愚公、山を移す

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「それをお金で買いますか 市場主義の限界」 マイケル・サンデル著

2023-03-02 22:46:03 | 日記
「それをお金で買いますか 市場主義の限界」 マイケル・サンデル著
第5章 命名権


 この章は、アメリカの国民的産業とも言えるメジャーベースボールについて、顕著な商業主義により、メジャーベースボールの在り方そのものと思えるような変貌を説明する事から始まる。メジャーベースボールの選手は高給取りであるが、近年、トッププレイヤーは破格な扱い(報酬)を享受している、一方、野球場の観客席の値段についても、ボックス席の価格は高騰し、更にスカイボックス席が出現し破格の値段が付けられ、一般の外野席から観戦するファンとスカイボックス席で観戦するファンと、著しい格差が生まれている。
 選手の使用した野球用具、選手のサインも商品となり、野球場その物の名称も商品となっている。地下鉄の駅、公園の遊歩道、自治体所有車両、学校、体育館、芸術ホール、スクールバス、教室等々に企業名、起業ロコを入れる等、商業主義は更なる拡大を続ける。
いみじくも、サンデル教授は、「民主主義に完全な平等は必要なわけではなく、大事なのは、出目や社会的立場の異なる人たちが日常生活を送りながら出会いぶつかり合う事」と述べている。
GAFAに象徴される一部企業による市場独占に伴う企業間格差拡大、企業内給与所格差拡大、非正規労働者と正労働者の所得格差拡大により、自由・平等・公平の在り方が変容している。超スマート社会の実現をめざす第4次産業革命の進展は、格差を更に大きく拡大させる事となるように思える。
 サンデル教授は巻末で「市場の問題は、我々が如何にして共に生きたいかという問題だ」と提示している。何でも商品化することも出来るが、金で買えない善・道徳もある。貨幣経済である限り富の集中が繰り返され、人類の歴史は戦争の歴史であり、今なお繰り返し世界の各処で戦闘・殺戮が行なわれている。
 しかし、人々が考えているように世界は動くのである。極論すれば、天災を除き、考えていない事は起こらないともいえる。人類は地球温暖化を防ぐためCO2削減目標を定めた。(日本は2030年度 温室効果ガス46%削減(2013年度比))構想し行動することである。