「スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋」
ウルリケ・ヘルマン著 みすず書房
第6章 資本主義には無関心—新古典派
Wikipediaを参照すると、限界革命(Marginal Revolution)とは、1870年代にウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、カール・メンガー、レオン・ワルラスの3人の経済学者が、ほぼ同時に、かつ独立に限界効用理論を基礎にした経済学の体系を樹立し、古典派経済学に対して近代経済学を創始したと言及している。アダム・スミス、リカルドに代表される古典派経済学に対し、新古典派としての地位を、彼らは限界革命により構築することになった。
しかし、新古典派に対し、価格の発生、利潤の存在を解決出来ない等、本書の著者 ウルリケ・ヘルマン氏の批判は厳しい。ヘルマン氏は、新古典派が利益を企業家が取るべきリスクへの一種の報酬とみなし、企業の成長を知らず、技術を知らず、巨大企業を知らず、利益を知らない事を指摘している。しかし、新古典派は微積分を用いた数値で経済を捉える長所を持ち、現在でも新古典派としてその地位を持ち合わせている。
1873年世界経済危機では賃金は激しく低減した。低下率は50%に達し、ヨーロッパからアメリカに何百万人もの労働者が移住した。新古典派は、労働者は自発的に失業し職場放棄したと考えた。やがて、アメリカでも1929年世界大恐慌が起きた。アメリカの総生産の3の分一が減少、価格の25%が減少、85,000社が倒産、800万人の労働者が預貯金を失った。新古典派はこのことを説明出来なかった。自発的に失業したわけではないのである。
やがて、ケインズの登場となる。新古典派は、貨幣は経済を覆うベールでしかなかったと著者は結ぶ。