絵本の時間

小学校で よみきかせをしています。
毎週月曜日の朝の読書の時間は、
読み手にとっても 心温まる時間です。

曲芸師ハリドン

2008年07月09日 | 本の紹介
学校で読んだ本を記録していますが、合間に本の紹介もしています。小学校高学年~大人まで読める本を中心に読んでいます。 よろしければ、ご参考までにどうぞ。


第54回 青少年読書感想文全国コンクールの 中学生課題図書。



  『曲芸師ハリドン』 ヤコブ・ヴェゲリウス/作  菱木晃子/訳

          この印象的な 表紙も、そして挿絵も、著者の手によるものです。

ハリドンは 曲芸師です。一輪車に乗り 銀色の球をいくつもいっぺんに操るのが得意です。
ハリドンは <船長>とふたりで暮らしていました。昔、<船長>が支配人を務める劇場で知り合ったのがきっかけです。
でも、そのハリドンが安心できるのは、人々から喝采を浴びる曲芸をしているときと、<船長>とふたりでいるときだけでした。
ハリドンは 知っていました。これまで悪い人間にたくさん出会って学んだこと、「他人を信用しないのが身のため」だということを。

いつもハリドンは淋しいのです。不安なのです。誰のことも信じられません、そう<船長>以外は。
ある日、家に帰ったら、<船長>がいません。
いつも必ず帰ってくるじゃないか・・・と思い込もうとすればするほど、積み重なる不安・不安・不安。
いたたまれずに<船長>を探しに出かけるハリドンに、決してラッキーとはいえないいくつかの出会いが訪れます。

たったひとつのものに委ね・頼りすぎてしまうばかりに、自分自身を自ら陥れてしまうことがあります。 これは、「人」であったり「もの」であったり「地位」であったり「財産」であったり・・・
ハリドンの場合、一見にして<船長>の存在であることはわかりますが、実はそれは、自分自身の存在価値を見出す為の手段であるようにも感じます。
もちろん、ハリドンも大切に感じるものがあればこそ、再びあたたかい家へと戻ることが出来るのですが・・。
人は誰しも果たせなかった夢を、“諦め”とは別の形で心に持ち続け、そういうものと共存することで心のバランスも保っているのかもしれません。

読みながら、ふと“中学生への課題図書”であることを思い出し、この不安が押し寄せる悲しみの中から、中学生に何を見出せと期待しているのか?かなり困難では?とも思えました。
それでも、私はこの淡々としたお話が好きです。 きっと読むたびに、新しい感じ方ができるお話なのではないかと思います。あるいは・・・悲しみや不安の経験が多いほどに、感じ入れるものなのかもしれません。


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