ホイッスルバード あいざわぶん

歌が湧いてくる旅はいい旅だ

観光船が事故を起こした悲惨な場所になるべく近付きたくない
ので予定を変更し、釧路市からは山越えで網走市に向かうこと
にした。
ということは必然的に摩周湖近くを通ることになる。

今回の北海道バイク旅は、寒さと雨と雹と霧の旅だった。
8日間の北海道滞在で、薄手ダウンジャケットやレインウエアを
着なかったのは僅か一日しか無かったのである。
道民も、「今年はどうかしている」と声を揃えるほどだ。

で、釧路市を出発する際も最初から寒さ対策でダウンジャケット
を中に着て、風除けの為レインウエアも着込んだのだった。

時間の余裕があったので、摩周湖を観ようと思った。
摩周湖を観る為の専用無料道路が敷かれているので、急坂を
トコトコと走って行くことになる。
そしたら、徐々に霧が出てきて、摩周湖に着いた頃には視界が
15mも無いような濃霧に・・・。
だから、そこにある筈の摩周湖が全く見えない。
まさに布施明が歌っていた「霧の摩周湖」になったのである。

問題は、摩周湖が見えないことではなく、運転が怖いことだ。
元の道路に再び戻るには下り坂なのに、時速10キロの低速に
しないと正面衝突をしてしまうから不気味で恐怖だった。

また、雨と同時に雹が降ってきて、「峠下駅 とうげしたえき」と
いう無人駅で約30分ほど雨宿りではなく、雹宿りをした。
無人駅というより、「お化け屋敷駅」と言った方がいい駅舎だ。
だから留萌本線は間もなく廃線になるに違いない。

そして一番恐怖だったのは、納沙布岬(稚内市最北端)から
羽幌町まで約100キロの横殴りの暴風雨だった。
海沿いの道路で、風を遮る物がまるで無いのだ。
かつて札幌市から稚内市まで私は直通バスでこの道路を観て
いるが、天候が良ければ絶好の風景である。例えば稚内市に
入る辺りから見えて来る利尻富士は声が出る程の美しさ。
それが、「凍える。バイクが流される。後ろから来る車が怖い」の
四重苦になってしまった。

それでも無事に帰って来られたのだから、あれも「旅の味わい」
になるのである。
必死になってバイクに乗りながら、何十機も並ぶ発電用風車を
観ていたら歌まで湧いてきた。

 発電の風車うおんうおん回れるに回らぬもありてアイツに似てる

初案は「回らぬもありてたれかに似つる」だったが、口語体にし、
砕けてみることにしたのだが、まだまだ推敲中である。
又、留萌市近くになるとかつては使われていた鰊番屋の残骸に
出遭い、心に迫るものがあった。
故・なかにし礼の石狩挽歌の世界だな。
で、次のような歌が湧いてきた。
浮かんだのはハッコツという言葉では無く、シラホネだった。
又、「白骨のごとく」の比喩は弱いので、「となり」と断定にした。

 屋根低き鰊番屋の板塀が白骨(しらほね)となり砂に散らばる

フェリーで声を掛けてきた兵庫県のバイク爺が、「今年の北海道
は散々だった」と二度も口にしたが、ならばバイク旅はやめた方
がいいだろう。
私の場合は体力の自信も感ぜられたし、次の旅に向かう気力も
増したのが何より嬉しかった。

写真は猿払村で撮影。
「風烈布 ふうれっぷ」なる地名が土地の特徴を表現している。



【お知らせ】次回のブログ更新は19日(火)です。
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