愚公、山を移す

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これから「正義」の話しをしよう マイケル・サンデル著

2022-04-26 13:50:41 | 日記
これから「正義」の話しをしよう マイケル・サンデル著
第 5 章 重要なのは動機 - イマヌエル・カント

イマヌエル・カントは、1781 年純粋理性批判を出版、1785 年道徳形而上学原論では功利
主義を批判し、人の欲望から道徳原理は導けない、過半数を取ろうと法律が正しいとは言え
ないと主張し功利主義を認めない立場を取った。その基盤となったのは、人間は理性的存在
であり尊厳と尊敬に値すると存在であるという価値観であった。

第 2 章で、ベンサム、ジョン・スチュアート・ミルが支持した「最大幸福原理」<功利主
義原理>の概念を確認し、第 3 章で、リバタリアニズム(自由至上主義)を唱えるリバタリ
アン(=自由至上主義者)が、制約のない市場を支持し、所得や富の再分配に反対し政府の
規制に反対する立場を追求する行動に触れた。

カントの政治理論観は、道徳感・自由感・理性感の 3 点を対比した。
① 対比その1(道徳) 義務 対 傾向性
*道徳的か否かは、行動結果ではなく行動を起こす意図で決まる。正しいか
らという動機で行動する。行動に道徳的価値を与えられるのは義務の動機。
② 対比その2(自由) 自立 対 他律
*人間が真に自由といえるのは、意思を自律的に決定している時。
③ 対比その3(理性) 定言命法 対 仮言命法
  仮言明法(X が欲しければ Y をせよ)を定言命法に対比
  定言命法1 *自分の格律(行動理由となる規則・原理)の普遍化。
  定言命法 2 *人格を究極目的として扱う。
  道徳的に行動することは、義務から行動すること。道徳法則は定言命法であ
  る。定言命法により行動している時のみ自由である。
更に対比を追加する。
④ 対比その4(観点) 英知界 対 感性界
人間は英知界の観点からのみ自由となしうる。

カントは、功利主義を認めず、正義と権利は社会契約に由来していると主張し、集合的同
規範として正義を捉え、適理性を追求した。社会の理想的な姿を指し示し、人々は自由、平
等な民であるべきと考え、社会を公正で大きなシステムと考えたのである。
カントの政治理論は、集合的同意という仮想上の契約がどのようなものかを語っていない。
現代の政治理論の主流的潮流を築く 200 年後のロールズの登場を待つことになる。一連の政
治理論を現実の世界に対応させることは難しい。政治理論を踏まえ現実の世界を考え
る研究は続くことになる。


*参考文献  現実と向き合う政治理論  山岡龍一・大澤津 著