朝日新聞9月3日の記事。
http://www.asahi.com/national/update/0903/OSK200709030032.html?ref=goo
この「光市母子殺害事件」については、黒猫も今まで興味がなかったのですが、引用記事によると、橋下徹弁護士のテレビでの発言がきっかけで、同事件の弁護人に対し300件以上もの懲戒請求がなされ、同事件の弁護人4人が橋下弁護士に対し1人当たり300万円の損害賠償請求訴訟を起こす事態にまで発展しているそうです。
この光市母子殺害事件というのは、平成11年に起こった殺人、強姦致死及び窃盗の被告事件であり、犯行当時18歳30日の被告人が、強姦目的で被害者宅に侵入し、母親(23歳)を強姦しようとして首にひもを巻き付けて窒息死させ、傍らで泣きやまない娘(生後11ヶ月)も床にたたきつけて首にひもを巻き付け窒息死させ、さらに居間にあった財布を盗んで逃走したというような起訴事実で、一・二審で無期懲役、上告審で破棄差し戻し、現在は広島高裁の差戻審で審理中という事案のようです。
(一部、現在削除提案中のウィキペディアの記事を参考にしたので、多少の事実誤認があり得ることはご了解ください。)
この事件について黒猫が意見を求められたら、単に起訴事実が認められるなら死刑以外の何があるか、むしろ差し戻しなどせず最高裁が破棄自判で死刑判決を出せ、下級審の裁判官に責任を押しつけるな、くらいのことしか言うことはありません。だからこれまで記事にしなかったのですが・・・。
ただし、判決内容の当否と、弁護活動の当否に関する評価は当然に同じではありません。弁護人は、被告人を「弁護」すべき立場にある以上、被告人の弁解内容がいかに不合理なものであろうと、その意に沿った弁護活動をしなければなりません
。それが弁護人の仕事です。
強姦目的でなく、優しくしてもらいたいという甘えの気持ちで抱きついたとか、その上で死後に姦淫したことは生き返って欲しいという思いだったなどと、被告人が明らかにおかしな弁解を繰り広げていても、それが被告人の主張であればそれに沿った弁護をするしかありません。
中には、あまりのことにぶち切れて、被告人の主張に沿わない弁護活動をしてしまう弁護人もいますが、二回試験の刑事弁護でそれをやったら即不合格、弁護士になってからそれをやったら懲戒処分ものです。
それが、黒猫の刑事事件嫌いの理由の1つなのですが、それでも刑事弁護はどの事件でも誰かがやらなければならないわけですから、特に情熱を持って刑事弁護に取り組む人を非難するようなことはしません。黒猫がそういう人たちの仲間になることは断じて無いだろうけど、そういう人たちがいなくなったら、黒猫のような刑事弁護嫌いの弁護士にも刑事弁護の仕事が半強制的に回ってきて、自分で自分の首を絞めることになりますからね。
いろいろ言われている弁護活動の中で問題があるとすれば、最高裁の弁護人が公判期日に欠席したことくらいでしょうが、欠席したのは1回だけのようであり、それだけで懲戒事由があるとまでは言い切れません。広島高裁の差戻審の弁護士には、そもそも懲戒事由らしきものは見当たりません。
弁護士に対する懲戒請求は、法律上誰でもすることができますが、それだけに濫用的な懲戒請求事例も多く、懲戒請求事件のうち懲戒が相当と認められるものは全体の1割にも達しません。
それでいて、一度懲戒請求を受ければ、それにより弁護士の名誉や信用などを害されるおそれがあるほか、それに対する答弁書を書くなどの対応をしなければならず、懲戒請求がかけられていると登録換の手続きができないなどの不利益を受けますから、事実上及び法律上の理由がないことを認識し、または通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに敢えて行った懲戒請求は、弁護士に対する不法行為となり、損害賠償請求の対象となります(最三判平成19年4月24日参照)。
橋下弁護士が、何を根拠にして広島高裁差戻審の弁護人らに懲戒事由があると判断し、テレビで視聴者に対し懲戒請求をするよう呼びかけたのかは分かりませんが、特に弁護士として懲戒事由と思われることも無いのに、単に弁護活動の内容が世論の反感を買っていることに迎合して、視聴者に対し懲戒請求を唆したということであれば、これは十分不法行為になりうると考えられます。また、弁護士職務基本規程71条違反で、そのような行為自体が(橋下弁護士に対する)懲戒事由になる可能性すらあります。
あまりうかつに、懲戒請求などということをテレビで口にすべきではないと思いますね。
http://www.asahi.com/national/update/0903/OSK200709030032.html?ref=goo
この「光市母子殺害事件」については、黒猫も今まで興味がなかったのですが、引用記事によると、橋下徹弁護士のテレビでの発言がきっかけで、同事件の弁護人に対し300件以上もの懲戒請求がなされ、同事件の弁護人4人が橋下弁護士に対し1人当たり300万円の損害賠償請求訴訟を起こす事態にまで発展しているそうです。
この光市母子殺害事件というのは、平成11年に起こった殺人、強姦致死及び窃盗の被告事件であり、犯行当時18歳30日の被告人が、強姦目的で被害者宅に侵入し、母親(23歳)を強姦しようとして首にひもを巻き付けて窒息死させ、傍らで泣きやまない娘(生後11ヶ月)も床にたたきつけて首にひもを巻き付け窒息死させ、さらに居間にあった財布を盗んで逃走したというような起訴事実で、一・二審で無期懲役、上告審で破棄差し戻し、現在は広島高裁の差戻審で審理中という事案のようです。
(一部、現在削除提案中のウィキペディアの記事を参考にしたので、多少の事実誤認があり得ることはご了解ください。)
この事件について黒猫が意見を求められたら、単に起訴事実が認められるなら死刑以外の何があるか、むしろ差し戻しなどせず最高裁が破棄自判で死刑判決を出せ、下級審の裁判官に責任を押しつけるな、くらいのことしか言うことはありません。だからこれまで記事にしなかったのですが・・・。
ただし、判決内容の当否と、弁護活動の当否に関する評価は当然に同じではありません。弁護人は、被告人を「弁護」すべき立場にある以上、被告人の弁解内容がいかに不合理なものであろうと、その意に沿った弁護活動をしなければなりません
。それが弁護人の仕事です。
強姦目的でなく、優しくしてもらいたいという甘えの気持ちで抱きついたとか、その上で死後に姦淫したことは生き返って欲しいという思いだったなどと、被告人が明らかにおかしな弁解を繰り広げていても、それが被告人の主張であればそれに沿った弁護をするしかありません。
中には、あまりのことにぶち切れて、被告人の主張に沿わない弁護活動をしてしまう弁護人もいますが、二回試験の刑事弁護でそれをやったら即不合格、弁護士になってからそれをやったら懲戒処分ものです。
それが、黒猫の刑事事件嫌いの理由の1つなのですが、それでも刑事弁護はどの事件でも誰かがやらなければならないわけですから、特に情熱を持って刑事弁護に取り組む人を非難するようなことはしません。黒猫がそういう人たちの仲間になることは断じて無いだろうけど、そういう人たちがいなくなったら、黒猫のような刑事弁護嫌いの弁護士にも刑事弁護の仕事が半強制的に回ってきて、自分で自分の首を絞めることになりますからね。
いろいろ言われている弁護活動の中で問題があるとすれば、最高裁の弁護人が公判期日に欠席したことくらいでしょうが、欠席したのは1回だけのようであり、それだけで懲戒事由があるとまでは言い切れません。広島高裁の差戻審の弁護士には、そもそも懲戒事由らしきものは見当たりません。
弁護士に対する懲戒請求は、法律上誰でもすることができますが、それだけに濫用的な懲戒請求事例も多く、懲戒請求事件のうち懲戒が相当と認められるものは全体の1割にも達しません。
それでいて、一度懲戒請求を受ければ、それにより弁護士の名誉や信用などを害されるおそれがあるほか、それに対する答弁書を書くなどの対応をしなければならず、懲戒請求がかけられていると登録換の手続きができないなどの不利益を受けますから、事実上及び法律上の理由がないことを認識し、または通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに敢えて行った懲戒請求は、弁護士に対する不法行為となり、損害賠償請求の対象となります(最三判平成19年4月24日参照)。
橋下弁護士が、何を根拠にして広島高裁差戻審の弁護人らに懲戒事由があると判断し、テレビで視聴者に対し懲戒請求をするよう呼びかけたのかは分かりませんが、特に弁護士として懲戒事由と思われることも無いのに、単に弁護活動の内容が世論の反感を買っていることに迎合して、視聴者に対し懲戒請求を唆したということであれば、これは十分不法行為になりうると考えられます。また、弁護士職務基本規程71条違反で、そのような行為自体が(橋下弁護士に対する)懲戒事由になる可能性すらあります。
あまりうかつに、懲戒請求などということをテレビで口にすべきではないと思いますね。
橋下弁護士は、日曜のテレビで、「弁護人は被告人の主張が不自然でもそのとおり主張するしかないし、自分も、スーパーで万引きした主婦の弁護活動の中で、醤油の方から買い物籠に入ってきたと主張したことがある」と言って出演者を笑わせていました。
しかし、その前に「そんな弁護士はみんなで懲戒請求しましょう」と連呼していたことを考えれば、さすがに言い過ぎたことを認め、前言を撤回しようとしたということになります。
結局、彼は、ほかの弁護士を揶揄し、批判することで人気を保っているだけですし、損害賠償請求の訴訟で敗訴する可能性は十分にあると思います。
「被告人がどんなに理不尽なことを言っても・・・弁護人は、その主張を代弁することが職務である、」とのことですが、もし、被告人が「おれは、ほんとうはクロだけど、シロということで、裁判をすすめてくれ」といったら、それでも、そのとおりに動かなければならないのでしょうか。
手続的保障は認めなければならないけれど、権利は濫用されてはならないものです。
やぶれかぶれのいいのがれをして、なんとしてでも、生き延びようとする被告人は、永久に極悪人列伝に名を連ねることでしょう。
このことこそ弁護士倫理に反すると思います。
でも、きっと、橋下さんはすぐにあやまるんでしょうね。
じんけんよりも芸能活動が大事であれば。
黒猫先生。昨日発表がありました旧60期の二回試験結果についてのコメントを御願いします。楽しみにしております。
これが理由じゃありませんでしたっけ?