ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

映画「大いなる不在」を観た

2024年07月15日 | 映画

映画「大いなる不在」を観た、浦和のユナイテッドシネマでシニア料金1,300円、チケット購入はIT化されてなく遅れているなと思ったが、年齢を証明するものを見せろと言われて感心した。テストベースのチェックかもしれないが実施していないところがほとんどなので、これには納得した

この映画のタイトルは1964年のフランス映画「かくも長き不在」を思い出させる。戦争から夫が帰還しないまま長い年月が過ぎたとき、妻(アリダ・バリ)の営むカフェの前に夫と思われる男が毎日通り過ぎるようになるが、彼は記憶喪失になっていた、映画の中で男が口ずさんでいたのが「セビリアの理髪師」のある一節、妻はカフェのジューク・ボックスにあるセビリアの理髪師のレコードをかけて夫の記憶をよみがえらせようとするが・・・確かそんな映画だった、もう一度観たくなってアマゾンプライムで調べるともう見れなくなっていた

さて、「大いなる不在」であるが、この映画は、2023年制作、133分、監督は近浦啓(1977)、映画の内容から来ている人は皆、同年配の自分の老後を心配していそうな人たちに見えた。高齢化、少子化社会の問題点をえぐった映画は今後とも増えるでしょうね

ただ、先日もNHKのクローズアップ現代でおひとり様の死後の手続きを代行する会社の実態を取り上げた番組を見たが、この手のものを見ると、暗澹たる気持ちになるのが難点だ。

オフィシャルサイトによるストーリーの説明を若干補足して引用すると

「小さい頃に自分と母を捨てた元大学教授の父の陽二(藤竜也、1941生れ)が、警察に捕まった。連絡を受けた息子の卓(たかし、森山未來、1984生れ)が、妻の夕希(真木よう子、1982生れ)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義母の直美(原日出子、1959生れ)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが・・・

父と義母の間に何があったのか?すべての謎が紐解かれた時、大海のような人生の深みに心が揺さぶられる、サスペンス・ヒューマンドラマ」

ストーリーの補足も含めて、観た感想を述べてみたい

  • 1回の鑑賞で全部を理解できていないが、この映画は日本の映画にしてはめずらしく、結論のはっきりしない、何となくもやもや感の残る、観る人を考えさせる映画だと思った
  • その原因の一つは、再婚した直美がなぜ陽二のもとを去ったのか、という点だ、私の印象では、陽二の認知症が進んできて、ある時、一緒に出掛けて別々に買い物をして直美が買い物を先に済ませて陽二が終わるのを待っていた時に発作を起こし倒れた、その時、戻ってきた陽二は、それに気づかず直美がいないと思うや、すぐに自宅に帰ってしまった、これを直美は倒れていながらも見ていた
  • また、その後、直美が故郷で入院して療養しているとき、直美の妹が陽二の家に住み込みで世話をに来て、陽二から乱暴されケガしたことも原因か
  • 息子の卓が最後の方で直美の故郷を訪ね、直美の妹に会い、父の無礼なふるまいのお詫びをしたとき、妹はなぜ卓を直美に会わせようとしなかったのか、その時、既に直美は亡くなっていたのか、直美が砂浜で海に向かってどんどん歩き進む場面があるがそれは彼女の死を暗示していたのか、それとも・・・
  • オフィシャルサイトには、「手探りで父という謎を探っていく息子の心情を、細やかな表情の陰影で表していく」とあり、息子の卓が父がどういう人だったかを、義母の残した日記に張り付けてあった父から義母への手紙などを読んだり、義母の実の子供と話したりして掴もうとする、その結果、「父と義母の間に何があったのか?すべての謎が紐解かれた時、大海のような人生の深みに心が揺さぶられる」とあるから、父と義母との間に何があったのか分かったのだろうか、私にはよくわからなかった、サスペンスと言っているのはこういうところがあるからか?
  • そして、卓は陽二を許したのだろうか、そこもはっきりしないように思ったがどうだろうか、映画の中では最後の方で老人ホームか市役所の職員に曖昧にしていた陽二に延命治療を受けさせるかどうかについて、「なるべく寿命が長くなるようにしてくれ」と回答する場面が出てくる、この時の卓の表情を見ると陽二を許しているようにも思えるが、点滴と胃ろうで延命させるのは苦しんで死んでもらうためだ、ともとれる、観る人が解釈していい、ということか

  • 夫や妻を捨てて、他の人のもとに走った人は、世を憚って生きていくものだというのは昔の話なのだろうか、例えば、漱石の「それから」、「門」などのように。しかし、この映画では陽二は栄達する、その代わり最後は呆けて再婚相手に逃げられ、老人ホームに・・・
  • この映画がすっきりと理解できないのは、物語が時系列で進まないからだ、現在と過去が交互に映される、よくある手法だが、若干混乱するかもしれない
  • 陽二は大学教授として栄達したが、純情でもあった、むかし好きだった女が忘れられず、お互い結婚もしたのにまだあきらめきれない、こんなことがあるのだろうかと思った。お互いの別れた配偶者はどうなったのだろうか、陽二が捨てた最初の妻と卓の面倒はちゃんと見たのだろうか、それもわからなかった
  • 純情とは怖いものだ、と思った。普通は、年齢を経て、若い時の俺は純情だったな、と回想するのが普通だと思うが、そうではない人も当然にいるのでしょう。今の若い人がこの映画の陽二を見たらどう思うであろうか

良い映画でした、監督の実体験をもとに製作した映画であるとの説明なので、リアルさが出たのだろうが、こういう映画を作った近浦啓監督の腕はたいしたものだと思った

さて、この日映画を観たユナイテッド・シネマだが、浦和駅前のPARCOの6階にある。このPARCOは内装がすごくきれいで洒落ていた。そして映画館があるフロアーからは眼下に浦和駅と駅前が見下ろせ、景色が非常に良かった。

そして、ユナイテッド・シネマの内部も立派な内装になっていたが、座るシートの背中が後に傾きすぎて座り心地が悪かった。座り心地は個人差があるだろうが、映画スクリーンは座席より下の方に見えるが、シートは後方にかなり傾いているのはおかしくないかと感じた。

このPARCOのビルであるが、8階にさいたま市の中央図書館が入っており、映画の帰りにちょっと寄ってみた。私の自宅の近くにも市の立派な図書館があるが、こちらも非常に立派な図書館であった。新聞や雑誌はほとんどのものが置いてある。私も最近は、読みたい記事がある文芸春秋、新潮、文春などは立ち読みではなく図書館でゆっくりと読んでいる

楽しめた一日でした