日本学術会議への人事介入は、菅義偉政権の素顔―強権政治をあらわにした大問題です。これに対し千数百もの団体が抗議声明を上げ、国会論戦を通じ任命拒否の論拠は総崩れになりました。異論を強権で排斥するのは安倍晋三前政権からの特徴ですが、その矛先がついに科学者に向けられた重大事態をこのままにできません。
自民の危険な見直し提言
学術会議法は、科学者を代表する機関である学術会議が「優れた研究又は業績」を審査して選考した会員候補を推薦するとしています。その任命を首相が拒否することは、同法が定める学術会議の独立性の破壊であり、憲法23条の「学問の自由」の侵害です。
菅首相は、公務員の選定・罷免が主権者である国民固有の権利であることを定めた憲法第15条1項を、首相が公務員を恣意(しい)的に任命できるかのようにねじ曲げ、任命拒否を合理化する根拠にしています。首相による独裁国家への道を開く暴論です。
理由を示さず権力が異論を排除することは、社会を萎縮させ、分断をもたらしかねません。
「学問の自由」だけでなく、表現や言論、思想・良心という国民の精神的自由の侵害にもつながる国民的な大問題です。学会から映画人、自然保護団体、宗教者まで幅広い人々から抗議の声が出されています。かつてない動きです。
政府・自民党は、任命を拒否する一方で、「学術会議のあり方の見直し」を求めています。問題をすりかえるばかりか、学術会議を変質させ、独立性を奪う狙いがあることは明らかです。
自民党が15日に発表した提言は、学術会議を「国の特別の機関」から「政府から独立した法人」に変えるとしています。国から切り離し、学術会議の地位を低め、権限を弱めようとするものです。
提言は、学術会議に「政策のための科学」の機能強化を求め、今の専門別の分科会を廃止して、テーマ別のプロジェクトにもとづく委員会の設置まで提起しています。時の政府の「政策」を推進するための「シンクタンク」へと変質させるものです。
人文・社会科学系の会員の比率を下げることも求めています。現在の人間と社会のあり方を相対化し、批判的に省察するという人文・社会科学の独自の役割を弱体化させることになります。
科学が発展し、その成果を国民が享受するには、「学問の自由」と学術会議の独立性が不可欠です。それは、権力による学問への弾圧がくりかえされ、科学者が軍事研究に総動員された戦前・戦中の歴史の教訓です。
独立性を奪ってはならぬ
学術会議の提言・報告は、今年だけで83件にのぼります。これまで新型コロナ等の感染症対策やジェンダー平等、東日本大震災の被災者救援と復興、気候変動、環境対策、原発、エネルギーなど社会が直面するさまざまな課題に科学的よりどころを与え、国民生活や権利の向上に貢献してきました。
学術会議が独立性を失うなら、こうした役割を担えなくなります。学術会議への人事介入は、一部の科学者の問題ではなく、すべての国民にかかわる深刻な問題です。日本共産党は、党の存在意義をかけて、違憲・違法の任命拒否の撤回までたたかいぬく決意です。
― しんぶん赤旗より ―