黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

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今年の新司法試験

2008-05-15 02:46:59 | 法曹養成関係(H25.1まで)
 GWの前後から体調不良で寝込んでいて,最近ようやく復活しました。
 ブログの更新もここ2週間ほど滞っていたのですが,その割にはアクセス数が多いので調べてみると,「新人弁護士の就職状況」の記事に異様な数のコメントが・・・。
 ここまで来ると読む気も起こりませんが,別におかしなことを書いた覚えはないし,コメント欄で論争したい人がいるなら好きにさせておけばいいでしょう。

 ところで,5月14日付け毎日新聞の記事では,

「法科大学院修了生を対象にした3回目の新司法試験が14日、4日間の日程で全国7都市で始まった。法務省によると、6261人(速報値)が受験した。合格発表は9月11日。昨年は、大学で法学を履修した「2年コース」の修了者に加え、法学を履修していない「3年コース」の修了者が初めて受験し、両コース合わせて1851人が合格した。
 受験者数は第1回(2091人)、第2回の昨年(4607人)と年々増加し、逆に合格率は48.3%、40.2%と低下している。今年の合格者は2100~2500人を想定しており、合格率は33.5~39.9%になる見通しだ。」

と報じられています。今年も,いよいよ新司法試験が始まったようです。
 新司法試験は4日間にわたって行われ,1日目が択一試験,2日目以降が論文試験です。今年の日程は,5月14日,15日,17日及び18日と,試験日が1日空いています。
 これは,第1回の新司法試験のときからの慣例で,たしか第1回のときは,最初は4日間の連続日程での施行が予定されていたところ,日曜日が公務員試験と重なるという理由で1日空けられたものと記憶していますが,それ以来,2日目と3日目の間を1日空けるのが慣例となったようです。さすがに,4日間連続の試験は体力的にきついからということでしょうか。
 新司法試験について,上記の毎日新聞の報道はまだいいのですが,気になるのは以下の読売新聞の報道です。

「法科大学院の修了生を対象にした新司法試験が14日、東京など全国7都市の会場で始まった。
 年間合格者数を2010年ごろまでに3000人に引き上げるとした政府目標の見直しを求める意見が法曹界から上がる中、合格率は3割台に低下する見通しで、受験生は不安を抱えながら試験問題に取り組んだ。
 新司法試験は今年で3回目。受験者数は昨年までの不合格者が加わって6261人に膨らみ、合格率は昨年の40・18%を下回る3割台と、いっそうの「狭き門」になる。」

 何でしょうかね。この批判がましい論調は。
 具体的に指摘すると,まず,今年の司法試験の合格率が30%台に低下することは,新司法試験の制度設計上当然に予定されていたことであり,別に法曹界からの圧力で合格率が押し下げられているわけではありません。2100~2500人という予定合格者数は,2010年までに合格者数3000人という政府目標に沿ったものであり,下方修正はされていません。
 司法修習がある関係であらかじめ予定合格者数を決めざるを得ない現行制度上,合格率が下がるのを防ぎたければ,別に「新司法試験は法科大学院卒業後1回しか受験できない。1度落ちたら再受験はできない」と決めてしまえばよいところ,実際には5年間に3回までの受験を認めているので,試験を実施するごとに昨年までの不合格者が加わって競争率が上がることは,当然の成り行きですね。
 ついでに言うと,昨年の第2回試験で合格率が40.2%にとどまったのは,もともと受験者層全体の出来が悪かったからですからね。もともと2200人までの合格枠を用意していたところ,全体的に出来が悪すぎて2200人も合格させるわけにはいかないということで,合格者数が予定の下限に近い1800人台にとどまったわけですから。
 それに続けて,「受験生は不安を抱えながら試験問題に取り組んだ」と書かれているのですが,新司法試験に限らず,どんな試験だって落ちる可能性はあるんだから,不安を抱えていない受験生なんか普通いないでしょう。
 さらに3割台の合格率を指して「いっそうの「狭き門」になる」になると評していますが,ここまで来るともう失笑ものですね。
 現役の法曹は,基本的にみな合格率2~3%くらいの旧司法試験を通過してきた人たちであり,新司法試験について「合格率30%,40%なんて「試験」じゃないよ」と評する人もいるくらいです。
 実際には受験資格の問題があるので,黒猫自身はそこまで極論する気はありませんが,それでも宅建や行政書士の合格率よりはるかに高い30%台の合格率をもって「よりいっそうの狭き門」と評する気にはとてもなれません。むしろ,「えらく間延びした広き門になったものだなあ」というのが正直な感想です。
 上記の読売新聞の記事を読むと,あたかも「既得権益の維持を目的とした法曹界の圧力で新司法試験の合格率が引き下げられ,受験生たちはその低い合格率を不安に感じている」とでも言いたげな雰囲気ですが,これがマスコミによる悪質な情報操作以外の何物でもないことは,以上によりお分かり頂けると思います。

 でも,30%台というのは,あくまで「司法試験」の合格率に過ぎません。新司法試験に合格しても,現状から察するに,そのうち少なくとも100人か200人くらいは二回試験で落とされる可能性が高いでしょう。
 そして,無事二回試験を突破して弁護士資格を得ても,最近の新人弁護士市場はとっくに供給過剰の状態に陥っていますから,低賃金でも勤務弁護士になれればまだ良い方で,一時期「ノキ弁」と称された収入保障の全くない地位に最初から置かれたり,どこにも就職先を見つけられなくて,OJTを受けることもなくいきなりの「独立開業」を余儀なくされる人も相当数いるでしょう(最近は「即独」(ソクドク)という略語まで定着しているようです)。
 当然,そうした人たちの多くは,弁護士業では食べていけず,やがて重い会費負担に耐えかねて弁護士登録も抹消してしまうことになるでしょうから,もし今年の新司法試験受験者のうち,無事に法曹資格を得てその5年後も法曹でいられる確率(5年生存率)のようなものを測ってみたとしたら,いいとこ10%台くらいかなという気がします。実際にそのような統計を取るのは,いろんな意味で難しいと思いますが。
 ついでに言うと,2010年以降の新司法試験に合格した人たちは,司法修習が給費制から貸与制に移行し,弁護士資格を得た人はそれまでに貯金をするどころか,各自200~300万円前後の借金を背負って弁護士人生をスタートすることになりますから,「即独」で失敗する確率はますます高くなるでしょうね。

 新司法試験に関し気になるのは,全体の合格率もさることながら,昨年までの試験に落ちた「再受験組」がどのくらい合格するか,という点もあります。
 再受験組が健闘し,合格者数の大半を占めるようになった場合と,そうでない場合とでは,新司法試験の位置づけは大きく変わってきます。大きく分けて2つのシナリオを想定してみると,その意味がはっきり分かるでしょう。

シナリオ1:再受験組大健闘の場合
「昨年の新司法試験に不合格となった受験生たちは,皆再受験のため猛勉強した結果,再受験組の約8割が新司法試験に合格し,合格者数全体の半分以上を占めるようになった。
 その結果,新司法試験の受験者全体のレベルは向上したが,今年法科大学院を卒業した受験生たちは締め出される格好となり,やがて新司法試験は「法科大学院を卒業した後,最低1年くらいは受験浪人をしないと合格できない試験だという風評が広まり,受験回数制限を気にしてか,法科大学院を卒業しても当年度は試験を受け控えるという人が増加した。
 さらに,法曹になるには多額の学費と時間のかかる法科大学院の卒業が必要な上に,さらに卒業後何年も受験浪人をしないと新司法試験を突破できないという風評が広まって,法科大学院の人気はますます低下して志願者数の減少を招き,結果的には法曹の質のさらなる低下につながった。」

シナリオ2:再受験組苦戦の場合
「昨年の新司法試験に不合格となった受験生たちの多くは,今年の新司法試験でも苦戦し,再受験組の合格率は今年の法科大学院卒業者を大きく下回る結果となった。
 その結果,新司法試験は法曹となる資質を測る試験であり,1度受験して不合格となった者は,何度受験してもダメである可能性の高いことが統計上明らかになった。新司法試験に不合格となった者の多くは,自主的に法曹への道を断念して企業等への就職を目指すようになったが,全体的な合格率の低下は,受験者のレベルの向上にはつながらなかった。」

 以上は,いずれも両極端のケースを想定したシナリオであり,おそらく実際にはこの中間くらいの結果に収まる可能性が最も高いでしょうが,制度設計としては,どちらかというとシナリオ2に近い結果となるのが好ましいのでしょう(アメリカの司法試験も,1度落ちた人は何度受験してもダメという傾向があるそうです)。
 法科大学院の卒業から受験までの期間が短いといっても,在学中に試験対策の勉強をしない法科大学院生はほとんどいないでしょうし,択一試験は知識量よりむしろ事務処理能力がものをいう試験であり,論文試験は(旧試験時代から)知識を詰め込み過ぎるとうまく答案がまとまらなくなりかえって合格できない試験ですから,実際にも再受験組が圧倒的に有利となる可能性は低いと思います。
 もっとも,どちらの結果に転んだところで,法科大学院の人気が今後低下していくことは避けられないので,法科大学院関係者やお馬鹿な文部科学省の役人たちの中には,司法試験の合格者を年間9000人に増やせとか無茶なことをほざいているようですが,いくら司法試験の合格者数を増やしたところで,受験者の「5年生存率」の方は動かしようがありませんから,結局は実際には法曹関係の仕事などしていない「ペーパー弁護士資格者」が増え,弁護士の平均的な社会的ステータスが大幅に下がるだけです。
 司法修習は,年間3000人でも受け入れ困難な状態なのに(司法研修所の問題ではなく,実務修習の受け入れ体制の問題です),年間9000人ともなれば司法修習は廃止するしかないでしょう。司法修習がなくなれば,合格者と弁護士会との人的接点がなくなりので,もはや司法試験の合格者の大半が就職できようができまいが,弁護士会も気にしなくなるでしょう。
 もともと,日本の有資格者団体の中で,試験の合格者が無事就職できるかどうかをいちいち気にする団体は弁護士会くらいのものであり,それが他の団体と同じようになるだけです。
 さらに弁護士の資格や知識は結構悪用が効くので,まともな仕事では食えなくなった弁護士有資格者による悪事が増加するおまけ付き。
 法科大学院なんて,どうせ大半は予備試験の施行とともに潰れる運命にある(予備試験を必要以上に狭き門にすれば,法科大学院卒業者より予備試験合格者の方が市場で評価されるようになる。予備試験の合格者数が多くなれば,もちろん法科大学院の存在意義がなくなる)のだから,断末魔の悪あがきに実務界を巻き込まないでほしいですね。
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49 コメント

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旧でも (通りすがり)
2008-05-15 22:24:55
旧でも記念受験とかあったわけで、そういうのを除くと、実質競争率は15パーセントくらいになったんじゃないだろうか。
Unknown (そうすると)
2008-05-15 22:35:21
5人に4人が記念受験ということになります
Unknown (Unknown)
2008-05-16 15:41:25
旧試験では、論文試験を受けるために難関の択一試験を突破しければいけません(記念受験者は、ここで廃除されます。)。

厳選された受験者層で構成されている論文試験の合格率でも15%未満ですよ。

当たり前のことですが、旧試験と新試験とでは全く次元が異なります。
受け控え率19%(笑) (Unknown)
2008-05-17 01:57:27
受け控え率19%
出願者のうち19%ですよ!出願すらしていない人を入れたら・・・
それなのにお約束どおり2100人~2500人受からせるんでしょうね。国策と言う名の下に。

何のためのロースクールなんでしょう(笑)
もういい加減にして欲しいですね。
Unknown (Unknown)
2008-05-17 02:15:53
おびえすぎ
Unknown (Unknown)
2008-05-18 00:10:32
予備試験施行が法科大学院の致命傷になるでしょうか?
たとえ狭き門である予備試験合格の評価が高くなるとしても,
同じ資格をとるのに,優しいルートと激難ルートがあれば,
合理的な人間なら前者を選ぶのではないでしょうか。
経済的に困難な人や上昇志向が非常に強い人は別でしょうが。

法科大学院の致命傷は,やはり三振制度と合格率のジレンマでしょう。
三振制度を存続させれば,三振者の惨状が問題になり,廃止すれば合格率の低下が問題になります。
いずれにしても,従来の司法試験が抱え込んだ高倍率と滞留現象という問題を,大学が制度化して引き受けたわけですから,当然の報いですね。
黒猫さんへ (Unknown)
2008-05-18 08:48:25
(予備試験を必要以上に狭き門にすれば,法科大学院卒業者より予備試験合格者の方が市場で評価されるようになる。予備試験の合格者数が多くなれば,もちろん法科大学院の存在意義がなくなる)

とありますが予備試験の合格者数の増減で両者の市場での評価が相対的に変わるとするなら、予備試験の合格者が増えれば、簡単な予備試験より法科大学院修了者の方が評価が高くなるということもあるのではないでしょうか?
予備試験 (しげもと)
2008-05-18 14:12:34
予備試験経由かロー経由かでその後に影響があるとは思えません。
私は大検を経て、大学 → 就職しましたが、そのキャリアが評価されたとも、されていないともいずれの認識もないので。
一般人からすれば (非法曹者)
2008-05-18 14:13:49
法曹全体の質が向上する必要なんて無いので、
大量に合格させても別に問題無いんじゃない?
資格の有無で選別するんじゃなくて、
有資格者内での競争による質の向上を目指せばいいわけで。
競争に敗れた人は法曹界を去っていけば良いわけで。

一般人的には、そうやって、
有能な弁護士は高額で、
無能な弁護士は低額で、依頼できる方がメリットが大きい。

もう、弁護士業もラーメン屋とかと一緒で、競争の業界にしてくれた方が嬉しいよ。
Unknown (Unknown)
2008-05-18 14:44:08
新制度に関しては、いつまでたっても独立できない無能な弁護士が騒いでるだけでしょう?

地盤で仕事するのじゃなくて、特定の専門性で食ってる弁護士は大きく構えてるよ。

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