剱岳から無事下山し、テン泊した「剣沢キャンプ場」まで戻る途中に、「剣山荘」で登山の記念に山のシール(今はステッカーと言うらしい)と山の手拭いを購入しました。
私が剱岳のステッカーを手に入れたいと思ったのには理由があります。
それは5年以上前の、ある一瞬の出来事が関係しています。
私が車を運転し信号待ちをしていた時でした。
同じように信号待ちの車が私の右側に停車したのですが、その車の窓に剱岳のステッカーが貼ってあったのです(タイトル画面の右にある漢字で「剱岳」と書かれた方だったように記憶しています)。
剱岳を模ったモノトーンの色調の中に🇯🇵の赤が鮮やかでした。
また暗っぽい窓ガラスに貼られた昔のワッペンのような形にも惹かれました。
信号はすぐに青にかわり、右折しようとしていたその車は後方に小さくなっていったのです。
私が剱岳のステッカーを見たのはそれが最初で最後でした。
そのステッカーを「剣山荘」で偶然にも見つけてしまったのです。
私は「TSURUGI」とアルファベット表記のステッカーを1枚だけ手に入れました。
ステッカーは、我が家に帰り着いてすぐの頃に私の愛車(スバルXV)の窓に貼り付けました。
それから半年ほど経った今年の春の事です。
多良岳でマンサクの花を堪能し、その余韻に浸っていました。
登山口に停めていた私の愛車を覗き込んでいる女性がいるのです。
『何しているんだろうかこの人は… 』
私は車の後方から、その女性が立っている側へ回りました。
女性は男性と2人で山登りに来ていたみたいで、私の車の方を見てその連れに何か話しかけていました。
女性は私の車の中ではなく、窓に貼ってあるステッカーを見て連れの男性に話かけていたのでした。
私が、
「どうかしましたか?」
と尋ねると、その女性は言ったのです。
「カッコイイなーと思って… 貼ってる場所もイイですね!」
私はこの言葉を聞いて気分を良くし、剣沢でテン泊した事や登山では最難関とされている岩場の話をペラペラと話してしまいました。
「剱岳、私もいつか登ってみたいと思ってるんですよー」
女性はステッカーから目を離さないでそう言ったのでした。
昔、私が隣に停まった車の窓に貼ってあったステッカーを目にした時と同じ感覚だったのだと思います。