愚公、山を移す

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これからの「正義」の話しをしよう マイケル・サンデル著

2022-08-18 14:50:39 | 日記

これからの「正義」の話しをしよう マイケル・サンデル著

第8章 誰が何に値するか? ― アリストテレス

 

アリストテレスがいう正義論の観念の中心には、正義とは目的にかかわるものであり、名誉にかかわるのであるという、二つの観念があるとサンデル教授はいう。

アリストテレスにとって政治の目的とは、「良き市民を育成し、良き人格を要請すること」であり、少数の者が権力を持ち財産の保護・経済的繁栄を目的とする独裁的な政治や、多数派が支配する民主主義も、不完全なものであると捉えていると、サンデル教授は記述している。

都市国家に住む市民は政治への参加は不可欠であり、そこで、市民は言語能力を行使する。孤立した人間は都市国家の構成員たるを得ない。都市国家に住み有徳な生活を送り、道徳的構想に励むことによって、実践的な知恵が身に着き、善とは何かを熟慮できる市民となり得るとアリストテレス考えていた。

一方、アリストテレスは奴隷制を容認していた。アメリカで奴隷制が廃止されたのは1865年、女性が投票権を得たのは1920年。人類は極めて長期に亘り不正の歴史を容認して来た。アリストテレス時代は、都市国家に住む市民の政治への参加は、女性と奴隷には認められていなかった。

 現在、民主主義陣営と独裁的な政治陣営との対立が深まっている。2019年、スウェーデンの調査機関VーDemは、世界の民主主義国・地域が87カ国であるのに対し、非民主主義国は92カ国となり、18年ぶりに非民主主義国が多数派になったという報告を発表している。現状、民主主義国家は多数派ではない。アリストレスは、独裁的な政治や民主主義も不完全なものであると捉えているが、アリストテレスの時代から継続する議論は、これからも継続するであろう。



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