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なぜ中国は民主化できなかった?(天安門事件から30年)

2019年06月20日 | 政治・経済
今日は国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。

ちょうど30年前、東欧と中国で大事件が起こりました。
ベルリンの壁崩壊と天安門事件。
その後東欧は民主化されましたが、中国は、いまだに共産党の一党独裁体制がつづいています。

なぜ中国は民主化できなかったのでしょうか?

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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。

1989年6月4日の天安門事件から、今年で30年だそうです。
この年は、大きな事件が4つありました。

1月7日、昭和天皇崩御。昭和が終わり、平成がはじまる。
6月4日、天安門事件。
11月10日、ベルリンの壁崩壊。
12月3日、ブッシュ(パパ)とゴルバチョフ、マルタ会談で「冷戦終結宣言」。

当時、私は18~19歳でしたが、昭和天皇崩御とベルリンの壁崩壊は、はっきり覚えています。
ベルリンの壁崩壊は、後に私がモスクワ留学を決めた大きな原因になった。
「北野の人生を変えたできごと」ともいえます。

天安門事件については、それほど記憶にありません。
理由はおそらく、天安門の大虐殺が、民主化につながらなかったからだろうと思います。
一方、ベルリンの壁崩壊は、その後「東西ドイツ統一」「ソ連崩壊」につながっていきました。

なぜ、東欧、ソ連は民主化を実現できたのに、中国は民主化できなかったのでしょうか?

▼ライフサイクルから考えると
私は、「ライフサイクルが原因でできなかったのだ」と考えています。

ソ連のライフサイクルはどうでしょうか?
この国は、1917年のロシア革命で誕生しました。
1922~1953年まで31年間この国を支配したスターリンの時代に急成長した。(成長期)
特に、戦中戦後勢力を伸ばし、東欧、中国、北朝鮮の共産化に成功しています。

スターリンの死後、ソ連は、フルシチョフ時代を経て、ブレジネフの時代には、明らかに成熟期に突入していました。
ゴルバチョフが1985年に書記長になった時、すでにロシア革命から68年の歳月が流れていた。

ソ連が崩壊したのは、ロシア革命から74年目、ソ連建国から69年目です。
(ソ連建国は、1922年。)

一方、中国はどうでしょうか?
中華人民共和国の成立は、1949年。
ロシア革命から32年後のことです。

国はできたものの、毛沢東の政策は、「大躍進」とか「文化大革命」とかメチャクチャ。
自国民が何千万人も死ぬようなおかしなことばかりやっていて、なかなか成長期に入りません。

中国が成長期に入ったのは、トウ小平が改革を宣言した1978年末のこと。
天安門事件が起こったのは、改革開始11年目のことでした。

つまりこの事件は、「成長期の前期」に起こった。
それで、中国政府にはありあまるパワーがあり、体制崩壊につながらなかったのです。

この「国家ライフサイクル」の話。
新しい読者さんは、「迷信」だと思うでしょう。

しかし、05年発売の「ボロボロになった覇権国家」を読んでいただければ、
「中国は08年~10年に起こる危機を乗り越える」
「成長は2020年まで」
と書いてあることがわかるでしょう。(123p)

その他、「アメリカの没落」「ロシアは超大国に返り咲かない」「EUは分裂にむかう」「インドは、急成長をつづける唯一の大国」
などなど。

国家サイクルを見てわかったことは、とても多いのです。
ちなみに、東欧が共産化されたのは、第2次大戦後。
中華人民共和国建国より少し前。

ではなぜ、中国は民主化されなかったのに、東欧は民主化されたのでしょうか?
東欧は、実質ソ連の植民地でした。
だから、ソ連弱体化に乗じて民主化できた。
東欧は、実質ソ連の一部と化していたので、ソ連のライフサイクルに組み込まれていたのです。

▼中国民主化は可能か?
中国の民主化運動は、天安門事件でつぶされた。
そして30年の月日が流れました。

中国のライフサイクルは、1980~2020年が成長期だと想定できます。
すでに「成長期後期」の「末期」になっている。
そして、2013年頃から「成長期後期」の現象がでていました。
つまり、賃金水準が高くなりすぎて、外国企業も中国企業も生産拠点を他国に移している。

2020年、中国は、日本の1990年代に相当する時代に入っていきます。
経済はさらに低成長になり、一人っ子政策の弊害で少子化が急速に進んでいく。

アメリカの支配層は、中国打倒を決意していて、共産党が政権を維持するのは困難になっていくでしょう。

30年前、民主化の夢は戦車につぶされました。
しかし、30年が過ぎ、「中国民主化が可能な時代」が近づいています。

---owari---
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