愚公、山を移す

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「それをお金で買いますか 市場主義の限界」 マイケル・サンデル著

2023-01-05 19:10:52 | 日記

「それをお金で買いますか 市場主義の限界」 マイケル・サンデル著 


  第3章 いかにして市場は道徳を締め出すか


 


市場経済でもお金で買えないものもある。買えないものを買うには、時間、意思、行動、幸運等があっても限界がある。サンデル教授は、議論を展開していく。

 


・お金で買えるもの、買えないもの(友人・ノーベル賞)もある。
・買えるが、買うべきではないもの(肝臓・子供)もある。
・買えるが、価値の低いもの(結婚式等の祝辞代行)もある。
・贈り物の価値は、現金(その購入金額)の価値と同一ではない。
・贈り物にギフトカードを使うことで、贈り物の価値を向上させる方法もある。
・学歴も、裕福な家庭で育つ幸運があれば、売買が可能である。(すべきであるかは別)
・買うべきではないもの(肝臓・子供)を買う場合、公正の議論・腐敗の議論が起こる。
・市場主義で売買される善が傷付き、腐敗することがある。市場主義において、インセンティブをあたえる(金銭を授与)することによって、行動が減る場合もある。(核廃棄物処理場の候補地での賛成支持の例)
・市場が非市場的規範を締め出す例として、献血制度がある。(売血より収血効果がある)。

 


サンデル教授は、市場主義経済の課題として。市民的美徳・公共心は、使わないと衰退することを指摘し、アリストテレスが主張した、美徳は実践を通じ育まれるとの教えをあげる。「正しく行動することによって正しくなる。節度をもって行動することによって札度を身につける。勇敢に行動することによって勇敢になる。」市場主義社会の欠点を指摘している。
グローバル・ネットワークが地球全体を覆い尽くすにつれ、近代の自然と人間の二元 論として捉えたプロジェクトは、立ち行かなくなっている。近代経済のメカニズムから、富める者は富み、貧しい者は貧しくなっている現実がある。経済格差・貧困がまかり通る 社会に直面している。貨幣経済の課題が浮き彫りになっている。
日本国民は、1970 年代には一億総中流意識を持っていた。バブル経済崩壊に伴い、経済格差・貧富の差が拡大し、嘗ての世界トップクラスであった国民一人当たりの GDP は大きく後退した。失われた 30 年と言われるが、GDP が全てではない。地球環境の温暖化(グローバル・ウォーミング)に直面し、人類の生命活動に影響をもたらす海面上昇・気候変動の危機が実際に起きている。地球の地層全体に「人新生」といわれる危機的変化が起こっている。お金で買えないと思われているものの確認(投資)を、模索する時代が来ているかも知れない。