースクール問題もそうですが、失敗して社会問題化してからでは遅すぎます。

それでも、宇都宮体制は、ますます、アメリカンスタンダードに追従していくのでしょう。
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Unknown (名無し)
2012-05-20 21:51:22
>結局は離婚後も家庭的紛争を継続させるだけであるという結果が判明したことから,黒猫が弁護士登録をした時期には,既に親権者と監護権者の分離は相当でないというのが,実務界の基本的認識となっていました。

全くデタラメです。
離婚後も共同親権で両方の親とかかわりを持っていたほうが、子どもが健やかに育つことが実証されています。
離婚後も共同親権になると、弁護士の仕事が減るからという理由で反対しているようですが、離婚後も共同親権にすれば、子どもの養育に関して弁護士を挟んで協議することが増えるので、離婚後の共同親権は弁護士にとっても仕事が増える絶好のチャンスなのに、なぜ反対するのかわかりません。

>共同親権制度のある国のていたらくがどうなっているか

これもデタラメ。
例えば離婚後共同親権を導入したフランスでは、導入後出生率が増え、女性一人辺り2.02と高い水準を誇っています。
離婚後単独親権だと、離婚後の不公平を恐れて、特に男性は結婚したがらないのです。
それが今の日本の現状です。
日本の出生率を上げ、経済を活性化させるためには、離婚後の共同親権は必須です。

>親が子供を取り合う状態が離婚後も続くが、とりあえず裁判所の前からは紛争がなくなるので裁判所にとっては便利な制度、というのが共同親権の実態です。

はいデタラメです。
離婚後も共同親権で、いろいろなことを協議するのに裁判所が関与することが増えるので、裁判所の仕事は飛躍的に増えます。
先進国の例を見ても明らかです。
法曹関係者がこの程度の知識しか持っていないとは、あきれるばかりです。

>共同親権の導入は、子供の生活も精神状態も安定しない危険性が高すぎます。

デタラメのオンパレードです。
発達心理学の研究結果で、離婚後も共同親権の方が子どもの精神状態が安定することは、議論することも馬鹿馬鹿しいくらいに認められていることです。
当たり前ですよね。
子どもには父親も母親も必要なのですから。
因みに児童虐待が起こる確率が一番少ないのが、離婚後共同親権です。
普通の家庭よりも低いです。
一番高いのが離婚後単独親権です。
弁護士なのに、この程度のことも知らないとは。。。

日本の弁護士のレベルの低さを証明するブログ。
よく恥ずかしげも無くデタラメを疲労できるものと、逆に感心してしまいました。
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Unknown (名無し)さん ()
2013-03-25 21:39:54
>因みに児童虐待が起こる確率が一番少ないのが、離>婚後共同親権です。
>普通の家庭よりも低いです。

これは嘘ですよ、こんな統計はありません。

確かに離婚後、一時的に共同親権(面会交流)で子どもの落ち着くケースも確認されていますが
互いが再婚したり、すると疎外感から驚嘆に自己肯定感が下がる結果が出でいます。
一番影響がないのは離婚に至らなかった親の子どもです。
子どものいる家庭の離婚防止策を報じる方が子ども荷は良いのです。

ここにある法曹界の見解はもはや常識になっています。
離婚経験者で子どもと住んでいない方の書き込みでしょうが、嘘や暴言は感心しませんね
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共同親権 (Unknown)
2013-04-24 15:10:23
理想的なかかわり方だと思います。
いずれにしても、子供意思が一番尊重されてほしいです。
片方の親が子供に面接する権利などが言われていますが・・・・。
子供が、両方の親から経済的、精神的なバックアップを受ける権利。子供が会いたい時に会う権利。
それに応じる義務に強制力があるものであってほしいです。子供の権利に応じる義務だという認識であれば、親権が有利になるための道具にならないのではないでしょうか?
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Unknown (Unknown)
2013-04-24 15:14:46
親が子供に 僕の人生があるんだよ とのたまった実例もあります。
離婚後、再婚相手との兼ね合いで子供を親に預けたまま、会っても無視する人もいました。
(誰の子供なんだろうと、知らない人は思うくらい)

親が自分の都合で子供の人生を踏みにじる権利はないと思います。
親になったら権利だけでなく、義務があり、それは離婚ではなくならないということをはっきりさせてほしいです。

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Unknown (Unknown)
2013-05-13 02:01:38
もう少し考えて発言しろよ馬鹿
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