黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

新潟ローは撤退を決断するのか?

2013-08-05 22:00:01 | 法科大学院関係
 最近,身内を叩くような記事ばかり書いてしまっているので,今回は原点に帰ることにします。ドラマの半沢直樹さんが「十倍返しだ」のセリフで受けているのと同様,自分の立場では言えない法科大学院の悪口を存分に楽しみたいというのが,このブログの読者様の主たる需要だと思いますので。

 本題ですが,コメント欄で情報のあった新潟大学法科大学院の件について,法曹人口問題全国会議のMLで情報が流れていました。

<参 照>
8月に改革案最終まとめ(新潟日報モア)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20130730057751.html

 今春の入学者数が定員を大幅に下回った新潟大大学院実務法学研究科(法科大学院)の在り方を考える第2回有識者会議が29日、新潟市中央区の新大医学部有壬記念館で開かれた。当初は12月に予定していた報告書のとりまとめを繰り上げ、次回8月19日に最終決定し、下條文武学長に答申することを決めた。

 国の法曹養成制度検討会議の取りまとめを受け、新大の改革案を早急に出す必要性が高まり、日程を大幅に繰り上げた。

 29日の会議には弁護士ら6人が出席。中長期的な視点から法科大学院の在り方について(1)単独で維持(2)他大学と連携し運営(3)法科大学院廃止―の3ケースについてそれぞれ問題点を出し合った。

 「県内では弁護士が不足している地域がある。大学院が県内で活躍する弁護士30人を輩出したのは大きな成果」と法科大学院の存続を求める訴えが相次ぎ、「大学入学から6年一環教育を行うなど学部との連携が重要だ」などの意見が出た。

 また、他大学との連携については「先行する大学では、一方の大学による吸収合併のようになっていて、連携の良さが発揮されていない」などの事例が報告された。



 太字が記事の引用部分ですが,この記事によると,新潟ローは8月19日に(1)単独で維持,(2)他大学と連携し維持,(3)廃止のいずれかで方向性をまとめる方針のようです。
 新潟ローの入学者数は,平成21年度29人,平成22年度22人,平成23年度26人でしたが,平成24年度及び平成25年度はいずれも入学者数5人と低迷しています。入学定員は,平成21年度まで60人,平成22年度から平成24年度まで35人,平成25年度は20人と徐々に減らしていますが,それでも定員削減が入学者数の減少に追いついていない状態です。
 平成25年度受験者数24人,合格者数12人と,競争倍率はかろうじて2倍を維持していますが,他のローがやっているのと同様,相当な無理をして(相当なイカサマをして)競争倍率を維持していることはほぼ間違いないでしょう。
 司法試験の合格者数は,平成24年度が12人で,合格率は全国平均よりやや低い程度ですが,ストレート合格者は1人しかおらず,残りの合格者は1浪か2浪です。これまで県内で活躍した弁護士30人を輩出したとはいっても,おそらくはそれと同時に100人以上の三振法務博士を輩出してしまったこともほぼ間違いなく,これからは運良く司法試験に合格できた人も,多くは年収100万円以下といった苦難の人生が待っていることでしょう。
 また,特に再来年あたりからは,入学者数激減の影響が出ますから,司法試験の合格者数も大幅に減ることが予想されます。 

 一方,国の法曹養成関係閣僚会議は,法科大学院制度についてとりあえず現状維持を決めた形ですが,各法科大学院が将来に光明を見出せるような施策を決めたわけではなく,少なくとも今後3年間くらいは,予備試験制度も現状維持です。形ばかりは現状維持でも,以下のとおり法科大学院の将来は真っ暗です。

● 入学者数
 入学者数激減の傾向は止まる気配がありません。今年の適性試験受験者のうち,平成26年度の法科大学院受験資格があるのは4,792人。昨年の5,801人から大幅に減少しており,来年の入学者数は全体で2,300人程度か,あるいはそれ以下に減少するでしょう。新潟ローなんて,来年は入学者数5人を維持できるかどうかも分かりません。
 おまけに,適性試験の足切り基準点も,昨年は145~146点あたりであったのが,今年は132点と大幅に低下しています(いずれも300点満点)。つまり,入学志望者の数が減少しているだけでなく,その平均的な質も低下していることが窺われるのです。
 適性試験は単なる日本語のパズル試験であり,高得点を取れたから法律の適性があるというわけではありませんが,2回受験してもかなり低い得点しか取れない人は,事務処理能力の関係で法曹の仕事には耐えられない可能性が高いと思われます。

● 予備試験の影響
 真面目に司法試験合格を目指す人は,まずは予備試験合格に向けた勉強をするのが今の常識です。法科大学院は,予備試験に合格できない人が仕方なく入学するところであり,学生は入学後も予備試験の勉強を続け,予備試験に合格した人は司法試験の受験勉強に専念するため,法科大学院の方は休学してしまうのが一般的です。
 従来は,予備試験に合格しても一応法科大学院は修了するという人もいましたが,法科大学院を修了するともらえる法務博士の学位は,就職面ではマイナスにしかなりません。授業料負担も馬鹿になりませんし,予備試験に合格したら休学するのが当たり前のようになるでしょう。

● 受験生の質の低下
 一方,予備試験合格を目指さない学生については,質の低下は目を覆わんばかりです。西口先生が「記憶の必要性」という記事で,最近は明らかに記憶の作業を避けている答案が多いと嘆いていますが,予備校講師が「最近の受験生は法律を覚えようとしない」などと嘆くことは,旧試験時代にはあり得ませんでした。
 旧司法試験時代,長期間勉強しても合格できない人は,不必要なまでに暗記に走る例が多くみられました。予備校の論証パターンを一字一句に至るまで丸暗記したり,民法の条文を全部丸暗記したり。もちろん,実際はそのようなやり方で合格できる試験ではなかったのですが,言い換えれば合格できない人もその多くは,周りが驚くくらい一生懸命勉強していたのです。
 しかし,現在では法科大学院や予備校の講師が精一杯尻を叩かないと,最低限の暗記すらやろうとしない受験生が増えてきたようです。司法試験も受験生に判例の知識を問うのは次第に諦めて,特に論文試験は知識がなくても解ける誘導問題が多くを占めるようになってしまっています。最低限の暗記すらもやろうとしないというのは,要するに「勉強しようとしない」のと同義です。

● 悪化する一方の就職難
 このような状況下では当然のことですが,司法試験合格者の就職状況も悪化する一方です。今年は,修習修了者のうち就職先を決められるのは4割くらいではないかとも言われていますが,最低限の暗記すらやろうとしない修了者が,法律の専門家として社会に受け容れられるわけもありません。
 検討会議の分科会では,何とか企業関連の就職者を増やそうといろいろ議論したようですが,「企業側は、確かに法科大学院で先端科目もいろいろなものがあるので、それは教育してもらえば十分それは結構ですけれども、他方、いやいや、わざわざ法科大学院なんかで教育してもらっても、あまり役には立たないと、期待なんかしていないというような意見も他方ではありました」(中教審第54回会議議事録,松並委員発言)ということです。
 つまり,企業サイドはとうの昔に法科大学院を見限っているのです。一方,国家公務員試験では,司法試験合格者専用の「法務区分」という枠が設けられていますが,実際に法務区分枠で採用される人はほとんどおらず,国家公務員を目指す修了者は普通の院卒枠で受験するのが一般的のようです。

● 教員の質も改善の見込みなし
 特に下位ローでは,もはや授業の内容が「授業」とは呼べないほどにひどく,法科大学院による消費者被害という問題が真剣に議論されるまでになっていますが,教員の質も今後改善される見込みは全くありません。
 これまで,法学部や法科大学院の教授を多数輩出してきた東京大学大学院法学政治学研究科では,実定法学(憲法と国際法を除く)の研究者を志望する人も法科大学院の修了を義務づけていますが,東大ローの入学志望者も減っているほか,優秀な修了者は法曹に流れてしまうため,研究者を目指す人は減少しているそうです。
 修士課程を残しているところの状況はさらにひどく,中教審の法科大学院特別委員会では,法科大学院を専門職大学院のカテゴリーから外すよう求める議論さえなされています。

● 共通到達度確認試験で自滅する法科大学院
 検討会議では,法科大学院について「共通到達度確認試験」の実施に向けた検討をする方針が決まりましたが,その内容は文科省が当初想定していたものと異なっており,実質的には法科大学院の2年次から3年次へ進級する際に,択一試験が前倒しで実施されるようなものになりそうです。法科大学院の教育は確認試験に縛られ,もはや独自性を発揮する余地はほとんどなくなるでしょう。
 確認試験の効果については,文科省内部でも「君たちは到達度に達しないんだから、早く進路を諦めてほかへ行きなさいというふうなマイナス的効果がないのか」という批判的な意見があるようですが,もはや閣僚会議決定で方針が決まってしまった以上,文科省も後へ退くことはできません。
 法科大学院は,いまや自分で自分の首を絞めようとしているのです。


 このような状況の下で常識的に考えれば,新潟ローの下すべき決断はただ一つ,一刻も早く法科大学院から撤退することです。これ以上法科大学院を存続させても,もはや法曹を輩出するのではなく,法務博士という名の社会不適合者を輩出するだけです。
 前述の報道によると,有識者会議では法科大学院の存続を訴える声が相次いだとのことですが,そのようなことを主張する人間は,たぶん酒か薬物で頭をやられてしまっているのでしょう。間違っても有識者の言うようなことではありません。
 また,このような法科大学院に敢えて来年入学しようとする人も,正気の沙汰ではありません。おそらく入学してもろくな未来は待っていないと思いますし,最悪の場合,司法試験の合格実績が悪いという理由で法科大学院自体が受験資格付与機関としての資格を取り消され,修了しても司法試験の受験自体ができなくなる可能性すらあるのです。
 もっとも,前述の報道内容を見れば,有識者会議の議論は新潟ローを単独で存続させる方向に傾いているように読めますが,それにもかかわらず8月19日に新潟ローがこれと異なる決断を下した場合には,マスコミも真実を伝えていなかったことになります。その場合には,法科大学院より先にマスコミ関係者の脳を改革する必要があるでしょう。


6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2013-08-06 02:36:55
大学院も卒業できず、司法試験なんて考えたこともなく、コピペの論文しか書いてないくせに、たまたま司法制度改革特需で法科大学院教授におさまったセンセイたち。

彼らの頭の中は、次の就職先のことで一杯です。

バカにされるのが怖いのか虚勢を張り、時には学生に阿りますが、もともと学生がどうなろうと知ったこっちゃありません。

法科大学院が廃校になり、解雇を言い渡される時のセンセイたちのお顔を、ぜひ間近で拝見したいものだと思います。
返信する
来年は入学者2千人を切るのでは? (Unknown)
2013-08-06 09:35:40
黒猫先生

 新潟ローへの言及有難うございます。
大学側はまったく理念とかや責任感が見受けられず、まるで他人事のようですね。
入学者が5人のところに教員が20人ぐらい(それも削減後の数字)らしいです。
これを税金の無駄遣いといわずして何と言うのか。
ハコモノ行政ならぬヒトゴト行政。

 「国の法曹養成制度検討会議の取りまとめを受け、新大の改革案を早急に出す必要性が高まり、日程を大幅に繰り上げた。」のも不可解。

 いったん決まったスケジュールを大学関係者がのんびり休みを取るはずのこの時期にわざわざ繰り上げるのは異例のこと。よほどの理由があるはずです。
 実は内々既に募集停止の方向を決定済にもかかわらず、玉音放送をするためのアリバイ作りではないかしらんと下種の勘繰りをしてしまいます。
存続に向け精一杯の努力をしたが、戦局必ずしも好転せず、ついにここにやむなく撤退に至ったものである。

 この手の議論の中で地方の大学は「地方切り捨てを許すな」という屁理屈を持ち出してきますが、大学側の態度にはまったく理念とかや責任感が見受けられず、まるで他人事のようですね。あたかも地方の学生の利益のために言っているように聞こえますが、実は教員の勤め先の心配ばかりというのが本音でしょう。

 地方の法科大学院へのニーズがあるのは教員の方であって、学生にはありません。そもそもニーズがないから学生の応募がないのではありませんか?
廃止されて困るのは学生ではなく、ロー制度がなければ口に糊する途がなかったはずの資質の教員です。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-06 17:19:53
現状2年連続で入学者5人ですから、ここで存続を決議しようが廃校を決議しようが近い将来入学者数0になるでしょうから大した違いはないように思います
むろん、税金のムダだという指摘はその通りだと思いますが。
ローは大赤字なんですから早くやめたほうが大学としては良い選択のような気がするんですけど、この辺りのことはどう考えているのでしょうかね。
あと、何年連続入学者数0、なんて事態になったらそれこそ何のためにローがあるかというと、学者のためだけに存続しているということになりますよね(現状もそうでしょうけど)
そうなると、地域に根付いた法曹とかいう詭弁も言えなくなるでしょうから、今のうちにさっさと廃校にしといたほうが・・・
何年連続入学者数0、なんてことになったらローが天下り先だ、なんてマスコミに叩かれることにもなりえますし(今はまだ全体としてマスコミもロー擁護の姿勢なきがしますけどね)
遅くとも補助金カットが決まったら廃校、というのは間違いないように思います。
返信する
消費者被害 (Unknown)
2013-08-06 20:38:27
>たまたま司法制度改革特需で法科大学院教授におさまったセンセイたち。

 いえ、おさまっちゃいけなかったセンセーたちでした。

 ブル弁浜辺先生も見てる?
誰でも、200万円で買ったピカソの絵が贋作だったら怒るでしょう?
九州産の有機野菜として購入した野菜が放射能汚染された野菜だったら、売りつけた奴を憎むでしょうが。

一流学者だと虚勢をはりながら、邪悪な宗教のような講義をし、ご自慢の邪悪な宗教の基本書を強制購入させ。。マニアになれというのか。。
ローのごみ箱に捨てましたわ。

 ローの講義で本当に放射能汚染されましたわ。
 生業として、教壇に立っていることが恥ずかしくないですか?
講義中おっしゃったことをここで名指しでお伝えしたいくらいです。

 新潟大、香川大、鹿児島大は、さっさと撤退すべきです。
 自分の家のローンと弁護士登録費用と固定資産税を払うために、いつまでも教壇に立って学生に迷惑をかけるのはやめてください。
 消費者被害で消費者センターに相談したいです。
 

返信する
本末転倒 (Unknown)
2013-08-07 08:52:27
>司法試験の合格実績が悪いという理由で法科大学院自体が受験資格付与機関としての資格を取り消され,修了しても司法試験の受験自体ができなくなる可能性すらある。

つまり、法科大学院は大金をつぎ込んで買っても握手券さえついてこないAKBのDVDってことですよね?

旧司法試験制度の元での受験生の高齢化、知識偏重、予備校漬けの実態の弊害を是正するために、ロースクール制度を取り入れたんじゃなかったでしたっけ?

予備試験の導入により法科大学院を卒業していない者にちゃっかりバイパスを認め、一方でいやしくも制度上は本道を歩んできたはずのロー卒業生を試験を受ける機会さえ奪って門前払いにする。
実に矛盾した話だと思います。

旧司法試験は1次試験さえクリアできれば学歴・年齢・経験一切不問で、誰もがチャレンジできる公平な試験でした。

現在の本末転倒のろくでもない制度は一日も早く廃止しなければなりませんね。

もっともシンプルで、もっとも安上がりで、もっとも公平だった以前の制度に戻すべきです。

法科大学院の撤廃
旧司法試験の復活
司法試験合格者数の半減
司法修習生給費制度の復活

これができなければ、近い将来弁護士は司法書士や行政書士と変わらない存在になってしまうと思います。







返信する
卑しい、さもしい、未練たらしい (Unknown)
2013-08-07 12:47:50
新潟大ローだけじゃなく、未だ募集停止しない下位ローは、未練たらしすぎるでしょう。
 結局、カモになる受験生に期待しているわけでしょう?
さもしくないですか?
自分の身内に自分ちのローへ進学することを勧められますか?
 そう考えると、卑しいですね。
返信する