2月8日,千葉県弁護士会で「法科大学院を中核とする法曹養成制度」の見直しを求める決議が採択されました。
決議内容の詳細はリンク先を各自参照して頂きたいのですが,法科大学院修了を司法試験の受験資格とすることなどを定めた私法試験法第4条を撤廃すること,司法修習を2年間とし司法修習生に給費を支給することを求めています。
これまで,司法試験合格者数を年間1000人程度に削減すべきという決議は地方の単位会でしばしば見られましたが,正面から法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度の撤廃(この記事では便宜上,これを「法科大学院制度の撤廃」と呼ぶことにします)を求める決議がなされたのは,黒猫の知る限り今回が初めてです。
ただし,愛知県弁護士会では,日弁連の意見照会に対する意見書という業界内部向けの文書ではあるものの,法科大学院制度の撤廃を求める意見表明を既に行っているほか,札幌弁護士会でも似たような決議を行うかどうかで議論が行われている模様であり,このような動きは今後他の単位会にも波及する可能性があります。
千葉県弁護士会の決議では,法科大学院制度に関する痛烈な批判が並べられており,その内容の多くは以前このブログで指摘し続けてきたことでもありますが,要するに法科大学院の受験者は激減して有意な人材がますます法曹を敬遠する傾向が強まっている,法科大学院に通えない者にとって法科大学院制度は司法試験の受験機会を阻害するものであり,法科大学院に通うことができる者にとっても同制度は大きな時間的障壁・経済的障壁となっており,しかも法科大学院に対する国費投入は平成16年度から平成22年度までの推計で585億円にものぼっているが,実際の法科大学院修了者をみても目に見える教育効果があるとはいえないなどとしています。
また,「2012年の法科大学院適性試験受験者は5967人であったが,同年の司法試験予備試験の受験者はこれを上回る7183人であり,法科大学院ルートは,法曹志望者からの支持を得られていない」と指摘した上で,かかる現実を直視すれば,法科大学院の修了を司法試験の受験資格とはしないというのが多様かつ優秀な人材を多く集める最も有効な改善策であることは自明である」と結論づけています。
さらに,決議文では「受験資格制限の撤廃,司法修習の充実,給費制は,崩壊しつつある法曹養成制度全体を立て直すためにいずれも不可欠なものであり,速やかに実現されなければならない」とも述べられており,関係者の現状に対する危機感がいかに切迫したものであるかは,容易に感じ取ることができるでしょう。
単位会レベルで法科大学院制度の廃止が決議されても全体には影響しないだろうと考える人もいるかも知れませんが,法科大学院制度に対する不満は弁護士業界全体でも次第に高まっており,地方の単位会ではついに制度廃止派が多数を占めるところも現れたというところが重要なのです。日弁連の執行部といえども,地方のこうした声を無視することは許されません。
来年にはまた日弁連の会長選挙がありますが,ただでさえ現執行部は会長選挙に関する会則の改正(再投票時または再選挙時には,候補者が3分の1以上の単位会における支持を必要としないものとする)に失敗し求心力を失っていますから,現執行部がこれまでどおり法科大学院制度の支持にこだわる一方で,法科大学院制度の廃止を訴える強力な対立候補が現れれば,現執行部が来年の選挙で再び会長ポストを失う可能性も否定できないのです。
来年の選挙で日弁連まで法科大学院制度廃止に傾けば,政府としても法科大学院制度の維持はかなり困難になります。日弁連に法律を改正させる力はなくても,法科大学院修了者の採用を拒否することや司法修習生の受け入れを拒否することは可能であり,しかも法科大学院制度の不合理性は誰の目から見ても明らかですから,世論を味方に付けて強引に押し切ることもできません。
今年法科大学院に入学する人が何人ほどになるのかは分かりませんが,標準年限で修了したと仮定しても,実際に司法試験を受けられるのは既修者なら2年後,未修者なら3年後からです。制度自体がここまで崩壊している以上,2年ないし3年後まで現行制度が維持されるという保障は誰にも出来ませんが,法科大学院修了を司法試験の受験要件から外す場合に特段の経過措置は不要であり,おそらく制度改正が行われれば,法科大学院修了者も他の受験者と同じ立場で司法試験に臨むことになります。
つまり,今から法科大学院に入学しても,修了する頃には法科大学院の入学は全くの無駄になる可能性が高いのです。現実に法科大学院へ入学した人の間でも,法科大学院の授業は司法試験にも実務にもほとんど役に立たないという認識が一般化しており,学生は法科大学院の授業など聞き流して予備試験の勉強をしている層と,単なるモラトリアムの場として漫然と過ごしている層に二極化しており,後者の層が司法試験に合格できる可能性はほとんどありません。
予備試験の受験者層が,いわば予備試験の滑り止めとして法科大学院に入学する例もあると思いますが,法科大学院では授業のレポート課題などがむやみに多く,法科大学院に入学すると司法試験や予備試験の成績がかえって落ちるとも言われています。したがって,現行制度の下でも法科大学院制度の存在意義は無きに等しいのですが,制度改正が行われれば「司法試験の受験資格付与機関」という最後の存在意義まで失われることになります。
今年法科大学院に入学しようと考えている方,またはその親御さんへ。
今からでも遅くはありません。貴重な人生とお金を棒に振るだけの法科大学院入学は,絶対にやめましょう。
決議内容の詳細はリンク先を各自参照して頂きたいのですが,法科大学院修了を司法試験の受験資格とすることなどを定めた私法試験法第4条を撤廃すること,司法修習を2年間とし司法修習生に給費を支給することを求めています。
これまで,司法試験合格者数を年間1000人程度に削減すべきという決議は地方の単位会でしばしば見られましたが,正面から法科大学院修了を司法試験の受験資格とする制度の撤廃(この記事では便宜上,これを「法科大学院制度の撤廃」と呼ぶことにします)を求める決議がなされたのは,黒猫の知る限り今回が初めてです。
ただし,愛知県弁護士会では,日弁連の意見照会に対する意見書という業界内部向けの文書ではあるものの,法科大学院制度の撤廃を求める意見表明を既に行っているほか,札幌弁護士会でも似たような決議を行うかどうかで議論が行われている模様であり,このような動きは今後他の単位会にも波及する可能性があります。
千葉県弁護士会の決議では,法科大学院制度に関する痛烈な批判が並べられており,その内容の多くは以前このブログで指摘し続けてきたことでもありますが,要するに法科大学院の受験者は激減して有意な人材がますます法曹を敬遠する傾向が強まっている,法科大学院に通えない者にとって法科大学院制度は司法試験の受験機会を阻害するものであり,法科大学院に通うことができる者にとっても同制度は大きな時間的障壁・経済的障壁となっており,しかも法科大学院に対する国費投入は平成16年度から平成22年度までの推計で585億円にものぼっているが,実際の法科大学院修了者をみても目に見える教育効果があるとはいえないなどとしています。
また,「2012年の法科大学院適性試験受験者は5967人であったが,同年の司法試験予備試験の受験者はこれを上回る7183人であり,法科大学院ルートは,法曹志望者からの支持を得られていない」と指摘した上で,かかる現実を直視すれば,法科大学院の修了を司法試験の受験資格とはしないというのが多様かつ優秀な人材を多く集める最も有効な改善策であることは自明である」と結論づけています。
さらに,決議文では「受験資格制限の撤廃,司法修習の充実,給費制は,崩壊しつつある法曹養成制度全体を立て直すためにいずれも不可欠なものであり,速やかに実現されなければならない」とも述べられており,関係者の現状に対する危機感がいかに切迫したものであるかは,容易に感じ取ることができるでしょう。
単位会レベルで法科大学院制度の廃止が決議されても全体には影響しないだろうと考える人もいるかも知れませんが,法科大学院制度に対する不満は弁護士業界全体でも次第に高まっており,地方の単位会ではついに制度廃止派が多数を占めるところも現れたというところが重要なのです。日弁連の執行部といえども,地方のこうした声を無視することは許されません。
来年にはまた日弁連の会長選挙がありますが,ただでさえ現執行部は会長選挙に関する会則の改正(再投票時または再選挙時には,候補者が3分の1以上の単位会における支持を必要としないものとする)に失敗し求心力を失っていますから,現執行部がこれまでどおり法科大学院制度の支持にこだわる一方で,法科大学院制度の廃止を訴える強力な対立候補が現れれば,現執行部が来年の選挙で再び会長ポストを失う可能性も否定できないのです。
来年の選挙で日弁連まで法科大学院制度廃止に傾けば,政府としても法科大学院制度の維持はかなり困難になります。日弁連に法律を改正させる力はなくても,法科大学院修了者の採用を拒否することや司法修習生の受け入れを拒否することは可能であり,しかも法科大学院制度の不合理性は誰の目から見ても明らかですから,世論を味方に付けて強引に押し切ることもできません。
今年法科大学院に入学する人が何人ほどになるのかは分かりませんが,標準年限で修了したと仮定しても,実際に司法試験を受けられるのは既修者なら2年後,未修者なら3年後からです。制度自体がここまで崩壊している以上,2年ないし3年後まで現行制度が維持されるという保障は誰にも出来ませんが,法科大学院修了を司法試験の受験要件から外す場合に特段の経過措置は不要であり,おそらく制度改正が行われれば,法科大学院修了者も他の受験者と同じ立場で司法試験に臨むことになります。
つまり,今から法科大学院に入学しても,修了する頃には法科大学院の入学は全くの無駄になる可能性が高いのです。現実に法科大学院へ入学した人の間でも,法科大学院の授業は司法試験にも実務にもほとんど役に立たないという認識が一般化しており,学生は法科大学院の授業など聞き流して予備試験の勉強をしている層と,単なるモラトリアムの場として漫然と過ごしている層に二極化しており,後者の層が司法試験に合格できる可能性はほとんどありません。
予備試験の受験者層が,いわば予備試験の滑り止めとして法科大学院に入学する例もあると思いますが,法科大学院では授業のレポート課題などがむやみに多く,法科大学院に入学すると司法試験や予備試験の成績がかえって落ちるとも言われています。したがって,現行制度の下でも法科大学院制度の存在意義は無きに等しいのですが,制度改正が行われれば「司法試験の受験資格付与機関」という最後の存在意義まで失われることになります。
今年法科大学院に入学しようと考えている方,またはその親御さんへ。
今からでも遅くはありません。貴重な人生とお金を棒に振るだけの法科大学院入学は,絶対にやめましょう。
ルートが旧司法試験のままだったとしても、毎年2100人も合格させたらやはりすぐ就職難が起こり弁護士の年収は激減したでしょうし、そのことが報道されて法曹志願者は大きく減っただろうと思います。
ただ、法科大学院制度がその志願者減少に拍車をかけたことは間違いないと思います。弁護士になった場合のリターンが激減したのにコストは激増したのですから。
法科大学院を廃止すれば、優秀な若者を法曹界へ呼び戻す効果はそれなりにあると思います。せめてコストを下げようということですよね。ただ、もしリターンがこのまま減り続けたら、コストを旧司時代に戻しても、あまり大きな効果は期待できないのではないでしょうか。
一定の既得権の打破は必要だったし・・・。
しかし、今の日本、若者いじめがすごいな。
こりゃ、延命措置もいつまでもつのやら・・・。
すくなくとも来年、未習者で入学する方が受験資格を失う9年後までは、法科大学院修了要件は撤廃されないでしょう。
勿論、合格者数の調整はできますが。
私は、給費制の記者会見では、ロースクール被害についても可能な限り、話すようにしています。
給費制復活運動の盛り上がりが、もしかしたらロースクール受験資格要件を間接的に廃止に追い込むことができると思いますので、初めての貸与制で育った65期として、後輩達のため、全力を尽くしたいと思います。
甲南ロー出身の弁護士さん カッコいいです。
貸与制という理不尽を味わいながらも後輩のために全力を尽くせるというのは,本当にすごいことだと思います。
頑張ってください!
あと,ロースクールの問題点として,ロースクール間の教育内容不平等もあると思います。(例えば,受験対策をするかどうかなど)また,同じロースクール内でも,受験指導がこっそりと行われて不公平などの問題点があると思います。
同じ学費を払っても,受ける教育が違うのはおかしいと思います。
http://lawschool-konan.jp/because/index.php
because KONAN の更新が長期間止まっています。
トップページにあったはずのバナーもなくなって,サイトマップからしか行けないようになっています。
本当なら,5000円のチャレンジがどうだったのか,後期入試にあたって甲南ローヤーの志がどうとか,いろいろ書くことはあると思うのですが。
院長は元気なのでしょうか?
谷垣法務大臣は、法科大学院についてはどういうスタンスだったっけか。
風の噂で、廃校になった、院長は合格者と入学者が減ったことの責任を取って辞任したと聞いたのですが、一応甲南ローも院長も健在のようですね。
ロースクールでの受験指導禁止は、各ロースクール間で不公平を生むだけでなく、更に予備校費用の出費の負担を課し、 その費用が払えるかで新司に合格できるか差を生じさせています。
一番良いのは、ロースクール受験資格要件そのものを廃止することです。
甲南ローが話に出ましたので、院長風に言えば、「ロースクールの廃止こそがロースクールの社会的責任を果たす」、「ロースクールの廃止の主張こそが正義を語る」、「心にバッジを付けるからこそ、不合理なロースクール制度の廃止を主張する」
だと思います。
単純に商売して生き残りをはかるその辺の飲食店とか八百屋と同じ自営業ですね。ひと昔前とは隔世の感があります。どうにか弁護士バッジなどただのガラクタにしかみえなくなりました。残念です。とにかく弁護士人口を減らさないと…官僚や経団連など大企業に潰されてしまいます。これでは弁護士は牙を抜かれ企業や公共団体から餌付けされる飼い犬に成り下がってしまいます。
それとこうして運動が公式に動き出した以上は,落としどころも今から描いておかなくてはいけないでしょう。この点は,もちろんローを単純に廃止して旧司に戻せれば一番よいのですが,実際に各地にローがありその物的インフラ(人的は度外視!)がある以上,それを生かすことはできないかという視点も必要だと思うのです。そこで,私の頭に今老いの寝覚めで浮かんでいるのは,各地のロー(主要なものだけでも)を実務修習センターのように使えないのかなということです。修習期間は2年かつ給費制に戻したうえで,うち約1年半を旧ロー跡地の実務修習センターで各地の実務家に実技面をみっちり教え込ませる。そして,そのカリキュラムの中で今までも実施しているJPBの実務研修も実施する。しかしこの実務研修は,これまでのように各実務家に預けっきりにして出来にムラを作ってしまうのではなく,よりオーガナイズした形で均一的な効果が上がるように設計し直す。くどいようですが,実務修習センターの教員からは学者を排除することを原則とし,実務経験のある学者だけは任用できるようにする。あくまでも思いつきです。