黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

旧60期二回試験・71人が不合格

2007-09-06 13:21:29 | 法曹養成関係(H25.1まで)
 9月3日付け毎日新聞の記事より。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070904k0000m040089000c.html

 引用記事によると、9月3日に旧60期司法修習生に対する二回試験の合格発表があり、受験者1468人のうち71人が不合格となったそうです。
 記事では、今回から追試が廃止されたため、最終的な不合格は過去最多となったという感じでセンセーショナルに報道されているのですが、黒猫としてはむしろ「思ったより少なかったな」という印象を受けています。
 昨年(59期)の二回試験では、不合格者が10名、合格留保者が97名(うち追試で落ちた人が7名)という結果になり、その後翌年からは二回試験の追試を廃止することが決まったのですが、旧60期の司法修習生のほとんどが受験してきた平成17年の司法試験は、合格者数こそ59期と同じ1500人枠であったものの、法科大学院制度導入の影響で受験者数は減少し、その影響か論文試験の合格基準点も下がり、おまけに新60期との競合で就職活動が例年にも増して厳しくなり修習に専念できないといった悪条件も重なるため、大幅な質の低下が懸念されていました。
 そのため、追試廃止により従来の「合格留保」が即不合格となるのであれば、不合格者数はむしろ150人とか200人とかいった数字になってもおかしくないだろうというのが黒猫の予想であり、他にも司法研修所の教官室でそのような噂が流れているといったブログもありましたが、その予想に比べれば少なかったということです。

 もっとも、従来の「合格留保」が即「不合格」という扱いにされた上で、旧60期の不合格者が71名にとどまったのであれば、旧60期の司法修習生はなかなかに健闘したと評価できるのですが、もし追試廃止の影響で、従来なら追試の対象としていたような答案であっても、この程度なら不合格にまでする必要はないとして「救済」された受験者が相当数いるのであれば、直ちにこのようには評価できません。
 今回の二回試験で不合格となった人は、「願い出によって」一旦司法修習生を罷免された後、11月に行われる新60期の二回試験の直前に再び司法修習生として採用され、二回試験を再び受験することができます(現在は、二回試験の受験回数に制限は設けられていませんが、近年の不合格者数増加に伴い、制限が設けられるのは時間の問題と言われています)。
 不合格者数があまりに増えると、再度二回試験を受験させなければならない司法研修所の負担も重くなるので、従来なら1~2科目の追試を受けさせる程度の出来であれば目をつぶったという可能性も否定は出来ません。71人という人数からすると、実際にはこのような扱いがなされたのではないかと、黒猫は疑っています。
 仮にそうだとすると、ここ数年の合格者(二回試験を無事に通過した人)でもその質が疑問視されるような人がちらほら出ているのに、二回試験の合格基準が事実上緩くなってしまっていることになります。
 合格者数を増やしても、実際にはサービスの水準云々を問題にする以前に、最低限の法律知識や判断力すら持ち合わせていない、役に立たない弁護士ばかりが増えるのであれば、社会にとって一体どのようなメリットがあるのでしょうかね。

 さて、次の問題は新60期からどのくらいの不合格者が出るかということですが、これははっきり言って予想のしようがありません。ただ、ボツネタで紹介されていた朝日新聞の記事に、「不動産の二重譲渡の場合、先に登記をした方が優先されることを知らない司法修習生もいる」「法律書面を作成する課題に『分かりません』と書いたりする」といったことも書かれており、ものすごくお寒い状況になりそうな予感はします。

8 コメント

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Unknown (通りすがり)
2007-09-06 14:59:40
黒猫先生は60期の方々をどうしても評価したくないらしい。
>不合格者数があまりに増えると、再度二回試験を受験させなければならない司法研修所の負担も重くなるので、従来なら1~2科目の追試を受けさせる程度の出来であれば目をつぶったという可能性も否定は出来ません。71人という人数からすると、実際にはこのような扱いがなされたのではないかと、黒猫は疑っています。

なんですか?この部分。
しっかりリサーチして、憶測でものを言うのは止めていただきたいですね。
とりあえず、この記事でも読んでください。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070903i415.htm?from=navr
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通りすがりさんへ (黒猫)
2007-09-06 17:42:41
 あなたの引用した記事で最高裁が言っているのは、不合格者71人という数字は質が落ちたことを意味しないということであり、それ自体はそのとおりですが、去年の落第者(不合格者+合格留保者)より今年の不合格者の方が少ないからと言って、必ずしも59期より60期の方が質が良くなったとは限らないよ、というのが記事の趣旨です。
 記事に対しどのような感想を述べるかは、表現者の自由だと思いますが。
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黒猫さんへ (Unknown)
2007-09-06 23:11:28
 60期の弁護士です。研修所では,二回試験は基準は変えないっていう話でしたよ。むしろ,だからこそ頑張らないとダメなんだっていうことで,僕らは,自分でいうのもおかしいんですが,結構必死に勉強していたと思います。
 あと,負担軽減っていう意味でいうと,71人もの人数を不合格にする時点で,研修所の負担,かなり増えてませんか。どうせ基準は外部に分からないわけですから,71人とか中途半端に落とさないというのが素直な感覚じゃないかと思いますが,どうでしょう?やっぱり「ゲタ」はかせて71人にとどめた,と思ってしまいます?
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実施時期との関係 (Unknown)
2007-09-07 11:25:17
11月に追試を受けられることもあって旧60期については従来通りの基準で行われたのではないでしょうか。
問題は新60期でしょう。落ちれば1年後に追試を受けることになるわけで、それにもかかわらず従来通りの基準で行くか、2回試験でも下駄を履かせるか。
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くろねこさんへ (Unknown)
2007-09-07 18:07:00
コメント中の
>去年の落第者(不合格者+合格留保者)より今年の不合格者の方が少ないからと言って、必ずしも59期より60期の方が質が良くなったとは限らないよ、というのが記事の趣旨です。
という部分。
ここまでこの記事が言っているようには読めないのですが。少なくとも質について何らかの意見を持って書かれた記事とは、普通に読む限り、読めないと思いますが、どのように読めばそのように読めるのでしょうか。
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・・・ (Unknown)
2007-09-07 23:40:56
黒猫さんが、新修習が嫌いなことは十分承知しておりますが、「ボツネタで紹介された朝日新聞の記事」を根拠とするのは、あまりにも牽強付会ですよね。
こんなの、事実だとしても極端な事例にすぎないだろうし、こういう極端なのは旧修習の時代からいたでしょうが。
新と旧で新が劣っているとすれば、二回試験に向けた勉強時間が少ないってことくらいでは。
だいたい、現役の弁護士みていると、よく二回試験に通ったなというようなおそまつな人がたくさんいるのですから、不合格者数の推移で最近の修習生の質の低下を語っていただきたくないです。
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Unknown ()
2007-09-08 11:25:24
新修習の底辺ラインが旧修習の底辺ラインを遙かに凌駕して危ないのは合理的に考えて動かしがたいと思うんですがね。
トップ集団は変わらないが、新修習の方が上下の振れ幅が大きいという話は私も直接教官に聞きました。

二回試験に落ちるということは、その人が底辺ラインであるということを意味するんでしょうが、新試験の場合、そういう人の全体に占める率が大きくなるんじゃないかなーというのが合理的推測だと思うんですが。

ところで、「現役の弁護士をみていると」って、あなた何者?
確かに実務修習中に法的知識がおそまつな弁に出会うことは多いですが、そういった人でも最低限の知識はあるのが通常でしょうし、二回試験受験時代にはもっとしっかりしていたかもしれませんよ。
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Unknown (Unknown)
2007-09-11 11:25:33
(↑)さんのいうとおり。

旧修習、新修習、現役法曹実務家で大きく区分けすることが自体がナンセンス。
どうしてこんなナンセンスな議論をするんでしょうか?
東大、京大、早稲田、慶応、その他旧帝大及び私大で大きく区分けするのと一緒。
その時その時の能力が一番大事なわけであって、大くくりにして、こっちが優秀で、こっちが劣等でなんて言うことがナンセンス。
もうそろそろナンセンスな話はやめにしません?

僕が新修習に対して言えることは、次の2点です。
・彼らは国家的詐欺の被害者であり、決して揶揄される立場ではないのだから、周囲の声を気にせずに。
・旧試験のとき以上に多くの科目をロースクールで課されていますが、民法刑法の考え方をおろそかにしないでほしい。金融法といわれている分野や知財も突き詰めれば、底流には民法の考え方があるから。

これだけです。
実務で登場する書面は実務をやっていけば、その意味するものは分かってくるはず。
その意味するものが分かってこないのは、実体法の理解が乏しいことに原因があると思います。
実務で一般民事法律相談を行ってみればわかるとは思いますが、「事実は小説より奇なり」、実体法の理解から解きほぐさなければならない事案ばかりです。
だからこそ、民法刑法の学習を中心に行って、「考え方」を身につけて欲しい。

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