黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

あからさまに公職選挙法違反行為を迫る「日本維新の会」

2012-11-23 23:07:42 | 時事
 最近,このブログでは政治向きの記事を書くことが多くなってきたものの,特定の政党を支持ないし攻撃するようなことは,あまりやりたくありませんでした。
 しかし,一部の政党があからさまな違法行為(公職選挙法違反)を地方公共団体に迫っているということであれば話は別であり,法律家としてはこのような行為を断じて許すことはできません。

橋下氏「自民と一戦を」、知事「政治行動せぬ」(読売新聞) - goo ニュース

 上記にリンクを貼ったのは11月23日付け読売新聞の記事ですが,リンク先が消えてしまう可能性もあるので,内容の重要性に鑑み以下に記事全文を転載します。

『日本維新の会代表代行の橋下徹大阪市長は22日、関西広域連合会合後の記者会見で、全国知事会などが求めてきた国出先機関の地方への移管を巡り、自民党が21日発表の衆院選政権公約で「断固反対」と明記したことを批判し、「自民党との対立」を全国知事会と広域連合に呼び掛けた。

 会合では、維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事が、事実上、維新の会への推薦を広域連合に求めた。異例の選挙推薦を迫られた知事らは、一様に否定的で、広域連合は対応を保留した。

 「自民党がこういうことを掲げているのに、広域連合や知事会が対立しなかったら、何のための地方分権か」

 橋下市長は会見で、自民党の政権公約をやり玉に挙げ、「広域連合が自民党と一戦を交えないと、出先機関改革がつぶれてしまう」と訴えた。

 その場で井戸敏三連合長(兵庫県知事)が「抗議の申し入れはするが、広域連合は政治的行動を取るわけにはいかない。広域連合が選挙をするわけではない」と退けたが、橋下市長は「抗議なんてやっても意味ない。悠長な議論をしている場合ではない」と収まらなかった。

 これに先立つ会合で、松井知事は自民党の政権公約を批判し、「広域連合として推薦する政党を決めてほしい。広域連合がサロン的なものにとどまるかどうかが問われている」と迫った。

 井戸連合長は「広域連合は特別地方公共団体なので、特定の政党を推薦するのが適切かどうか。対応を保留したい」と応じた。

 全国知事会会長の山田啓二京都府知事も読売新聞の取材に「知事会は公的な側面を持っている。ある政党が政権を握った時に協議をする立場で、政治的行動を起こすのは違う」と述べた。』


 広域連合とは,地方自治法に規定されている特別地方公共団体の一種であり,地方公共団体の長の権限に属する事務の一部を,複数の地方公共団体が共同で行うためのものです。上記の記事に出てくる関西広域連合は,平成22年12月に,大阪府・京都府・滋賀県・兵庫県・和歌山県・鳥取県・徳島県の2府5県によって設立された広域連合であり,現在のところは防災,観光・文化振興,産業振興,医療,環境保全,資格試験・免許等,職員研修の7分野で事務を行っており,いわば関西における上記府県の連合体と言っても良いでしょう。
 いくら地方分権を推進したいと言っても,あなたの住む地域の自治体(県や市町村など)が,自治体として公然と特定の政党を支持したりするのは誰だっておかしいと思うでしょうし,橋下市長や松井知事が日本維新の会を今回の衆院選で勝たせるために,大阪市ないし大阪府として公式に日本維新の会を推薦したり,その他首長としての地位を利用して選挙活動を行うことがあれば,それが明らかな職権濫用であることは説明を要しないでしょう。橋下市長や松井知事がやろうとしていることは,事実上既にこれらと大差のない行為なのです。

 もちろん,このような行為は法律でも明確に禁止されており,公職選挙法136条の2では,国や地方公共団体の公務員等は,その地位を利用して選挙運動をすることができないものとされています。違反者に対しては,同法239条の2第2項の規定により2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられることになっています。
 広域連合が,上記の地方公共団体に該当することは言うまでもなく,広域連合として特定の候補者ないし政党を推薦することが上記規定に違反することも明らかです。橋下市長や松井知事は,法律上特定の候補者や政党の推薦に関与すること自体が許されない広域連合に対し,自ら組織する政党である「日本維新の会」への支持を迫り,広域連合の関係者に対しあからさまな違法行為を働きかけているのです。
 また,松井知事は,大阪府知事としての資格で関西広域連合の会合に出席し,その場で事実上日本維新の会への推薦を広域連合に求めたということであり,公職選挙法の解釈次第では,既にこのような行為自体が同法違反であると解する余地もあります。

 したがって,推薦を求められた井戸連合長が橋下市長の申し入れを退けたのは立場上あまりにも当然のことなのですが,橋下市長はそれでも収まらずになお推薦を迫ったということであり,同市長によるこのような政治活動は,公職選挙法の趣旨を顧みない極めて悪質な行為であると非難せざるを得ません。
 橋下市長については,弁護士出身であるとは思えないほど,時に違法行為すれすれの行動が目立つ人物であるということは従来から知っていましたが,特に国政に参画する政治家としては,遵法意識が決定的に欠けているように思われます。このような人物が国政のトップに立った場合,公然と法律を無視した行動を取り,ヒトラーのような独裁者になってしまう危険性も,残念ながら現実のものであると指摘せざるを得ないでしょう。

6 コメント

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Unknown (貧乏人)
2012-11-25 06:48:22
弁護士資格を嵩に着て、無知な一般市民に明白な違法行為を強要するような輩が横行しているというのなら、なぜ弁護士会はそんな輩を放置しているのでしょうか。

もし、名門組織の代紋を嵩に着た組員が、堅気市民を踏み躙る悪質な犯罪を働いていた場合、「許せねえ! 俺たちの面汚しだ!」と幹部会の沙汰で厳罰(指詰めて絶縁状発送、ぐらいは当たり前)にされたというのならまだしも、組織がその組員を放置している、あるいは幹部が口だけごにょごにょ批難がましいこと言っただけで実質処分は何も無し、というのでは、組織全員がそいつと同類と看做されるのは当然でしょう。

明らかに法に反する行為を得意げに強行する弁護士など、広域暴力団よりもっと反社会的な存在と言えます。そいつを放置し続ける弁護士会も同罪だと思います。
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おっしゃるとおりです (Unknown)
2012-11-25 12:43:30
先にコメントされた方がおっしゃるとおりだと私も思います。
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そう思うのなら (Unknown)
2012-11-26 10:21:55
橋下弁護士に懲戒請求をされたらどうですか。
「懲戒請求を1万,2万とか10万人とか、この番組見てる人が、一斉に弁護士会に行って懲戒請求かけてくださったらですね、弁護士会のほうとしても処分出さないわけにはいかないですよ」
って本人が言ってるんですから。
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Unknown (貧乏人)
2012-11-26 11:51:07
私は、弁護士会自体を信用できないと言っているのです。

例えば、幹部を処分しろとわざわざ暴力団に苦情電話かけたり、組事務所に単身出向くような市民がいるのですか?

今の弁護士会が人権擁護などと抜かすのは、広域暴力団が任侠道を説く以上の欺瞞を感じますね。暴力団は少なくとも独占免許に嵩に着ることだけはない。
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理解出来ない (普通の人)
2012-12-04 23:38:40
維新会を応援する人達はこの会の政策がかの竹中氏が関わっていることを知っているのでしょうか。かつて小泉(純)氏と組み多くの若者を契約社員にし、その成果をもって自分は派遣会社の会長に天下ってのうのうと暮らしている。更に今度は最低賃金制の撤廃や解雇の規制緩和をしようとしている。今更選挙公約を修正したところで魂胆は見え透いているのに・・・・・。弁護士先生も何を血迷ってこのような政策を公約に入れたのか。日本の労働者を徹底的に絞り上げるつもりなのか。
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george1942washington (隼人介)
2013-07-06 08:54:07
松井一郎大阪府知事や橋下市長が国政の選挙活動をするのは、明確な反社会的行動であると考える。弁護士連中は条例の定めにないから違法ではないと言いたいのだろうが、「公職にあるものは、公務員に準じて職務専念義務がある」と考えるのが我々平均的な社会人の常識である。法令や条例より、常識という不文律が優先するというのがわからないのだろうか。橋下をはじめとする同類の輩がどうしても抵抗するなら、緊急避難的に、兼職を前提としている公職者については時給制を導入し、時給単価は、平均パート賃金の概ね1/2以下とすることを提案したい。
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