黒猫のつぶやき

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交換の会計処理について

2006-01-05 02:29:18 | 各種資格
 財務諸表論の第2弾は、固定資産の交換の会計処理について。交換は民法では重要性ゼロの規定だけど、会計や税法では結構重要だったりするんだな、これが。

 自己の有する固定資産を他者の資産と交換した場合、その取得原価の算定方法として「交換に供された自社の固定資産(引渡資産)の適正な簿価」「引渡資産の時価」「交換により取得した財産(受入資産)の適正な時価」という3つの考え方がある。
 『企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書』(以下単に「連続意見書」という。)第三「有形固定資産の減価償却について」第一・四・2では、上記のうち「引渡資産の適正な簿価」説が採用されている(なお、自己所有の株式や社債と固定資産を交換した場合は、当該株式や社債の時価または適正な簿価が取得原価であるとされる)。
 その理由は、(1)取得原価主義会計においては、固定資産の測定はその支出額で行われ、保守主義の観点から現金または現金等価物によって投下資本が回収されてはじめて利益を計上することになるが(実現主義)、固定資産の等価交換時に時価評価をすると、資金的裏付けのない利益を計上することになり実現主義の原則に反する、(2)固定資産の等価交換の場合には、交換の前後で事業活動の継続性や連続性があるので実質的に取引はなかったものと考えられる、といったところである。
 しかし、同種の固定資産であればともかく、異種の固定資産を等価交換した場合には実質的な取引があったといえる場合もありうると考えられ、その場合に主張されるのが引渡資産時価説や受入資産時価説である。なお、等価交換を前提とした場合この両者は同額になるはずであるが、支出額が受入資産の公正な時価を反映していない場合に、支出額を採るのか資産の時価を採るかが両説の分かれ目である。
 交換が実質的な取引と認められる場合、受入資産時価説を採用すると、理論的には毎決算時にも固定資産を時価評価することになりかねないため、取得原価主義会計を維持する立場からは引渡資産時価説を採用すべきであろう。

 なお、法人税法においては、資産の交換があった場合譲渡損益課税が行われるのが原則であるが、一定の要件を満たす交換については、同種の財産の置き換えに過ぎず譲渡の実態に欠け、また譲渡益が名目的なものに過ぎず担税力がないといった事情を考慮し、交換譲渡資産の帳簿価格を損金経理により圧縮記帳することが認められている(なお、通達により交換譲渡資産の簿価をそのまま引き継ぎ、交換取得資産の取得価額とすることも認められている)。
 交換における圧縮記帳の要件は、以下のとおりである。
(1)交換譲渡資産と交換取得資産は、その内国法人と交換の相手方において、1年以上有していたものであり、かつ土地(借地権を含む)・建物(付属の設備及び構築物を含む)・機械装置・船舶・鉱業権の5区分のいずれかに該当するものであること。
(2)取得資産と譲渡資産は、交換のために取得したと認められるものでないこと。
(3)取得資産と譲渡資産は、(1)の5区分において、区分を同じくする資産であること。
(4)取得資産を譲渡資産の譲渡の直前の用途と同一の用途に供したこと。
(5)交換にの時における取得資産の価額と譲渡資産の価額との差額が、これらの価額のうちいずれか多い価額の20%に相当する金額を超えないこと。
 なお、交換において取得資産の価額と譲渡資産の価額が一致するのはむしろ稀であり、差額は金銭により決済されるのが通常である(これを「交換差金」という)が、当然ながら交換差金を受け取った部分について圧縮記帳は認められない。