『夫婦50年』
著者 豊口克平・富美子
発行 昭和56年10月吉日
制作 かまくら春秋出版事業部
装幀・克平
朱の表紙にタイトル金箔押、白の貼り函に朱の題簽、タイトルは墨
金婚を祝って自費出版したもの。克平のスケッチ、富美子の短歌、互いを評したエッセイ、それぞれの年譜がおさめられている。克平は東京高等工芸学校工芸図案科を卒業した1928年、新宿ほてい屋百貨店図案部に入社。同年、恩師の蔵田周蔵を中心に「形而工房」設立。翌年職場で富美子と出会い1931年に結婚。代官山同潤会アパートでの暮らしはまず、髪型や着物の帯、洋服などの女房デザインからはじまったという。
多くの男女の友人があり来訪、交友が続いているのは、確かに彼は他人から憎まれ
たり、うらまれたり、けんかをしたりしないお人よしのせいと思います。彼は常に
「人をだますよりはだまされる方が気が楽なものさ」といいますが、そんな人間は案
外手答えがないためか誰もだまさないようです。(富美子 72ページ)
絵を描き始めると夢中になり……夏などは素裸となって描きつづけるのです。……
墨絵の裏打ちを逗子の友人の画家に習い、自分で作業しては得意になっています。
但しその助手になる私の嫌さかげんなど眼中にないようです。(富美子 80ページ)
『夫婦60年』
著者 豊口克平・富美子
発行 平成3年11月16日
製作 かまくら春秋出版事業部
装幀・克平
パールホワイトの表紙にタイトル朱押、朱の貼り函に白の題簽、タイトルは墨
結婚60年を祝い自費出版したもの。克平の日記やスケッチと、富美子の短歌がまとめられたが、克平は1991年、この本の完成をみることなく肺性心で亡くなった。
克平は1949年から三年間、佐倉厚生園で療養生活を送り、そこで描いた絵を、退院後いくつもの画帳にまとめている。表紙には、毎日新聞が毎月置いてゆくゴミ袋を用いたという。巻ものにまとめたものもいくつかあるが、大袈裟に思い、好まなかったようだ。
袋の地色、模様の図柄が毎月異り、仲々気に入ったので全部これを使った。見る人が
不思議がって必ず聞くが思いつきと、その体裁のよさに感心する。大きさは28cm×40
cmが最大で、巾の小さいものが交じっている。(克平 50ページ)
昔の有名な源氏物語や鳥獣戯画その数知れない絵巻ものに感銘するだけに、自作画を
勿体ぶって巻物にすることは心にひっかかるのかも知れない。むしろ軽い画帳の方が
好ましい。(克平 47ページ)
写真は克平のスポークチェアに載せた二冊。上が『夫婦60年』、下が『夫婦50年』
著者 豊口克平・富美子
発行 昭和56年10月吉日
制作 かまくら春秋出版事業部
装幀・克平
朱の表紙にタイトル金箔押、白の貼り函に朱の題簽、タイトルは墨
金婚を祝って自費出版したもの。克平のスケッチ、富美子の短歌、互いを評したエッセイ、それぞれの年譜がおさめられている。克平は東京高等工芸学校工芸図案科を卒業した1928年、新宿ほてい屋百貨店図案部に入社。同年、恩師の蔵田周蔵を中心に「形而工房」設立。翌年職場で富美子と出会い1931年に結婚。代官山同潤会アパートでの暮らしはまず、髪型や着物の帯、洋服などの女房デザインからはじまったという。
多くの男女の友人があり来訪、交友が続いているのは、確かに彼は他人から憎まれ
たり、うらまれたり、けんかをしたりしないお人よしのせいと思います。彼は常に
「人をだますよりはだまされる方が気が楽なものさ」といいますが、そんな人間は案
外手答えがないためか誰もだまさないようです。(富美子 72ページ)
絵を描き始めると夢中になり……夏などは素裸となって描きつづけるのです。……
墨絵の裏打ちを逗子の友人の画家に習い、自分で作業しては得意になっています。
但しその助手になる私の嫌さかげんなど眼中にないようです。(富美子 80ページ)
『夫婦60年』
著者 豊口克平・富美子
発行 平成3年11月16日
製作 かまくら春秋出版事業部
装幀・克平
パールホワイトの表紙にタイトル朱押、朱の貼り函に白の題簽、タイトルは墨
結婚60年を祝い自費出版したもの。克平の日記やスケッチと、富美子の短歌がまとめられたが、克平は1991年、この本の完成をみることなく肺性心で亡くなった。
克平は1949年から三年間、佐倉厚生園で療養生活を送り、そこで描いた絵を、退院後いくつもの画帳にまとめている。表紙には、毎日新聞が毎月置いてゆくゴミ袋を用いたという。巻ものにまとめたものもいくつかあるが、大袈裟に思い、好まなかったようだ。
袋の地色、模様の図柄が毎月異り、仲々気に入ったので全部これを使った。見る人が
不思議がって必ず聞くが思いつきと、その体裁のよさに感心する。大きさは28cm×40
cmが最大で、巾の小さいものが交じっている。(克平 50ページ)
昔の有名な源氏物語や鳥獣戯画その数知れない絵巻ものに感銘するだけに、自作画を
勿体ぶって巻物にすることは心にひっかかるのかも知れない。むしろ軽い画帳の方が
好ましい。(克平 47ページ)
写真は克平のスポークチェアに載せた二冊。上が『夫婦60年』、下が『夫婦50年』