梅雨時期からお盆の頃になると毎年やってくる訪問者(虫?)がある。
私は蛍トンボと呼んでいるが、黒い胴体の真ん中辺りに鮮やかな黄色の模様が入っているトンボである。
毎年毎年やって来て、狭い庭を行ったり来たりしているのだ。
ココからの話は私がまだ幼い頃の話…
山の向こうに陽が沈んだ夕方、蛍光灯の灯に誘われて1匹のトンボが家の中へ飛び込んで来た。
昔は今みたいにゲーム機もなく、子どもたちは日中に原っぱや山、池、川で虫や魚やイモリを捕まえて遊んだ。
中でもオケラは最高に可愛く、土を掘るための大きくて硬い前足を平泳ぎするみたいに左右に広げる動きがたまらなく面白かった。
オケラにとっては迷惑な話だったろうが、捕まえたオケラを掌にのせて軽く包み込むと前足で指と指の隙間を広げようと動き回るのだ。
くすぐったくて堪らず手を広げてしまうことも度々あった。
また、盛んに左右に動かす前足をストップモーションみたいに急に止めてしまう習性をガキどもは愉快な遊びにした。
前足を動かしているオケラを指でつまみオケラに向かって、『お前のチン✖️ンどーんくらい(どれ程)?』とたずねると… 、
前足を左右に大きく開いて止まったり、隙間がない位に狭くして止めたりする様子を見てガキどもは大笑いした。
話が逸れてしまった。トンボの話に戻ろう。
そんなふうに当時のガキたちは虫捕りが大好きだったのだ。
夕方、灯された蛍光灯の光に誘われ家の中に飛び込んできたトンボは幼かった私にとっては格好の餌食に思われた。
しかし、私に向かって母だったと思うがこんな事を言った。
「お盆の時期に家にやって来るトンボはご先祖様の化身だから捕まえたりしたらダメですよ」
私はそんな母(あるいは父)の言葉に驚き捕まえるのをやめ、蛍光灯に戯れるトンボをじっと看守った。
『そうなんだ… 。お盆の頃に家に舞い込んでくるトンボはご先祖様だからやさしく看守るんだ… 』
私が子どもだった頃の親からの"教え"は今でも忘れない。
自分の子や孫たちにも同じ話を聞かせているのだ… 。
庭で我が物顔に振る舞っているのは他にも居る。
いただいたみかんにTANEが幾つか入っていたので、庭に蒔いたら芽が出てきた。
西と東の花壇に植え替えたら、毎年、アゲハ蝶がやって来て卵を産みつけるようになった。
お陰でみかんの葉はアゲハ蝶の幼虫に食い尽くされてしまう。
みかんの葉を目掛けて飛んで来るアゲハ蝶もスゴイが、幼虫も逞しい。
卵から産った幼虫は鳥のフンに擬態し身を守っているのだ。
大きくなると緑色に変わるし、触れるとオレンジ色の触角を出す。その香りは正にオレンジの香り!
トンボもアゲハ蝶もご先祖様に思えてきた。
ひょっとするとオケラもご先祖様だったのかも知れないと思えてきた。
もしそうであればオケラに対してとても失礼な事をしていたことになる…