愚公、山を移す

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これからの「正義」の話しをしよう マイケル・サンデル著

2022-10-18 15:51:42 | 日記

 これからの「正義」の話しをしよう マイケル・サンデル著

第10章 正義と共通善

 最終章「正義と共通善」では、J.F.ケネディとバラック・オバマとの共通点、共に若くに大統領に就任し、雄弁で溌剌とした政治家であり、就任は新時代の到来を意味したという事から切り出し、両大統領共、アメリカ国民を市民参加の時代に向かわせる事を目指したことに注目している。しかし、宗教的な見解は、両者で異なることを指摘している。

 J.F.ケネディは、宗教的観点ではなく、自らの良心に照らし国益を追求する姿勢を示し、宗教圧力や指図を顧みることはないと主張。バラク・オバマは、道徳的・宗教的信念が政治・法律において何の役割も果たさないという考えに固執するのは間違いであり、信仰に好意的な形の公共的理性を持つべきであるとの立場を指摘している。米国社会の根幹にある宗教規範の深さを、サンデル教授は論じ、オバマ大統領の政治哲学を擁護している。

 議論は、妊娠中絶、幹細胞(ES細胞‐あらゆる細胞に分化できる能力を維持したまま培養可能な細胞)をめぐる論争、同性婚に関する問題に触れ、9章までに記述した、正義に対する3つの考え方を復習している。

〈一つ目の考え方〉正義は功利性・福祉を最大限にする(最大多数の最大幸福)。 この考え方の問題点は、           正義と権利を計算の対象としている事と、統一基準に当てはめ、個々の質的な相違を述べていない事を指摘。 

〈二つ目の考え方〉正義は、選択の自由の尊厳を意味する。

〈三つ目の考え方〉正義は美徳を涵養することと共通善につて判断する。

 サンデル教授は、三つ目の考え方から、共通善に基づき政治を考察する。その考察は、市民権、犠牲、奉仕について、市場の道徳的限界について、不平等、連帯、市民道徳・道徳に関与する政治についても及び、公正な社会のあるべき姿を追求した。

 サンデル教授が考察する課題を含め、現代政治哲学の規範といえるジョン・ロールズの「正義論」等、アメリカ社会が抱える社会の分断に対し、政治哲学的観点から提言がなされている。

世界第一位の経済力(GDP)を持つ人口3.3億人からなるアメリカは、人口14.5億人からなる中国に経済力(GDP)では、やがて2030年以降には凌駕されることが想定される。しかし、一人当たりのGDPの優位性、文化を含む国際的影響力は、一筋縄には逆転するには変遷が必要であろう。

 10章からなる「これからの「正義」の話しをしよう」を通しても、アメリカ人が考える自由は、日本人には解り難い。同様に、宗教と政治に関する関係についても日本とは異なり同様に理解が難しい。日本は、政治哲学も含め、アメリカの変革を確認しながら、あるべき姿を確認し国際社会での生存競争に、アメリカの影響を受け止け入れ如何に変遷することになるのであろうか。