吹き過ぐ風が登りの汗を一瞬のうちに吹き払ってくれた。♪申し訳ないが気分がいい♪とかって岡林が歌っていた。うーん本当に訳も無く心地よい。しかも何故かそのことを誰かに謝りたくなる。上空を雲が変幻自在に形を変えながら流れ去って行く。雲間からもれる陽射しは疾うに夏の熱を失い、世界を気弱に照らすだけだ。
視界の遥か先を何処までも果てしのない木道が続いている。散在する池塘のそれぞれに流れ行く雲がゆらゆらと不思議なリズムで揺らめいている。
いつの間にか私は呪いをかけられたようだ。居ながらにしてここでない何処か異空間に跳んでいた。突き崩されていく平衡感、剥ぎ取られる磨り減ったペルソナ。些細な悦楽と呪詛とで充ちた日常が、恰も予定されていたかのように音もなく崩落して行く。世界は無垢な姿のまま立ち現れ、一人だけの祝祭がはじまる。
木道を弘法沼まで歩いてきた。相変わらず人の姿は見えない。夏の湿原を彩った花たちも今はその色を落としている。あれほど一帯を黄金色に染め上げたキンコウカも既に花を落としていた。所々に兆しを見せてはいるが草紅葉にはまだ早い。花は少ないとは言うもののそれでもオヤマリンドウ、ウサギギク、イワショウブ、シナノオトギリなどが木道沿いに咲いている。沼の畔に田代山山頂を示す標識が立っていた。
視界の遥か先を何処までも果てしのない木道が続いている。散在する池塘のそれぞれに流れ行く雲がゆらゆらと不思議なリズムで揺らめいている。
いつの間にか私は呪いをかけられたようだ。居ながらにしてここでない何処か異空間に跳んでいた。突き崩されていく平衡感、剥ぎ取られる磨り減ったペルソナ。些細な悦楽と呪詛とで充ちた日常が、恰も予定されていたかのように音もなく崩落して行く。世界は無垢な姿のまま立ち現れ、一人だけの祝祭がはじまる。
木道を弘法沼まで歩いてきた。相変わらず人の姿は見えない。夏の湿原を彩った花たちも今はその色を落としている。あれほど一帯を黄金色に染め上げたキンコウカも既に花を落としていた。所々に兆しを見せてはいるが草紅葉にはまだ早い。花は少ないとは言うもののそれでもオヤマリンドウ、ウサギギク、イワショウブ、シナノオトギリなどが木道沿いに咲いている。沼の畔に田代山山頂を示す標識が立っていた。