物価が高騰し、賃上げの実現が以前にも増して切実になっています。日本は世界でも異常な「賃金が上がらない国」です。経済のゆがみをただす改革に政治が踏み出すかどうかが今度の参院選で問われます。
内部留保課税で財源を
実質賃金は1997年から2021年の間に年収で61万円も減りました。この30年間に名目賃金がほとんど伸びていないことに加え、急激な物価高がさらに賃金を目減りさせています。
岸田文雄政権の認識は、物価上昇率が「米国など他の主要国と比べて、日本は4分の1程度に収まっています」(自民党参院選公約)というものです。国民の苦難を受け止める姿勢がありません。
自民党、公明党の賃上げ支援策は、第2次安倍晋三政権から実施され、効果の見えない「賃上げ促進税制の活用」が柱です。賃金を上げた企業の法人税を減税します。この施策は、全体の約7割を占める赤字企業には何の恩恵もありません。
自公の中小企業対策は、設備投資をして生産性を向上させ賃金を上げた場合に費用の一部を助成するというものです。コロナ禍や物価高で設備投資の難しい中小企業にとって利用しにくい制度です。
自民党は参院選公約で「25年ぶりの賃金増時代を」と掲げます。従来と同じような支援では、とうてい不可能です。
賃上げには大企業の内部留保の活用が決定的です。日本共産党は、「アベノミクス」のもと、法人税減税など大企業優遇で12年以降に増えた内部留保額に年2%、5年間で計10%の時限的課税を行うことを提案しています。総額10兆円程度の税収を生み出すことができます。
課税対象額から賃上げや、気候危機打開に逆行するもの以外の国内設備投資を控除することで、賃上げや投資を促す効果があります。新たに生まれた税収で、最低賃金時給1500円に引き上げるための中小企業支援の財源を確保することもできます。
最賃は現在、全国加重平均で930円です。年1800時間働いたとしても約170万円にとどまります。コロナ危機やインフレのなか、米国のバイデン政権は時給15ドル(約2000円)への増額を打ち出しています。欧州も最賃アップに動いています。日本は完全に取り残されています。
カギは中小企業支援です。すべての企業が賃上げできるようにするには、赤字企業も負担している社会保険料を賃上げに応じて軽減することが最も効果的です。
大企業優遇にメス入れ
岸田政権は「二重課税」「内部留保は現預金だけではない」として内部留保課税を拒んでいます。所得税を払った人の支出にさらに消費税を課すことこそ「二重課税」です。大企業の場合はだめという主張は通用しません。内部留保の多くは現預金や有価証券で蓄えられています。課税で取り崩して活用することは十分可能です。
内部留保課税は、大企業が利益を増やしても内部留保が積み上がるだけという経済のゆがみをただすうえでも大きな力となります。
「新しい資本主義」と言いながら、大企業優遇に手を触れない岸田政権に参院選で審判を下すことが重要です。
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