王都エクバターナ地下、火の焚かれた部屋に暗灰色の法衣を着た老人がいた。ヒルメスはその部屋に現れた。「何事だ?」「このまま失礼。アトロパテネの大平原に霧を起こして以来、体温が戻り切っておらんでのぉ」老人は水晶玉を見ていた。「わざわざ俺を呼び出した用件はなんだ?」「カーラーンが死んだ」老人は振り返った。ヒルメスとはまた違った、半面を付けていれ。「アルスラーン一党に殺られたようじゃ。裏切り者の汚名を被ったまま、野に屍を晒すハメになろうとは哀れこと」「グゥッ!!」歯噛みするヒルメス。「我が弟子達には引き続きお主に力を貸すよう言うておく」水晶玉の側に添えた両掌には宝玉が埋め込まれていた。「だが見誤るな、銀仮面卿。パルスの太陽はお主一人の為には輝かん」老人は警告した。焚かれた火の影は蛇のようにのたうっていた。
ダリューンとナルサスは頭巾付きの外套で身を隠しながら王都に潜入していた。「随分と荒れたな」呟くナルサス。「ああ、殿下には見せたくないな」王都では瓦礫が一ヶ所に集められる等していた。事後になりつつある。
王宮ではイノケンィスが侍従二人を連れ、珍しく走って移動していた。「ほっほっほっ」大汗のイノケンィス。広場の一角にある豪奢な東屋まで来たイノケンィス。そこには侍女が数名おり、奥の席にタハミーネが座っていた。「タハミーネ殿」呼び掛けに振り向くタハミーネ。喪に服し、黒い装束を纏っている。「ふふふ」頬を赤らめ、微笑むイノケンィス。「変わりないか? 欲しい物はないか? なんでも言ってくれ、不自由はさせぬゆえ」答えないタハミーネ。「今日はな、良い報告を持って来たのじゃ。年が明ければ、余は王ではなく、皇帝を称することになるだろう。新ルシタニア帝国の皇帝じゃ。そこでじゃのう、タハミーネ殿ぉ」つれないタハミーネを
2に続く
ダリューンとナルサスは頭巾付きの外套で身を隠しながら王都に潜入していた。「随分と荒れたな」呟くナルサス。「ああ、殿下には見せたくないな」王都では瓦礫が一ヶ所に集められる等していた。事後になりつつある。
王宮ではイノケンィスが侍従二人を連れ、珍しく走って移動していた。「ほっほっほっ」大汗のイノケンィス。広場の一角にある豪奢な東屋まで来たイノケンィス。そこには侍女が数名おり、奥の席にタハミーネが座っていた。「タハミーネ殿」呼び掛けに振り向くタハミーネ。喪に服し、黒い装束を纏っている。「ふふふ」頬を赤らめ、微笑むイノケンィス。「変わりないか? 欲しい物はないか? なんでも言ってくれ、不自由はさせぬゆえ」答えないタハミーネ。「今日はな、良い報告を持って来たのじゃ。年が明ければ、余は王ではなく、皇帝を称することになるだろう。新ルシタニア帝国の皇帝じゃ。そこでじゃのう、タハミーネ殿ぉ」つれないタハミーネを
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