折りしも直木賞、芥川賞の発表があったことだし、珍しく標題の本、あっと言う間に読んじゃったもんで、チラリと感想書いとこう。
桜庭一樹の本はこれが初めてだけど、女性作家だったんですね。
おまけに貰った本の帯に祝・直木賞受賞なんて文字が躍ってるもんだから、これが受賞作品かと思ったら、翌年の「私の男」が受賞作、これは重版の際に(その作家の本だよ)の意味で前述の表記と相成ったようだ。
さて、冒頭でも書いたが、とにかく読み易い本で難解な語句や表現には一切お目にかからなかった(ような気がする)。
そして感じたことは、小説というのは必ずしも最初から最後まで均質に編み上げた竹の工芸品である必要は無いんだなということである。
一気に読んだので全体の中で密度の濃い部分とあえて引き伸ばして雰囲気が変わったなと感じさせる部分とが混在していたんじゃないかという感触がある。
そして、推理小説においては伏線の収れんを怠るのはルール違反となろうが、気になる人物の気になる素振りがあちこち散りばめられていて、先へ先へと読み進ませる推進力になっているものの、読み終えた時点で(なんだ、膨らませてはくれなかったんだな)という軽い失望感を感じないでもないのだ。
そこに主題を置いてないと言われればそれまでなのだが、主人公の一人である万葉の「千里眼」にしてもその能力の功罪を掘り下げるのではなく、万葉の心の葛藤をつぶさに検証するでもなく、あくまでひとつの事象として淡々と書き進められてゆく。
そして、万葉の姑のタツに至っては周りの人間から恐れられているいわくありげな人物設定とはなっているものの、その根拠の具体的な説明は一切なしで、謎のままである。
ずっと幼い頃は「本(小説)」の中身というのは完璧な完成品なんだと思い込んでいたものだが、長じてからは、それらにも優劣があり、当然、不足な部分も内包して作品は在り、読者によって変化もする生き物なんだという認識が自然に芽生えてきたかと思う。
そういう意味で、もちろん完璧というわけにはいかないのだが、例えば宮部みゆきの文章あたりだと、きっちりと計算されつくした構成にのっとって、ペンは滑らかではあっても重厚感を感じるのと比べて、何となく軽いという印象を抱くのは「ライトノベル」出身といういらぬ情報データの誘導によるものだろうか。
もとより私は本を深く読み解く読解力があるわけでもなく、そもそも読書からトンと遠ざかってた人間なのでエラそうなことは言えないが、少なくとも現在の私の正直な感想である。
手法として心理描写はせずに、叙景の中にテーマを潜ませるというやり方があるだろうことは、それでも想定外ではないけれど・・・。
それはそうと、昨日の動画の音、ウルサイね。できたら明日入れ替えるから許してちょ。
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