黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

医学部と法科大学院,どちらがひどいのか?

2013-07-18 10:49:36 | 法科大学院関係
 コメントについては,制限をかけないとスパム投稿が止まらないようなので,コメントをgooユーザーに限定する措置は当面継続させて頂きます。制限しないものとした前二回の記事についても,昨日から取り扱いを変更したほか,読者様に不快感を与えるような目に余るコメントは随時削除させて頂きます。

 本題。とあるサイト経由で,『医学教育に見る教育の荒廃』という記事を見つけました。
<参 照>
『医学教育における教育の荒廃』(井上晃宏)
http://agora-web.jp/archives/1547174.html
 上記はアゴラという言論サイトに掲載されている記事ですが,医師・薬剤師である井上氏は,医学教育の現状について,要旨次のような批判を展開されています。

1 医学部教員に医学知識がない
 医学部教員の大半は,医師国家試験の問題を解けない(国家試験は通っているが,自分の専門分野以外のことは忘れてしまっている)ということのようです。

2 教員が何を教えようが、学生は聞く耳持たない
 医学教育で憶えるべき知識は,国家試験範囲・CBT範囲という形で明確に規定されており,自習のための教科書も市販されているので,医師国家試験やCBT(医学部5年への進級時に行われる共用試験)のための勉強は学生は自主的に行っている,医学部の授業は出席を取らないと出席率は3割以下になってしまい,出席を取ると出席率は上がるが,学生は講義など聴かず,眠るか,内職をするか,私語をするかのいずれかである,井上氏の母校では講義が廃止されて自習主体の教育になったが,これなら医学部の授業や教員などはそもそも不要なのではないか,ということのようです。

3 解剖実習はセレモニーと化している
 医学部では,遺体の解剖実習が行われていますが,医学部生がこれによって人体の構造を学んでいるというわけではなく,実態はあらかじめ本を読んで憶えていた構造を確かめているだけである,実習に供される部分は人体のごく一部に過ぎず,残りは解剖図を見て憶えているが,例えば遺体の脳を解剖したことがなくても脳外科医をやっている人はいくらでもおり,それでも実務には全く支障がないので,解剖にはせいぜい儀式的な意味しかない,ということのようです。

4 消滅寸前の基礎医学実習
 医学部で行われる基礎医学実習は,細胞培養も動物実験もなければ,分析実習もなく,PCR(DNAの一部分を増幅させる手法)の演示はあったが自分で手を動かしていない,薬学部でもこれに相当する実習はあったが医学部のそれは子供のお遊び程度の水準に過ぎない,この教育は「やった」という事実だけが欲しいのであり,学生に何かを教えようという教育ではない,ということのようです。

5 教員が指定された教科書を理解していない
 分子生物学の講義において,Molecular Biology of The CELLという教科書が指定されたが,この教科書は1,000ページ以上あるものの,高卒程度の科学知識があれば1ヶ月で読める程度の代物であり,大して難しいことは書かれていない,ところがこの程度の教科書でも全巻を読める教員がいないので,チャプターごとに別の教員が講義に来ており,教員は当てられたチャプターすら完全には理解しておらず,自分が理解できた部分を適当に講義して帰るだけだった,ということのようです。

6 100人教室における語学講義
 医学英語と称して医学的な内容の文章を読む授業があるが,100人も入る大教室のマスプロ授業では一方的な垂れ流しになるだけで語学教育としての意味は全く無い,これも教科書が指定されているだけで教員は毎回別人であり,継続性も体系性もないということのようです。

7 教員不在で何も教育が行われなくても,単位だけは出る
 ある科目では,担当教員が都合が悪いという理由で講義がすべて休講となり,代講の手配も行われず,結局○×クイズ式の名目的な試験だけで単位が出た,井上氏は4つの大学に入学しているがこんな体験は始めてであり,放送大学ですらこんなことはあり得ない,ということのようです。

8 臨床実習は職場見学をしているだけ
 1日病棟に張り付いて頭に入る医学知識は本で読むと3行程度のものであり,学生はまじめに実習をしても意味はないので図書室で本を読んで時間を潰している,ということです。ただし,臨床実習には業界事情を知るという意味があり,知らないと就職の際に痛い目を見るそうですが。

 井上氏は以上のような問題を指摘した上で,医学部教育は荒廃しセレモニーと化している,医学部が存続できているのはひとえに医師国家試験の受験資格を独占しているからであり,教育が荒廃して医学に必要な知識は自習で身に付けるしかない状況になっていても,迂回は出来ないので医師を目指す学生はそこに通わざるを得ない,と結論づけています。
 黒猫は医学部の実情を知る立場になく,井上氏の記事もご自身が体験した話を基に書かれているようなので,このような批判が医学部一般に当てはまるものか否かの判断はできませんが,医学部や薬学部のように資格試験の受験資格を独占している大学・大学院では,教育内容の妥当性や効率性について外部の人が検証できないので,このようなことは必然的に生じ得ると言えます。
 なお,平成18年から薬学部に6年制課程が導入され,6年制課程を修了しないと薬剤師国家試験の受験資格は与えられないものとされましたが,このような措置が本当に必要なものであったか否かは,外部者には全く分かりません。もっとも,以下のような記事を読むと,薬学部の6年制が本当に必要なものであるか否かは,非常に疑問視されます。
<参 照>
薬学部教育はすでに詰んでいる(井上晃宏)
http://agora-web.jp/archives/1533517.html
薬学部6年制の現状と未来(化学者のつぶやき)
http://www.chem-station.com/blog/2013/04/6.html
高校生諸君! それでもあなたは六年制の薬学部に入りたいですか?
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~matsuki/series/HS-guidance.htm

 ところで,冒頭に挙げた井上氏の記事では,このブログの記事を引き合いに出して,AKB48のCDみたいなものだという批判は法科大学院のみならず大半の資格教育系学科に当てはまる,法科大学院は予備試験という迂回ルートに法曹志望者が流れているために崩壊しつつあるが,迂回ルートがない医学教育よりもむしろこちらの方が健全だ,などと述べられています。
 なるほど,人によってはそういう見方もできるのかと思わず笑ってしまいましたが,たしかに制度としては法科大学院の方が「健全」であるかも知れません。ただし,教育の内容については井上氏の記事を前提にしても,まだ医学部の方がましではないかと思います。上記の1~8について法科大学院の在校生や卒業生に話を聞いたら,おそらくこんな反応が返ってくるのではないでしょうか。

1について
 医学部の教員は医師国家試験の問題を解けないというけれど,それでも医師国家試験に合格しているだけマシではないか。法科大学院の教員は,ほとんどが司法試験の問題を解けないばかりか,そもそも司法試験に合格したこともない人で占められている。
 また,医学部における専門分野に関する教育は,医師になる人全般に役立つものではなくても,その専門分野に進もうという人にはおそらく役に立つ内容であり,少なくとも専門分野選択の参考にはなると思われるが,法科大学院の教育は(どの分野に進むとしても)法曹としてはおよそ役に立たないものが多く,特に成績下位の法科大学院では,授業の内容がおよそ法律とは関係ない愚痴や他人の悪口,雑談の類で占められている例も少なくない。
 
2について
 講義があまり役に立たないのは法科大学院も同様だが,法科大学院では双方向的・多方向的授業が文科省によって義務づけられているので,不要な講義を廃止したくても出来ず,またすべての授業で出席を取っており,欠席が多いと期末試験すら受けられないのが一般的である。
 また,一部の教員は期末試験の成績にかかわらず,授業中予備校のテキストで勉強しているなどといった理由で単位を認めなかったりすることもあるので,明らかに役に立たない講義であっても有り難く拝聴して教授のご機嫌を取らざるを得ない場合もあり,その光景は暴君ネロのリサイタルのようである。
(注:ローマ皇帝ネロは,自ら偉大な芸術家であると称しており,歌手として公衆の前でリサイタルを開いたこともあるが,もとより一流の歌手として通用するレベルではなかった上に,聴衆は皇帝喝采団というサクラに合わせて拍手喝采を強制され,しかもいかなる理由があっても公演中に客席を離れることは許されなかったので,死んだふりをして棺で運び出される聴衆や観客席で出産した女性もいたなどと伝えられている)

3について
 法科大学院には,医学部の解剖実習に相当するような教育はなく,セレモニーすら存在しない。

4について
 法科大学院にも基礎法学と呼ばれる科目群はあるが,法曹実務経験の全く無い学者が自己流の哲学を延々と述べているだけであり,基礎医学と違って役に立ちそうな要素は微塵もない。最近は文科省も,社会人や他学部の出身者については基礎法学などの必要単位数を削減すべきなどと言い出しており,基礎法学が無意味な学問であることは文科省も事実上認めている。

5について
 教員が指定された教科書を理解していないことはあっても,医学部の教員は少なくとも自分の専門分野については教えられるだろう。しかし,法科大学院の教員には,自分の専門分野すらまともに教えられない人が少なくないのである。

6について
 法科大学院では少人数教育が義務づけられているので100人教室のマスプロ授業などは基本的にないが,文科省には規制を緩和しようとする動きもみられる。一部の法科大学院では英語による講義や英文契約書作成の授業なども行われているが,少なくとも実務で役立つレベルに到底達していないことは確かである。
 そもそも,入試で英語を義務づけている上位校でもTOEIC500点台で入学できるほど学生の質が低下しているので,高度な英語の授業をやっても学生は付いて行けない可能性が高い。

7について
 法科大学院でも担当教員の都合により授業が休講になる例は少なくない。講義がすべて休講になり○×クイズだけで単位を出した例があるかどうかは不明だが,仮にあるとしたらそれは素晴らしい法科大学院である。法科大学院の授業の中には,受講するとむしろ学力が下がり,法曹になる意欲も失せるようなものが少なくないので,最も良い法科大学院は,授業を全くやらない法科大学院である。

8について
 法科大学院の臨床教育(エクスターンシップなど)は,実習先に依頼者や相談者が来ないため職場見学にすらならなかったり,提携先の都合で実習自体が行われず単なる机上の教育になってしまうことも時々ある。運良く実習らしきものを受けられても,単なる職場見学の域を出ないものであることは医学部とあまり変わらない(ただし,大手事務所の採用選考を兼ねた実習は別である)。

 その他,医学部と法科大学院の顕著な相違点としては,以下のようなものが挙げられます。
① どんなに教育内容が悪かろうが,医学部を卒業すれば大半の人は医者になって安定した仕事と収入を得られるのに対し,法科大学院を卒業した人は大半がニートになってしまう。合格率20%台の司法試験に何とか合格しても,そのうち法曹としての職を得られるのは半数前後に過ぎず,就職しても使い物にならないとされ直後にクビになるケースも少なくない。
② 医師国家試験は択一問題であり出題範囲も明示されているので自習でも対応可能だが,司法試験は合格率が低い上に出題範囲がはっきりせず,しかも応用能力を試される論文試験がメインになっているので,自習のみによる対応は困難である。司法試験対策の勉強に多くの時間が割かれるにもかかわらず,法科大学院では司法試験とは無関係なレポート課題などで学生の勉強時間をさらに奪うので,法科大学院を卒業してからようやく司法試験の勉強を始められるという人も少なくない。おまけに司法試験は卒業後5年間に3回までしか受験できないので,懸命に勉強しても司法試験合格レベルに達する頃には受験資格を喪失してしまうという人も少なくない。
③ 法科大学院を修了し,司法試験に合格して法曹資格を得ても,弁護士会に登録しなければ弁護士と名乗ることは許されない。弁護士登録すると,仮に弁護士としての仕事がなく収入がゼロであっても,年間数十万円(地方によっては年間百万円を超えることもある)の会費支払いと会務活動への無償奉仕を余儀なくされ,会費を滞納すると退会命令を受け弁護士の資格を剥奪されてしまう。むろん,医師についてはこのように理不尽な制度はない。

 最終的に,医学部(医師養成制度)と法科大学院(法曹養成制度)のどちらがひどいかという判断は読者の皆さんにお任せしますが,医学部や法科大学院に限らず,大学や大学院の卒業を資格試験の受験資格にするという制度設計には,専門家の養成課程をブラックボックス化し,大学の在り方次第では専門家の質を際限なく低下させるおそれがあるという致命的な欠陥があるということは覚えておいた方がよいと思います。
 教員を養成する教職大学院も相当評判が悪いようですが,文科省の言うがままに教職大学院の権限拡大(教職大学院修了を教員免許の取得条件とするなど)を認めてしまったら,日本の教育は大変なことになるでしょう。

 なお,法科大学院や他学部の実情など,本件に関して何か黒猫に言いたいことがある人は,9605-sak@mail.goo.ne.jpまでメールを下さい。

15 コメント

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世間の評価 (Unknown)
2013-07-18 13:48:49
 黒猫先生には申し訳ないですが、比較すること自体が医学部生に対して失礼だと思いました。
なぜなら、講義内容や教授の力量などでは比較にならないほど、ロー生と医学部生とでは、ステータスや将来性が違うからです。
 医学部生に対しては、「まあすごい。エリートで将来有望ですね。」
 ロー生に対しては「大変な進路選択をされたんですね。」(学校によっては、変人、将来ニート候補、浪費家と思われる。)
これが一般人の評価です。

 学校の入試難易度によっても若干違いますが、
医学部の入試の難易度は半端ないですから、作文をかければ合格できる可能性があるロー入試と比較するのも気の毒な話です。
 東大の現役合格率と同じくらい平均偏差値以上の医学部の現役合格率は低いですよ。
私の周りでも一浪で何とか有名大学の医学部に合格できた人が多かったです。
 
 日本で最も学費が高いといわれている私立の医学部だと卒業するまでに1億円を超えるといわれていますが、それでもペイできるので、投資しても価値があります。
 しかし、ローの場合、仮に500万円の投資だとしても回数制限があり、合格できる確率も低く、合格できても、サラリーマン並みの収入を得られるかどうかも定かではないのですから、ハイリスクローリターンの投資ということになります。

 自分の将来性ということだけを考えたのならば、医学部に在籍できているということだけでも感謝すべきだと思います。
 ロー生の場合は、せめて合格に向けてがんばりたいのに、ローの教授に足をひっぱられるから、欝憤がたまるんじゃないでしょうか?

 因みに、歯科医ですが、5回目の国家試験で合格できたという苦労人もいらして、それでも今は立派に開業医として活躍しておられるので、司法試験も回数制限
は廃止した方が良いように思います。
 黒猫先生のご指摘のように、ローで間違ったベクトルを指南され、疲弊したものをいったんリセットして、そこからスタートする学生は、マイナスからのスタートになります。
 ローの現状を認識したうえでの立案、施行を願うばかりです。
 
Unknown (Unknown)
2013-07-18 14:59:51
黒猫先生

 上記の方のご意見に賛成です。

医学部と法科大学院の根本的な違いは、前者が医学部医学科卒業≒医師国家試験合格であるのに対して、法科大学院卒業≠司法試験合格であることです。

国立大学医学科に入ろうとすればセンター試験で最低9割とれる学力が必要とされ、これぐらいの学力ならば、東大・京大・一橋の法学部のどれかに合格できる学力と考えて差し支えないでしょう(もちろん文系・理系で受験科目が異なるし、東大や京大はセンター試験の結果を重視しないので単純に比較はできませんが。)

学費の高い私学でも医学部の偏差値はそれなりに高いから、ローの入りやすさとは比べ物にならないと思います。

現在の日本の医学科は6年制であり、学部+メディカルスクールに近いと思います。
いっそ法学部も現在のロースクールを廃止して、医学部みたいに6年制の法曹学科を新設してはいかがでしょうか?
全国に10校ほど。定員2,000名。
卒業後に合格率90%の司法試験を課するとすれば、法科大学院の人気も回復するのでは?









Unknown (Unknown)
2013-07-18 20:17:55
まさにローは握手券付きCDですね。
しかも、握手券を得るには相当時間CDを聞くことが要求され、さらに収録された曲のうち一定数について、カラオケで歌って一定点数以上が得られたら握手券がもらえる、という感じですね。
そして、そのCDにはAKBと関係のない不快で変な曲も多く混じっており、そのような曲も選択しなくてはならないのです。
講義なしの法科大学院 (Unknown)
2013-07-18 20:54:24
講義なしの法科大学院ですか♪
夢のような話ですね。
きっと抗議もなしになりますね。
先生方の休講が多く続いたとき、学生の誰かが「出席扱いにしてほしい」と申し入れたことで、「ふざけている」と教授が怒ったそうな。。。そこは怒る場面ではなく、ショックを受ける場面なのに。。補講(代講)は要らないってことなんだから。 
 医学の場合、医療技術の進歩もあって、教える側も相当な自己研鑽が必要でしょうが、法律学を伝授するのって、多少の変化はあっても普遍的な事柄の方が多いので、普通に講義することが難しいとは、どうしても思えません。ですので、やはり批判される方が悪いと思います。
 黒猫先生もおひとが悪い。誰もが法科大学院の方がひどい、と言うのがわかっているのに。お茶目ですね。
Unknown (Unknown)
2013-07-18 22:14:44
浜辺陽一郎がまた吠えています。

以下facebookから。

本日、法科大学院協会の仕事で、ジュリナビの方たちと情報交換。近時、企業も就活生も動きが活発化してきており、就職戦線はかなり状況が良くなっており、3年前とは全然違うとのこと。そうした状況からすると、法務を目指す人が減っているだけに、目指す人たちにとっては極めて有利な状況に変化してきているとのこと。こうした中で、狭い了見で国際競争力を削ぐようなことにならないようにする必要があるのだが。
Unknown (Unknown)
2013-07-19 00:53:28
うちの子はまだ小学4年ですが、医者にするために塾に通わせ、毎夜1時まで親が家庭教師しています。超ハイリスク・ノーリターンの弁護士にする気は一切ありません。今から息子や娘を弁護士にしたがる同業者がいるとしたら、お目にかかりたいものです。

なお、複数ソースによれば東京・大阪は現況で内定4割(ノキ・ブラック含む)。8月からは集合修習だそうで修習生は気息奄々。何人か自殺者が出てもおかしくない状況です。浜辺先生が言う「就活」は、「終活」の間違いでしょう。
豊かな人間性が育める法科大学院 (Unknown)
2013-07-19 09:19:39
どこかで書かれているのを見かけましたが、小規模法科大学院こそが学生と教授が語り合って、豊かな人間性が育めるのだそうです。
そうだとするならば、マスプロ教育の医学部教育より上回る部分があるということですね。
 しかし、合格できなければ、豊かな人間性もへったくれもないのでは?
小規模ローの学生は、教授との温かな心の触れ合いを求めて入学するのでしょうか?
規制権者でもある教授と学生との間で、「語り合い」という言葉が使われるのも不自然な気がするのですが。。
 
法科大学院VS歯学部 (Unknown)
2013-07-19 11:46:36
どちらがひどいのかという議論をするなら、法科大学院VS医学部ではなく、VS歯学部では?

医学部医学科の国公立入試は競争率7~8倍。(私学でも定員割れはないはずです。)
深刻な医師不足とは耳にすれど医師過剰という言葉は寡聞にして知りません。

現時点では、医学科に合格できれば、よほどのことがない限り医師国家試験に合格できるし、研修医時代は厳しいにせよ、その後は比較的安定した社会的地位と収入が得られるというのが世間一般の評価でしょう。

一方、歯科医師を取り巻く環境は、歯科医師過剰による歯科医院経営難、歯科医師国家試験合格率低下、歯学部の定員割れ等、惨憺たるんものになりつつあります。歯学部離れは深刻です。
法科大学院を取り巻く環境に似ています。

今や歯学部は開業歯科医の子弟ぐらいしか志望者がなく、さらに歯科医師自身も子供を医学部に入れようとするため、一部国立大歯学部を除けば、結局歯学部はお金はあるがおつむはどうかという学生で占められつつあるようです。
医師国家試験合格率は最下位の大学でも75%に対し、歯科医師国家試験合格率は最下位の大学だと30%。
あまりのレベルの低さに授業にならないそうですが、比べれば比べるほど、そのひどさは下位ローと似通っています。


個人的効用と社会的効用 (井上晃宏)
2013-07-19 19:08:19
件の投稿の著者です。
黒猫さんの論評は、概ね、的を射ていますが、若干の混乱があります。

「教育の個人的効用」と「教育の社会的効用」とは、独立した評価軸です。

医学教育については、前者は高いが、後者はダメであるというのが、私の投稿の趣旨です。法科大学院は前者も後者もダメみたいですね。

教育の個人的効用が高い限り、どんなくだらない教育制度でも、不満はマスクされてしまって(経済的にエスタブリッシュされていると、当事者からは不満が出ない)、教育制度が、社会に与えている損害は放置されるのです。

法科大学院も、定員を司法試験合格者数の1.2倍くらいに抑えると、卒業者はほとんど法曹になれて、個人的効用が高くなるので、法科大学院は法曹に支持されるようになるでしょう。教育内容はスカスカのままでいい。

医師の技術水準が高いのは、医学教育のおかげではなくて、集まる人間の水準が高いからでしょう。セレクションをしているだけで、エデュケーションはない。
井上先生、すばらしい (Unknown)
2013-07-19 21:14:18
とてもきれいにわかりやすく整理して説明していただいてありがとうございます。

 ただ、黒猫先生は、あえて「個人的効用」という観点を除外して、比較されているのだと思います。

 なぜなら、仮に院の卒業生が本試験に8割合格できたとしても、医師のように(インターン時代の低賃金、長時間労働の不遇はあるにしても)どこかの病院に勤務できる等の生活保障が弁護士にはないのですから、不安定な身分であることに変わりはなく、経済的にエスタブリュッシュされて、教育に対して不満が出ないとはいいきれないからです。
それこそ、今後、上位合格しない限り、椅子取り競争に負けるというような事態に陥る可能性もあり、教育に対しても過敏になることも考えられます。

 これは、そもそも市民の需要という点に絡むと思います。
お医者様は、赤ちゃんからお年寄りまで、身近で必要不可欠な存在です。例え、病気をしなくても、健康診断や予防接種、出産等でお世話になります。
 ところが、主に紛争トラブルを扱う弁護士にお世話になるという人は、ごくごく少数です。
 市民のニーズに大きな差がある以上、医師と弁護士とを、同じ土俵で語ることはできず、医師養成制度をモデリングして、法曹養成制度を改革した方々の無識者ぶりが情けない限りです。
また、8割合格という制度にするならば、医学部のように入学時点で、厳密なセレクトをしなければならないのに、「多様性」ある人々を入れすぎてしまった、、
これもお粗末というほかないでしょう。
また、訴訟を好まない日本人の気質を考慮せず、基盤が違うにも拘わらず、アメリカのロースクール制度を導入するというのもおかしな話です。

 法科大学院をどのように制度設計しても、努力に見合ったものが得られにくい、または得られる人がひと握りという現状では、もうどうにもこうにもしようがないというところでしょうか。
 せめて、従来の制度に戻して、スカスカのロー教育制度を撲滅することで、公正さと公平さを担保し、法曹界にわずかな光が見えてくることを祈ります。