「ふふふ、そういきり立つでない。どうしようというのではない。それとも、怖いか?」「怖くなんかないぞぉ! どこでも行ってやらぁ!」潮は槍を構えるのを止め、行進するように廊下を歩き出した。「時に潮、母のことが好きか?」「何だよ突然!」「好きかと聞いておるのだ」「わからないよ」「わからない?」「物心ついたときから母ちゃんがいなかったんだ。だから」「だから?」「俺は、母ちゃんが恋しくて旅してるんじゃないと思う。母ちゃんが、どんなもんかも知らないんだ。ただ、何で親父が隠してきたのか、何で俺を残して居なくなったのか、知りたいだけなんだ」潮は館の奥の間の前に来ていた。
「入られよ」木戸を開けると、座敷わらしと鼻の長い和服の老人がいた。驚いて駆け寄る潮。「座敷わらしじゃねぇかよ?! どうしたんだ?!」「いつぞやは」畳に手をついて頭を下げた座敷わらし。「今日は、この辺りの妖怪を束ねる長が潮殿と話したいと申されるのでお越し頂いた」「妖怪の長?!」「お主の疑問に、答えようと思ってな」「ああ! 疑問ならてんこ盛りよっ! 何で襲うんだよ?!」長の衿を掴む潮。長は『気』で潮を吹っ飛ばした。「慌てるな! 何事も順序があるということを学ばねばならんぞ?」長は潮の母が白面を結界で守る長命の女の3代目であり、その旧姓が『日崎』であることを語って聞かせた。
「何で母ちゃんはそいつを守ってんだ?」「わからん。だが、お前ならそれを聞き出せるかもな」「え?」「我は気付いたのだ。なぜ女達が守っているのか? 理由を知るべきだとな。お主が本意を訊ねてきてほしい。お主が我ら化け物にとっても、信ずるに足る男だということは、この童から順々と諭されたしたな」「何、お主には恩があった。それにお主が死ぬると小夜も泣く」座敷わらしは微笑んだ。「我ら遠野の化け物は、これを以て
5に続く
「入られよ」木戸を開けると、座敷わらしと鼻の長い和服の老人がいた。驚いて駆け寄る潮。「座敷わらしじゃねぇかよ?! どうしたんだ?!」「いつぞやは」畳に手をついて頭を下げた座敷わらし。「今日は、この辺りの妖怪を束ねる長が潮殿と話したいと申されるのでお越し頂いた」「妖怪の長?!」「お主の疑問に、答えようと思ってな」「ああ! 疑問ならてんこ盛りよっ! 何で襲うんだよ?!」長の衿を掴む潮。長は『気』で潮を吹っ飛ばした。「慌てるな! 何事も順序があるということを学ばねばならんぞ?」長は潮の母が白面を結界で守る長命の女の3代目であり、その旧姓が『日崎』であることを語って聞かせた。
「何で母ちゃんはそいつを守ってんだ?」「わからん。だが、お前ならそれを聞き出せるかもな」「え?」「我は気付いたのだ。なぜ女達が守っているのか? 理由を知るべきだとな。お主が本意を訊ねてきてほしい。お主が我ら化け物にとっても、信ずるに足る男だということは、この童から順々と諭されたしたな」「何、お主には恩があった。それにお主が死ぬると小夜も泣く」座敷わらしは微笑んだ。「我ら遠野の化け物は、これを以て
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