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マイmy巷話

かたつむり。ときどき世田谷、目黒、渋谷の歴史や地理など。

目黒・散歩途中に不思議な境界石を見つける その3

2022-01-13 | 街歩き・歴史散歩
ワタシが今まで見た戦前の希少な標石といえば、山のなかでは宮内省御料局の宮標石、街中では陸軍の境界石あたりを挙げられますが、今回目黒の住宅地で見つけた個人名が刻まれている境界石はホントに初めて。。



しかも、「田中」「西郷」と違う名前がふたつも並んでいますっ。

石に土地の境を標すばかりか表札の役目まで担わせるとは、、🤔
やはり地位のある人物だったのでしょうか。




「田中」と刻まれた石から見てみます👀
池尻で見た陸軍の標石と同じような作りの立派な御影石で出来ています。

そして背後に見える小さな石が、、


これですっ👆
西郷から下の文字が埋もれていますが、「家」と読める気がしませんかっ👀



石のアタマには境界点を示す穴が開いているので、この西郷石も確かに境界石であることは間違いはなさそうです。



一方、田中さんの石にも、はっきりとした境界点があります。
実は田中さんのほうは、西側と東側の敷地の角にそれぞれ立派な境界石が残っているのですが、西側の石は見ての通りにすっかり埋もれています。

うむ。やはり調べてみようかな。。🤔



そこで、明治の地租改正以降から戦後までの国の税金徴収目的で使われていた旧土地台帳を法務局で閲覧させてもらうと、意外なことがわかりました。

どうやら、100年以上も前のこの土地所有者は、現在検索をするとすぐに出てくるような歴史的に名を残す方々が記録簿に並んでいたのです❗️


が、、肝心な田中と西郷の名前は記録には見当たらず💧💧
ワタシの無責任な憶測としては、西郷従道が台帳に登場することを期待していたのですが。。

西郷従道とは西郷隆盛の弟で、この方、かなりの兄想いだったらしく、身体を壊した兄の静養地として、明治初年頃にこの標石の建つ場所からほど近い目黒川沿いに広大な土地を購入しているのです。
のちにそこに本人が立派な屋敷を建てて、一帯は西郷山と呼ばれるまでになったのですが、当時の地租改正で税を払えなくなった周辺の農家から山林や農地の買い上げを頼まれた従道の所有地は最大14万坪にまで及んだとか。。
だからこそ、この西郷石の関係を疑ってしまったのですが、ちょっと残念。



ただ、土地台帳が制度化されるのは明治20年過ぎてから。。
もしそれ以前に西郷従道がこの土地を手放していたとしたら、記録は残ってないということになりますよね?
やはり真相は藪のなか。。
西郷標石のみが知るってことでしょうか🤔


また、台帳に名を連ねる土地の所有者の筆頭は、深川亮蔵という方でして、明治24年には古川源太郎に譲与しているようですが、調べてみるとどちらも旧佐賀藩の鍋島家の重臣だったのです。

鍋島家は海外渡航で不在が多かった若い殿様に代わって、元教育係でもあったこの方々の手に明治維新後の旧鍋島藩の全業務は委ねられたのだとか。。
具体的には、設立した第三十国立銀行の頭取に就任して旧佐賀藩の経済基盤を作り、佐賀や東京にたくさんの土地を購入して利を得たり、、
と外面的には全てはこの人らの名前で行われていたのです。
だから、台帳の登記名がお殿様じゃないってわけか…🤔




これは明治初年頃の古地図です👀

現在標石が建つ位置の下あたりに「茶」と記載がありますが、おそらく、旧土地台帳に記録された鍋島家の土地がこの茶畑かと思われます。

茶畑といえば、ここからほど近い渋谷の地に鍋島家は「松濤園」という広大な茶畑を作らせて、旧藩士に狭山茶を生産させた時期もあったため、この目黒の土地の茶の生産も松濤園と加えて、利を出していたのかもしれません。

のちに松濤園は分譲されて都内屈指の高級住宅地として地名だけが残っています。



…と、目黒のある土地を巡って明治維新の立役だった西郷家から鍋島家へ、、と散歩途中に見つけた石を端にはなしをずいぶん膨らませてしまいました。

が、その後もこの土地所有者の変遷はなかなか面白く、鍋島家から幾人かを経て、明治の横浜発展の礎を築いた実業家の小野光景、そして早稲田や慶応をはじめ日本の教育、研究施設に多額の寄贈をした実業家の望月軍四郎などが記録上に連なっていることが判りました。

やはりここはただの山林、、というよりもなんだか持っていたくなるような意味のある土地だったように思えてなりません🤔


次回はもうひとつの「田中」の石について調べてみたいと思います。



マイマイネタはしばらくお休み。すみません。。🐌

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